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▶️自作脚本◀️Tempo Rubato 2場
音楽スタジオ。
トワの周りにスリーパーとヒーローがそれぞれ楽譜を持って話している。
トワ 抱きたい。
スリーパー なんだこいつ。
ヒーロー いつものことだよ。告白できた?
トワ 出来てたら苦労しない。
スリーパー カスなの?
ヒーロー あー、ヘタレだねえ。
トワ 拗らせてると言え。
ヒーロー 全然格好良くないね。
スリーパー 何なの?カズナリ君のこと好きなんでしょ?
トワ 当たり前だろ。
スリーパー 何で告んないの?
トワ ……告ったら、今みたいな関係が壊れそうで。
スリーパー ……。
ヒーロー ……。
トワ おい笑うなよ。
スリーパー だって……だって……。
ヒーロー ふふ……。いや……。
スリーパー 思春期かよ。
ヒーロー 学生かよ。
スリーパー 学生でも進むわ。
ヒーロー 何なの?きもいな。
トワ お前らボロクソ言うよね。
スリーパー あー、何年一緒にいるんだっけ?
トワ えーっと、高校からだから、11年。
スリーパー 11……。
ヒーロー 11年片想い……。
トワ ちげーよ!好きになったのは大学の時!だから7年!
スリーパー 7……。
ヒーロー きっつ……。
トワ 笑い過ぎじゃない?
ヒーロー だって、7年も告白できてないんでしょ?
スリーパー 拗らせすぎ。歌にしてあげようか?
ヒーロー ああ、良いね!代わりに歌ってあげるよ。
トワ やめろ馬鹿共。俺が言わないと意味ないだろ。
スリーパー 早く言いなよ。
トワ 言ったらどうなる?
スリーパー 知らないよ。
ヒーロー 上手くいくんじゃないの?
トワ 本当に?
ヒーロー 前向きに考えなよ。好きでもない人と11年一緒にいないよ。
トワ でもそれは人として相性が合うからってだけじゃねえの?
スリーパー 面倒だなあ。君のピアノは素直なのに、何で君は言葉にできないの?
ヒーロー てかピアノ聞いてるよね、カズナリ君。もうバレてるんじゃない?気持ち。
トワ ……え?
ヒーロー だってカズナリ君も歌手でしょ。音楽家は音で会話するんだから。
スリーパー ヒーロー、それは、カズナリ君がそこまでの実力があれば、だよ。
ヒーロー なら試してみればいいじゃん。ほれほれ、トワ、弾いてみ?
トワ 何を。
ヒーロー 何でも良いよ。好きな曲を弾きなよ。好きな人を想ってさ。
トワ 何で。
ヒーロー 練習だよ。いつかカズナリ君に聞かせるために。
トワ んなことしなくても、あいつはたまに俺のピアノ聞いてるって。
ヒーロー そうじゃねえよ。いつかカズナリ君だけに聞かせるためだよ。カズナリ君のためだけに弾けよ。あっ格好つけんなよ。カズナリ君を想って弾け。告白できないなら、音楽に乗せるしかないだろ。俺達は音楽家なんだから。
トワ ……。
トワはそこら辺に落ちていた楽譜を拾い、ピアノの前に座り、弾いていく。
それはとても優しく甘い音がした。
ユメウリがやってきて楽譜を掃除する。
トワは去る。