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『ARMORED CORE REPRISES』から3曲取り出して

フロムソフトウェアのサウンドチームを中心に結成されたバンドをFreQuency(フリーケンシー)という。彼らが、根強い人気を誇るゲームシリーズARMORED CORE(アーマードコア)の楽曲を集め、バンドサウンドを基底に幅広くテクノを取り込んだ絢爛で自由なアルバムが『ARMORED CORE REPRISES』である。

「フロム脳(フロムソフトウェア製ゲームにおける考察妄想が広汎で重篤なファンの通称。アーマードコアシリーズに顕著。)」の中でもサントラ経由の新米なりに、いま魅せられている楽曲について語りたい。

トラック3「In My Heart (live edition)」
作曲・編曲:星野康太 

エレキギターが明るい予兆を運ぶ。強く弾んでいるのは鼓動で前向きのリズムを刻んでいる。ピコピコした電子音がそこに懐かしいような花を添える。時折ベースの大きな波が押し寄せてきて、明るさを更新する。その中で「In My Heart」と呟き続ける低めの少しかすれた女性の声。語尾にエコーがかかる。

ポイントはタイトルにある「In」がついていることにある。「私の心(或いは気持ち)」ではなく、あくまでも「私の心の<中では>」なのである。では「外」もとい「他者」であればどうなのか。

こんなにも気持ちが高揚しているようには見えないに違いない。

表情などで人に分かりやすくしたり、進んで誰かと共有したりするのではなく、ひとり楽しい予感に胸を躍らせる。そんな秘密めいたところに惹きつけられる。


トラック4「Thinker - reprise-」
作曲・編曲:星野康太

こちらの曲は自分が「フロム脳」を自覚するだいぶ前から知っていて、単曲データは持っていた。ただもう長らく忘れていて、データ自体もスマートフォンから削除してしまっていた。

ところが最近、自分からは決して近寄らないサウンドトラックを聴き、その質の高さに深く感銘を受けた一方で、言葉にならない程の強い抑圧を覚えた。しかしその反動がバンド名「FreQuency」を記憶から呼び起こさせてくれた。すかさずアルバムはないかとSpotifyで検索をかけたのである。

そして再び耳にした「Thinker」である。思い出のかけらを集めていくようなアコースティックギターのフレーズが印象的な前奏が染み渡るにつれ、聴覚から全身に巻き付けられていた鎖がほどけてゆくのを感じた。私が本当に求めていたサウンドはここにあるのだと悟った。

解放の歌が始った。


トラック5「Old Peal -graces-」
作曲:衛藤英幸 編曲:高山義和

時にゲーム音楽はクラブミュージックと強く接する。

乾いたテクノサウンドが疾走周回しながら移調し、厚みを増してゆく。要はガチャガチャいっているのであるが騒音ではなく、それどころかこれが実に心地よい。延々と聴いていられる。いつしか立ち上がり踵でリズムを刻みながら全身が揺れ始める。

ミニマムテクノというらしい。最小限の要素を繰り返しながら、ところどころ色味を変えつつ展開していく。その繰り返しが身体になじんでくると、自分の中にある普段触れることはない原初の蠢くものと繋がったような感覚を覚える。

突然、楽曲は途切れるように終わる。あとに残されたのは白き無音。


ゲームオタクの中でも自分はサントラ経由の「フロム脳」という位置が最もしっくり来ると判じた。すぐにこのアルバムと、「The Old Peal」のオリジナルが収録されている「ARMORD CORE LAST RAVEN」OSTの物理媒体を取り寄せた。

現時点でかき集めることができたシリーズ他のサントラとFreQuencyのアルバムも順次届く予定である。