見出し画像

【旅日記】彫刻の忠告 | ブダペスト

1日目の続き。今回はペスト編。



2日目 ペスト散策

ルダシュ温泉で朝風呂

弾丸旅行職人の朝は早い――。

残り半日で行っておきたい箇所とフライト時間を何度も見比べ、計算した結果、2日目は朝6時半に起きることになった。部活の合宿か?

そもそも温泉目的でブダペスト行きを決めたのに、温泉に行く暇がありませんでした、じゃなんとなくすっきりしない。そこで、朝風呂をすることになった。幸いにもルダシュ温泉は朝6時から営業している。

こっちの温泉は日本のものとは違い、水着着用・ビーサン必須・タオル持参だ。温泉というより、やはりプールと言った方がイメージが近い。

上記に関してはレンタルもできるらしいが、その場合は現金払いという噂もある。あいにく現金を持ち合わせていない私は、寝起きの頭で身支度もそこそこに、けれどそれらだけはしっかりとトートバッグに詰め、ホテルを出た。

日の出の時間だった

真冬の早朝は寒い。が、目を覚ますには丁度良かった。
太陽はまだ昇りきっておらず、店は眠っており、人もまばらな静かな街を歩きながら、異国の地で朝焼けを見る経験というのは意外に気分の良いものだった。得をした気分だ。この体験を元に作られたのが、早起きは三文の徳という諺である。(大嘘)

受付でお金を払うと、リストバンドを渡される。バンドにはチップのようなものが内蔵されているようで、それをゲートに翳すと中へ入れる。

曜日によっては女性限定日もあるようだが、基本的には混浴だ。なので、ロッカー及び更衣室も男女混合である。誰も裸じゃないと分かっていても、パンツ一丁のおじさんが更衣室をうろついていると一瞬びっくりしてしまう。ちなみに着替える際は、更衣室内にいくつかある、アパレルの試着室のように仕切られた小さい空間を利用するようだ。

ロッカー
説明の図と赤・緑が逆なので一瞬混乱した

空いているロッカーを探して使う。ロッカーの鍵にも磁気か何かが埋められているのだろう。ロックを外す時はリストバンドをまた翳す。

ホテルで予め水着を着てきたので、服だけをさっさと脱いで、荷物と一緒にロッカーに入れ、鍵をかける。

水着というか、私の場合はユニクロのワイヤレス下着なんですが……。いや、あの、水着買おうとしたんですけど、時期的に売ってなくて……、オンラインで買えば良かったのかもしれないんですが、基本的に身に付ける物を買うときは実物を見て決めたいタイプなので……。という言い訳を頭の中でしつつ、「いやこれが私の水着ですけど?」の顔をして更衣室を後にする。黒ビキニの人も結構いたし、違和感なかったと思う。(希望的観測)ありがとうユニクロ。

廊下にマップが貼られている。温度が記載されているのがありがたい。
私たちが目指すのは42度のお風呂のみ。画像上側の左端と、画像下側の右奥だ!

いくら裸ではないとはいえ、自分が撮られる立場だったら嫌だろうなと思うのでお風呂自体の写真はないのですが、↑のように温度を示す小さな看板があるのはありがたかった。間違えてプールに入りたくないからね……。

ルダシュ温泉には朝早い時間にも関わらず、地元の人たちが沢山いて、知り合いを見つけては同じお風呂に入り世間話をしていた。謂わば市民館のようなものなのだろう。

それにしても久しぶりに肩まで浸かるお風呂、気持ち良い~~~ッ!!!……のはそうなんだけど、やっぱり日本の温泉と雰囲気が違うのと、混浴なのと、あと身体を洗う場所がないのでみんなシャワーだけ浴びてそのまま入ってるんだよな……と思うと、期待していたほどリラックスできなかったのが本音かも。まあ、日本の温泉と立ち位置が異なるので、それらの違いは全て当たり前なんだけど。

なんだかんだ言いつつも1時間ほど滞在して、体は芯まで温まった。ルダシュ温泉を後にし、一旦ホテルへ戻る。荷物を置くついでに軽く体を洗い、再度身支度をした。

国会議事堂内を見学

昨日夜景パワーで私をぶん殴り気絶させた国会議事堂の中を見学する際は、事前の予約が必要だ。11時からの枠を予約していた私たちは、強い向かい風に耐えながら歩みを進め、なんとか時間ギリギリに到着した。

こんな格好いい建物で働くの、めっちゃモチベ上がるじゃん!と思った

受付を済ませるとオーディオガイドを渡される。壁に国旗一覧のようなものが貼ってあるのだが(日本の国旗もある)、どういう仕組みか、その国旗にオーディオガイドの機械を翳すと、自動的にその国の言葉に設定される。めっちゃ便利。ハンガリー、結構ハイテクだな……と思うタイミングが結構ある。

外の光が気持ちいい
葉巻置き

ちょっと記憶が曖昧なので話半分に聞いてほしいのだが、この葉巻置きは廊下にいくつもあって、昔は演説の出来が良い部屋?には、まるで人気投票でもするように葉巻が何本も置かれていたらしい。しかし演説の出来が良すぎる場合、みんな葉巻が燃えてなくなってしまうまで演説を聞いてしまうものだから、葉巻が一本も残らなかったということもあったらしい。

デザインが好み

この部屋の先は、写真撮影禁止の空間だ。理由は、王冠等、戴冠に必要な品々が保管されているから。

広い空間の中心に、王冠を始めとした品々がショーケースに守られている。両脇には衛兵さんがふたり。おそらく真剣を手にしている。当番の間、身動きひとつしてはいけないらしい。許されるのは瞬きくらい。数分間じっと見つめてみたけれど、目線も全然ぶれないものだから感心した。

品々の周りは柱に囲まれていて、それぞれの柱に人の彫刻がある。ハンガリーの建国に貢献した歴史上の偉人たちだ。

天井には今まで見た中で一番大きなシャンデリアがぶらさかっていた。実はその天井の上には更に屋根裏部屋のような空間があり、そこのシャンデリアの電球交換が一番大変な仕事なんだとか。

議員の談話室
針子さんたち
わんちゃん

偉人の彫刻だらけだった先ほどの部屋とは打って変わり、議員の談話室には国民の暮らしの姿がずらりと彫像されていた。刺繍が有名なハンガリーなので、お針子さんたちもいる。何やら国のことを話し合う議員たちの頭上で、娘たちがせっせと針仕事をしているを想像する。議員の集まる場に、国民たちの日常の姿が飾られているのって、なんだか素敵だなと思った。

実際に政治が行われる場所。席についているボタンで賛成反対の意思表明ができるらしい
ハンガリーのビートたけしやん!と思って撮った

彫刻と散歩

行きたかった古着屋さん、文房具屋さん、雑貨屋さん。見事に全て休みだったので、ただふらふらと街並みを楽しんだ。

ブダペストは暮らしの彫刻が多いと思った。

新聞配達の男の子
どうしたん、話聞こか?
絵描きさん

後から調べたところ、コロドコという彫刻家のミニゲリラ彫刻(許可取らずに街中で彫刻しまくったらしい)も至る所にあったようだ。見つけたかったなあ。

ドナウ川遊歩道の靴

第二次世界大戦下、約2000人ものユダヤ人が、矢十字党(ナチスに加担した極右集団)によって撃ち殺され、ドナウ川に投げ込まれた。これはその追悼の彫刻だ。

当時、靴は高級品だった。ドナウ川沿い一列に彼らを並ばせ、靴を脱がせる。そして銃殺する。残された貴重な靴は、簒奪者がそのまま使用したり、もしくは売られて金銭に代わった。

靴の種類は様々で、男性の革靴から女性のハイヒール、子供靴もあった。老若男女問わず、ランダムに、意味もなく殺されたのだろう。

さっきまで、川を挟んだ向かい側の景色を「わあ綺麗」と眺めながら、私たちは散歩をしていた。少し肌寒いが気持ちの良い風に吹かれて、日光を感じながら、のんびりと川沿いを歩いていた。散歩道の途中に、これら靴のモニュメントは並んでいた。目に入った瞬間、きゅっと心臓が痛くなった。すっと体温が下がる。目を反らしたくなった。

戦争、暴力、差別。それらは日常と地続きなのだ、この散歩道のように。

だから、それらが目に入れば反射的に迂回したくなる。見えなければ、起こっていないのと一緒だから。のんびりと日常を続けることができるから。
もしくは、それらが差別の象徴であると理解していなければ、ただの一風変わった風景として楽しむことすらできるだろう。実際、靴と一緒に自撮りしている若い観光客を何人か見た。

過去の悍ましい事実を受け入れることは、怖い。そんなことが、今からそう遠くない昔に起きていたなんて、恐ろしくて堪らない。私は悪意を身近に感じることが怖いのだ。

しかし暗い過去に向き合い、学び、平和をなんとなく享受するのではなく、しっかりと“望む”ことができる人たちは格好いい。
約80年経った今でも、靴にリボンを結び、靴を残した彼らに捧げる一輪を朝の花屋で買うことができるのは、そういう人たちだ。私もそうありたい。だから、迂回せず、手を合わせた。一人一人の持つ力は微量でも、平和への意識を強く持つことこそが、何より平和に繋がると、私は信じたい。

戦争を経験したことがない人間の甘えた考えだ、理想主義だ、と言われればその通りだ。だが、戦争経験者ばかりの世界より、経験のない人間だらけの、甘ったるい世界で私は生きたい。誰も彼も、そういう世界で生きてほしい。のんびりと川沿いを散歩して、カフェで買ったパンを齧って、同じく散歩中の知らないあなたと挨拶を交わしたい。

MENZAでランチ

色んなサイトで紹介されていた人気レストランMENZAを予約し、ランチで行ってきた。

私は基本的に捻くれているので、色んなサイトで紹介されている店はどうせライター達を金で雇ってるだけの大したことない店なんだろ……と思いがちなんですが、ここは美味しかった!疑ってすいませんでした。

ウォルナッツとかぼちゃのスープ、鴨肉のリゾット、ハニーマスタードのマンガリッツァ豚チョップを頼んだ。ハンガリーはフォアグラも有名で、ここでは美味しいフォアグラが食べられるそうだが、私は内臓系が得意ではないのでスルーした。

スープはふたりでシェアすると言ったら、最初から2つの皿に分けて持ってきてくれた。けど、写真で見ても分かる通り量が思ったり多く、本当に1つのスープを2つに分けた?実は2つ頼まれてない?と不安になった。
食後にレシートを見るとちゃんと1つだけだったので、ひとりで注文してたらお腹の中ちゃぷちゃぷで他の物は食べられなかったかもしれない。
クリーミーで味が濃く、めちゃくちゃ美味しかったので頼んでよかった。ドライフルーツも入ってた。

鴨肉のリゾットは肉が柔らかくてさっぱりしていて最高だった。ここまで厚切りの鴨肉は初めて食べた。
あとやっぱり、米を食べると身体が喜ぶね……。リゾットはヨーロッパ旅行中のアジア人を救う。

マンガリッツァ豚は「食べれる国宝」と言われていて、ハンガリー滞在中に絶対試してみたかった食べ物のひとつ。口に入れた瞬間溶けるような食感と濃厚な味が特徴、と聞いていたので楽しみだったが、ハニーマスタードとの相性が良くなかったのか、単純に焼きすぎなのか、美味しいけど期待したほどでは……って感じだった。もう少し素材の味を活かした調理法のメニューを選んだ方が良かったかもしれない。

全体的に味のクオリティは高く、量も多く、店内の装飾は高級寄り、店員さんのサービスも良く、なにより予約必須の人気店。お酒も飲んだし、これはひとり7000円くらいかな~?と友人と予想を立てていた。(ハンガリーの通貨はフォリントで、換算が難しかったため金額を見ずに注文しまくっていた)
お会計を貰うと、ひとり約3000円程度。ハンガリー本当に物価安すぎる……ありがてえ……。


17:30のフライトを予約していたので、ここでタイムアップ。
このまま近隣諸国に足を延ばして旅行を続けるという友人と別れ、空港に向かう。

昨日の14時くらいに街に到着し、15時前に街を去ったため、実際の滞在時間は大体25時間ほど。約1日だ。睡眠時間を引いたら、活動時間はもっと少ない。その中でこれだけ見て回ることができたのは、結構上手な旅行だったのでは??めっちゃ充実感。すーごい楽しかったな~!

万歩計を見ると、この2日間(活動時間は17時間ほど)で約5万歩歩いていたらしい。ふくらはぎを触るが、筋肉痛の兆しはない。
普段運動を全くしないくせに、足腰だけは強いのだ。実家が山奥だったから?

くく……面白れえ……俺の足がぶっ壊れるのが先か、俺が世界で遊び尽くすのが先か、勝負しようじゃねえか……!

すっかり旅行欲に火が付いた私は、家に着いた翌日、2週間後の南フランス行きチケットを取った。足が動く限り、地球という遊び場で走り回ってこようと思う。


いいなと思ったら応援しよう!