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【翻訳】TNO開発日誌24:オデュッセイア(後編Part1)

原文はこちら(https://www.reddit.com/r/TNOmod/comments/o2qkbx/development_diary_xxiv_the_odyssey_part_2/

この文章は後編をさらに二分したうちのPart1です(それでも7000文字ほどあります)
Part2はこちら(https://note.com/fred409/n/n4e80bb2d9cef

前編はこちら
Part1(https://note.com/fred409/n/n976c27af9e87
Part2(https://note.com/fred409/n/n3258ace34757

「オデュッセイア」の後編へようこそ。前回は皆さんにアンカラとローマ、アテネの現況について、それからそれぞれの土地での激動の政治と三頭連合の崩壊をお見せしましたね。今回は三頭連合を決定的に死に至らしめた事件、第二次伊土戦争についてご紹介しましょう。

マルタ会談後の帝国とドゥーチェ

マルタ後イタリアの国家方針ツリー

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最初の仕事はイタリアの地域大国としての地位を事件から守ることです。帝国は広大ですが、資源は多くはありません。優先順位を定め、決断をしなくてはなりません。

孤独な帝国
三つのルートを持つツリー

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計画を立てねば

ヨーロッパにあるイタリアの傀儡国に集中すれば代償と妥協が必要になります。バルカン半島は今も昔も複雑な地域であり、旧枢軸国や協力政権の数十年にわたる無慈悲な支配は征服された国々の経済、政治状況を何一つ改善しませんでした。妥協し、政策を変更し、アルバニアやギリシャ、モンテネグロ、クロアチアの協力政府により多くの資源と権力を与えなくてはなりません。チャーノはそのような政策を好まないでしょうが、バルカンにおけるドイツの野望を押し返すためには必要な賭けです。ナチの大鷲はかつてほど強大な存在ではありませんが、それでもその爪は依然鋭く、獲物を狙う目つきは衰えていません。もしイタリアがバルカンでの地位を固め適切な対抗策を取らなければ、大鷲は再び急降下してきて、今回はイタリアに何も残してくれないかもしれません。

地中海と中東の支配の補強は最も自然な選択肢に見えますが、実際は想定よりも困難で有害なものです。地中海でのイタリアの支配は見かけよりもずっと不安定です。チュニジアには未だに原住民の扇動家や反ファシスト的なイタリア人が闊歩しており、エジプトでは王政は崩壊寸前にまで来ています。他のアラブ諸国は一切信頼なりません。イタリアは何としても慎重に、外科的に治療して反乱を粉砕し帝国経済の生命線である石油が流れ込み続けるようにしなくてはなりません。イタリアの秘密警察や治安部隊は古代カルタゴの地がローマの下に安定して留まり続けるよう努力しています。エジプトのファルーク国王は彼の統治が変動しないように常に援助と注意を向けられていますし、スエズ以東、イラクやサウジアラビアは石油を最後の一滴まで搾り尽くされていますが、その売国的指導者達には忠誠を誓う相手が誰なのか忘れないようにしてやらなければなりません。

最後は帝国の真珠、前ドゥーチェの瞳に輝いた、イタリア帝国の征服の最大の成果である、東アフリカです。第二次イタリア=エチオピア戦争の勝利の栄光は今なお多くのイタリア人の心を鷲掴みにしており、また沢山の人々が現在の東アフリカ統治は十分にその富を活用できていないのではないかとその効率性を疑っています。現地のエリトリア・アスカリ守備隊を拡大、近代化し、エチオピアの脆弱なインフラを改善させ、ケニヤやソマリアの土地で農業や鉱業へ投資、回収し、そして何よりアディスアベバを昔からそうだっやように帝国の首都に相応しい都市にしなくてはなりません。これらの事業にはかかる出費も多いでしょうが、長い目で見れば、東アフリカを負担から無限の富の泉に変える鍵となるでしょう。

チャーノがどれを重視して外交政策を取るか決めたとしても、これらの問題は国内問題なのです。三頭連合の崩壊はチャーノの唯一と言っていい功績の末梢を意味し、さらには失敗へと変わってしまいました。チャーノが権力を握ってから重ねてきた無数の失敗の列に加えられたのです。彼の敵は多く、皆が機会を伺っています。ですから、再び、チャーノは何に注力するか決めなくてはならないのです。

孤独なドゥーチェ

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最も蓋然性の高い選択肢は反ファシスト運動の圧迫です。ファシストのクーデターによって一度は押しつぶされたはずの反ファシストの動きは墓の下から甦りました。カトリックや教会といった日和見的なファシズムの支持団体は近年ますます油断ならない存在になってきており、影響力も戻ってきています。また一方では大衆の中ではファシズムへの無関心や不信感が広まってきています。国民にファシズムは彼らのために様々な贈り物をくれたことを思い出させ、幻滅や冷笑の中から反政府思想が広まるのを防がねばなりません。チャーノの考えでは、ムッソリーニが発見したように、イタリアの大衆は一つの目標、一つのビジョンに向かって団結するというささやかな楽しみを欲しているはずなのです。

そして他にも、チャーノの治世にはさらに近くに潜む脅威があります。

影に潜む四頭政治の陰謀

国家ファシスト党内部からの反対は許容できるものではなく、ムッソリーニが作った全てへの侮辱を意味しますが、しかし無視できない現実性を帯びてきました。事態はさらに深刻で、党内の有力者すらもこの動きに加わっているようなのです。様々な範囲での陰謀の予兆がチャーノの下へも届いています。可能な限り速やかに、先手を打たねばなりません。ますますその反抗的な姿勢を強めている国家ファシスト党書記のアレッサンドロ・パヴォリーニは、無遠慮に地位を剥奪され忠実な人物で置き換えらるでしょう。年老いた愚者のイタロ・バルボはローマの権力闘争から遠く離れたリビアへ戻って頂くことにします。ファシストの綱領からのイデオロギー的逸脱も何とかしなくてはなりません。エットレ・ムーティの派閥の奇妙な異端思想をファシストの教義で塗り替えるのです。最後に、ニッコロ・グイアーニ(Niccolò Giani)の薄いベールで覆ったチャーノへの批判を増幅させるだけのファシズム神秘主義は、その無駄に長かった歴史を閉じてしまいましょう。チャーノの注意深い統治の下秩序と規律が国家ファシスト党に戻るのです。

国内外の緊急問題に対処したチャーノは、三頭連合の崩壊後イタリアが陥った経済破綻にようやくむきあうことが出来ます。

ファシスト国家の装置としての経済の力が十分に発揮されインフレーションを抑制し経済を再び再興させるでしょうが、実際の所最大の優先事項は体制を確実なものに保つことです。チャーノはファシスト体制を守るためならどれだけでも非情になる覚悟を決めていますが、時間が経つにつれ国民の間でも反体制的な声が大きくなってきています。イタリア国民はファシズムやドゥーチェへの信頼を失っており、すぐに信頼を取り戻さねばなりません。

柱を模した権力メカニズム

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こんにちは、Epochです。偉大なるギリシャの地へようこそ。マルタは名実ともに爆発しました。そして今度は東地中海で何万回もの爆発が起こる番です。東地中海世界は古いままなのに、人々は若いまま死んでいく場所です。

前半の内容を覚えているでしょうか。ギリシャ軍は、最大限に気をつかった見方をしたとしても質、量共にお話にならないような有様です。かろうじて存在する部隊も敵と戦うことよりも賄賂を要求することに熟練していて、20年以上に及ぶパルチザンの抵抗活動との長い戦いの中でも一度も敵部隊を殲滅できたことのないといった有様です。そして彼らは二つの地域大国の存在する前線に立つこととなります。こんなものは喜ばしい状況ではなく、将軍達もできれば彼らを他のどこかへ送りたいと思うでしょう。

ギリシャ軍の訓練

ギリシャ軍が戦争でまともに戦えるようになるためには二つの方法があります。一つはイタリア人に媚びへつらい、援助を乞い、さらに何かを売り渡すことです。ギリシャの経済力を考えればイタリアが銃砲の主要な供給源となります。ありったけの資金をかき集めたとしても大した額にはならないでしょうが、前線の兵士達にとりあえず配備する程度のライフルは集められるでしょう。イタリア製だとしても、ライフルはライフルです。

軍がトルコとの衝突に備えるためのもう一つの方法は、持てる資源の全てを一度の戦争努力につぎ込むことでしょう。つまり、文字通り全ての治安大隊をひとまとめにして陸軍を建設するのです。軍というよりかは夜盗の集まりといった具合ですが、それでも彼らはこの国で唯一戦闘経験を持つ集団であり、衝突の際に政府がすぐに用意できる信頼に足る人的資源なのです。国内環境の改善も最大限に行われるでしょう。石油インフラや要塞線のメタクサス線が建設されます。

事態に備えねば

全ての必要な資源を得るためにかき集めることは不可能とまでは言いませんが難しいことでしょう。既に感づいている方もいるかもしれませんが、軍隊はもちろん、ギリシャという国家全体の機能不全がどれほど深刻かというのは言葉に表せません。ゲオルギオス・セメシスの眼前にある、戦争準備のための任務は大変厳しいものですが、セメシスにとってはこれまでの仕事もそうだったでしょう。かつてのトロイヤ戦争のようなギリシャとトルコの戦い、今回は木馬を使った奇襲は使えないでしょうが、それでも彼は勝利しうると信じています。

しかし、トルコを破壊するよりもギリシャを破滅させるほうがずっといいと考えている誰かがいます。これは1000年前からの経験則です。

階級内の売国奴

不吉な噂が軍内部で流れています。パルチザン、EAM、EDESを根絶できなかった原因は、軍の意思の弱さ、能力の弱さだけではなかったのです。軍内部の裏切り者こそがその真の原因だったのです!彼らは青と白の旗の上に赤旗を掲げ、イタリア製の中を持つよりも鎌と鎚を振るうことを選びました。抵抗運動はギリシャ軍の至る所に種を植え付け、指揮官達の中に縦横無尽にその幹と枝を伸ばさせました。裏切り者はギリシャを守ろうとしないでしょう。何とかしなくてはなりません。

報告を行った指揮官の言葉を信じ、告発された兵士を吊すこともできます。これはもちろん、彼が真実を語っていると推定してのことです。このような行動は軍の権力を強め、次第に意思決定の過程を変えようと求めてくることに繋がるかもしれません。嫌疑をかけられた兵士達を処罰する前に証拠を確保すべく独立した調査を行うことも可能です。しかし、独立機関は政府への忠誠を欠き、その情報も疑わしいものでしょう。最後に、政府がこれまで無数の決断を下す際に行っていた従来通りのやり方に従う方法もあります。イタリア人に何もかもを頼めば、何も心配する必要はありません。

現状のギリシャはとても戦争に耐えられる国ではありまあせん。それを変えるのはプレイヤーのあなたなのです。抵抗運動とトルコに打ち勝つか……さもなければ失敗するか、です。


「今日、トルコ共和国は国内及び国外の敵の脅威に晒されている。1919年の建国以来絶えず行ってきたように、共和国の存続のために、内部の敵とは絞首台を以て、外部の敵とは銃を以て戦わねばならない。それ以外の選択肢は存在しない」
1963年、トルコ大国民議会でのイスメト・イノニュの秘密演説より

また会いましたね、Faustです!トルコがマルタ事件以前からイタリアへ疑いの目を向けていたのですから、会談後のトルコの姿勢は激しい復讐主義的なものになるでしょう。爆発はたった一回で二国家間の融和の幻想を完全に粉砕してしまいました。イノニュ自身を含む内閣の中で最も性善説的な見方をする派閥ですら、爆発はイタリアの能力の不十分さが原因であると個人的には考えており、悪意を見いださずにはいられません。一般的な人々からしたら、マルタでの爆発はイスメト・イノニュの命そのものを狙ったものに他なりません。外交の時代は完全に過去のものになりました。これからは準備と戦争、そしてその代償の時代に突入しました。

戦争前の国家方針ツリー

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政権は全会一致で進軍を決めましたが、一体何処へ攻め込むというのでしょうか?イタリアとその同盟国ギリシャはトルコの西部戦線を脅かしていますし、キプロス問題は一世紀近く係争中です。一方中東方面では、モースルとダマスカスの同盟国と共に、エルサレムへと突撃し、その刃先をイタリア帝国の心臓部に突き刺すこともできるかもしれません。最も攻撃的な民族主義者ですらトルコには二つの戦線を抱える能力はないと気付いており、当然ながら政府もそう認識しています。トラキアの山岳地帯、エーゲ海の海岸部、ロードス島の高地も、シリアに広がる平原とレバントの古代要塞と同じだけの未来を共和国に約束してくれるでしょう。この選択はイノニュの最優先事項です。

戦争計画

完全に極秘の内に目標が定められたら、政府の次の任務は国家に戦争のための準備をさせることです。当然ながらローマとの外交的関係は遮断されており、トルコが国境の内側でどれだけ必死になって軍備を整えているかはイタリアには実際の所わかりません。ローマに戦争を察知できないように、戦争の道への支度は水面下で慎重に、段階的に行う必要があります。

経済の動員も必要です。政府は資金繰りのため、三頭連合崩壊に伴う財政改革を装って財政状況改善のために様々な方法を取ります。再軍備のためヴァルリク・ヴェルギシ(第二次世界大戦中に制定された非ムスリム住民に課される所得税)の復活が決められ、不当なほどに高い税率に上げられた上で新しく征服した地域にも支払いが求めまられました。他にも独立戦争の前の時代のように様々な税や罰金が導入されます。政府の報道機関に新しい税の支払いを愛国的義務であると何とか喧伝させるのも忘れませんでした。

このような政策は一般的なトルコ人にとっては日常茶飯事ではありましたが、地方部では緊張の爆発に結びつく可能性が高いです。イノニュもそれを予期していて、トルコの準備したものの内の大きな割合が国内での迎合度を維持するのに使われることになるでしょう。イノニュが絞首台に言及したのは意図的な事だったのです。イノニュの二つ目の選択肢とは、反イタリアと愛国的な扇動に頼り、そして新しく確立された国家安全保障局の権力を弱めることで少数民族からの支持を取り付けることです。この方法では武力を脅迫手段としてあからさまに使うことはせず、イノニュは彼の国民を戦争に向け一つに団結させようと試み、これまで良い扱いを受けてこなかったトルコ人によい未来を誠実に約束します。その象徴的な言動の最たるものとして、イノニュ自身がクルド人をルーツに持つという数十年に渡って最大の秘密とされていた事実に演説で言及します。また絞首台が意味するものもより穏便に解釈されることとなります。強硬派は和解は将来の危機を引き起こすだけであり、いずれ反乱を叩き潰さねばならないのなら今行動に移した方がよいと繰り返し主張します。イノニュはこの時点でこの忠告を受け入れて国家の敵と向き合う際に足下を固めるために軍を転換させ弾圧に充てることも可能です。国庫を潤すためというより地方部から資源を簒奪するためだけに銃口を向けながら重税を課し、政策の着想を得るため改革のための報告書にも再び注目が向けられます。

国内問題と同時に、国家と軍は勝利に近づくためによい兵器と装備を用意する必要があります。プロパガンダは独立戦争の精神を再点火させることに集中し、陸軍や残存する海軍は十年以上忘れていた戦場に備え第二次世界大戦や西ロシア戦争の様々な作戦、戦術を検討します。当然ながら戦争はそれだけの対価を要求します。報道機関での政治的反対意見は撲滅されねばならないでしょうが、トルコの地位を強化する機会は政治スペクトラムの端点に眠っているのです。イノニュはこのようなやり方は個人的に好みませんが、しばらくの間は彼らを許そうと考えています。

大統領の語りかけるべき人々

大衆からの圧倒的な支持というのもまた必須条件の一つです。そのためイノニュは兵士だけで無く一般市民に対しても彼をリーダーとして団結しようと思える人物像を演出しなくてはなりません。1923年の精神を様々なやり方で呼び起こすのです。

大統領と家族

こうしてトルコは国家全体として戦争への道を突き進み、大統領と閣僚の残りの任務は命令を下すだけになりました。政権の目標はトルコ経済の再活性化と政治や国内問題の凍結です。たった一つの勝利がトルコの数十年来の苦しみを取り除きイノニュの指導権を確保します。トルコが自立した存在であることを示し、正統な領土を統一し、敗北したイタリアへ要求して国際政治の世界へ羽ばたくのです。健康の時からトルコ国民が受け続けてきた数え切れない敗北と軽蔑、塗炭の苦しみを一挙に復讐するのです。詰まるところ、トルコの目標とは復讐と再生なのです。


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