世界半周記⑤ジョージア~風の憧憬~
ジョージアよりグルジアと言ったほうがピンとくる方が多いかもしれない。
ヨーロッパとアジアの境目あたりに位置する、旧ソ連の構成国だった国だ。
ジョージアは英語読みで、グルジアはロシア語読みらしい。
ジョージアと聞いても一体何があるのかイメージがつかない方が多いのではないかと思うが、コーカサス(カフカス)山脈という言葉は聞いたことがあるかもしれない。また、ジョージアはワイン発祥の国とも言われている。
マイナーな国だが、世界一周旅行者の間では人気があり、いちばんよかった国に挙げる人も少なくない。
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首都トビリシの空港に到着後、バスで市内に向かった。道中の街並みはこれまで見たどこのものとも違っていて面白かった。ヨーロッパっぽい街並みではあるのだが、ソ連時代に建てられてから改修されていないのか、相当年季の入った建物も多い。かなり立派な建物もいくつかあったが、それもソ連時代の遺産だろうか。規模の大きいショッピングモールもあったりして、中心部は想像していたより発展している印象を受けた。ただ、首都トビリシの街からも山々が見える。坂が多い街なので、ビルの谷間の坂を上った先に山があるように見えるのが面白い。トビリシから見える山々は台地のようになっていて、上のほうにも住宅地や何かの建物があるようだった。
中心地でバスを降りた後、Googleマップで見つけた近くの居酒屋に入ってみた。日本人の口コミも多く、バックパッカーの間で安くて美味しいと評判らしい。
店の場所がわかりづらく付近をうろうろしていたら、店から出てきたおじさんがここがその店だと教えてくれた。
中に入ると、まだ17時前にもかかわらず地元の人で賑わっていた。
奥のカウンターで注文する方式で、とりあえずヒンカリ(小籠包に似ているが5倍くらいの大きさ)と赤ワインを頼んだ。
店員のお姉さんは、田舎のちょっとやんちゃな女の子が店を手伝っているというような感じでかわいかった。
英語はあまり得意ではない人が多そうだ。歴史的にロシア語のほうが話せるのだろう。
赤ワインは田舎のじいちゃんが日本酒を飲むようなグラスに入って出てきた。濃いというか、重いというか、長い歴史を感じさせるような味がした。これまで飲んだことのあるワインとは、作り方も違うのか、かなり異なる味だった。美味い。
ヒンカリの大きさには驚いたが、とてもおいしかった。中の餡は、香草でも入っているのか、小籠包よりエスニックな感じの味がした。
その後、シュクメルリという、鶏肉をにんにく・サワークリーム・塩・油で煮込んだ料理を注文してみたのだが、その量を見たとき後悔した。基本的にどのメニューも何人かで分けて食べることを想定しているのだろう。鶏2羽分くらいの量があった。久しぶりの酒で酔ってしまったのもあって、もうそんなに食べられない状態だったのだが、なんとか8割方は食べきった。付け合わせのパンも尋常ではない量だったので、地元の人も残しているのを見て、残させてもらった。会計はかなり高くついたかと思ったが、これだけ飲み食いして900円くらいだったので確かに安いなと思った。
トビリシを歩いていると、住民の見た目は白人系なのに、店の雑多な感じとか、道端で人々が談笑している感じが、アジアっぽくて面白い。
また、久しぶりに歩行者優先の国に来たのだと感動した。道路を横断するときは待ってくれる車が多いし、クラクションも鳴らされない。これまでの3カ国に比べると街にゴミが少なくきれいで、野犬もほとんどいないようだ。
地下鉄でホステル近くの駅まで向かう。ソ連時代に作られたのだろう、駅構内はかなり年季が入っていた。エスカレーターは長く、速度が速い。
駅に停車するより早く電車のドアが開くのは初めての経験だった。
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朝から熱があったので一日安静にしていた。布団が薄かったのと、昨夜の食べすぎが原因かと思う。
風邪薬を飲んだらだいぶ良くなった。
近場の商店で冷凍ヒンカリを買ってみたりした。
体調次第で本当に気分は変わる。
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起きたらまだ熱っぽかった。
とりあえずチェックアウトして、クロニクルオブジョージアという記念碑がある場所にバスで向かう。
車掌のおばちゃんが降りる場所を聞いてくれたり、横に座ったおじいちゃんももう少しで着くぞ、みたいに教えてくれてとても優しい。
記念碑のある高台からは、トビリシシーと呼ばれる湖が見渡せた。湖もさることながら、丘からはトビリシの街が360℃見渡せていい景色だった。
その後、バスと地下鉄を乗り継いで中心部のホステルに向かう。バスで小銭がないので困っていると、車掌のおばちゃんが乗客の人たちに両替できないか聞いてくれて、乗客のひとりのおばあちゃんが両替どころか代わりに払ってくれた。優しすぎる。ジョージア語のありがとうがなかなか覚えられないので、英語で何度もお礼を言った。
ホステルの外観はトビリシによくある年季の入った建物だったが、内部は新しくとても綺麗で快適だ。フロントのスタッフはまさかのインド人だった。
体調が芳しくないのでしばらく休んだ後、Googleマップで調べた近くのレストランへ。店員さんが愛想よくとてもよかった。
今回は前回の失敗に学び、スモールサイズで頼んだら大正解だった。しかしスモールでも腹一杯になる量なので、ジョージアでは毎食一品しか頼めないなあと思った。
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風邪が治らない。
そんなに暑くないのにアホみたいにエアコンつけるからだ。これがドミトリーでいちばんだるい。
薬で体調を落ち着かせつつ、市内を観光した。街並みはやはりきれいで絵になるところが多い。
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昨日の夜も誰かがアホみたいにエアコンの温度を下げるので寒くて目が覚めた。環境にも悪いんだから、エアコンを売るときは冷房は26度以上にしか設定できないように法律で決めてほしい。
もちろん起きたらまだ熱っぽかった。
昨日見残した市内の教会を2つ巡った。
夕飯はこの前食べたレストランで食べたが、英語が喋れて笑顔で接客してくれるお姉さんはいなかった。ほんとに驚くほど簡単な英語も通じない。まあしかたないよな…。簡単なジョージア語は覚えたほうがいいなと思った。
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起きたらまだ熱っぽかったが、郊外のムツヘタという町に向かった。街全体が世界遺産になっているらしい。地下鉄と、マルシュルートカという乗合バスを乗り継いで行った。街中の教会を見た後、高台にある教会までタクシーを利用した。声をかけてきたおっさんの言い値がそれほど高くなかったので、そのままお願いした。道中、車に積んであったペットボトル入りワインと、チャチャという度数の高い蒸留酒を飲ませてもらった。
帰りもマルシュルートカでトビリシに帰った。
体調のせいか腹は減らないが身体が野菜を欲していたので、マクドナルドで野菜サラダを食べた。生野菜がたくさん食べれて満足だった。
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乗合バスで3時間ほどかけ、コーカサス山脈の麓の町カズベキに到着。
道中の景色はよかった。
ご飯だけ食べて就寝。
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早めに起きて、山の上の教会に登った。写真を撮りつつ歩いて2時間ほど。急な坂道もあり、風邪気味なのでけっこう疲れた。登山道の景色はRPGの世界のようで、とても綺麗だった。
少し無理をしたからか、帰りの乗り合いバスでは寒気がして、ずっとぐったりしていた。
トビリシに着いた後に入った多目的トイレで、中からドアが開けられなくなっていしまい、室温45度はあろうかという狭い室内でしばらくパニックになった。
幸い人通りの多い場所だったので、外から別の利用者がドアを開けてきたところを出ることができたが、その女性には怪訝な目で見られた。
体調が悪いと心は荒むし、ツイてないことばかり起きる。
この日は、風邪を完全に治すために一人部屋を取った。
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今日も一日体調が悪かった。
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一人部屋で休んでいても風邪が治らないので、病院に行くことにした。タクシーを利用したのだが、道中は少しでも体を動かすのがしんどく、今にも吐きそうなくらいだった。
病院は日曜日なので救急外来だった。保険会社から連絡がいっているはずなのに、受付でだいぶ待たされイライラした。
ようやく入れた後、熱を測ってもらったら39度9分あった。そらしんどいわ。
点滴をしてもらったらだいぶ楽になった。
心身ともに疲弊していたので、担当してくれた優しい看護師さんが白衣の天使に見えた。
しかしその後、彼女がつけてくれた点滴からは水滴がポタポタこぼれ始めたので、通りかかった男性主任のような人に声をかけて取り替えてもらった。その後裏のほうで彼女が主任に怒られているようだったので、なんか悪いことしたなと思った。
病院のベッドに横たわりながら、今後のことを考えていた。
このまま体調がよくならなければ、とりあえず翌日のイスラエルへのフライトはキャンセルしよう。そして、もう日本への帰国の便を取ってしまおうか。
世界一周と言って出掛けたのに、4カ国で帰国なんて情けない話だな・・・と、考えるくらいこのときは疲れ切っていた。
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翌朝目覚めると、昨晩の点滴と病院で処方してもらった薬が効いて、体調はかなり回復していた。
なんとか旅を続けることができそうだ。
イスラエルへのフライトのため、空港に向かった。
史上最悪の出国審査が待ち受けているとも知らずに・・・
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