ドイツにおけるPIWI品種栽培事情
2024年5月にドイツPIWI協会(Der Verein PIWI Deutschland)のホームページに掲載された記事(※)によれば、最近のドイツにおけるPIWI品種の栽培状況は、概要以下のとおり。
※ 記事のURLは下記
https://piwi-international.org/2024/05/piwi-flaechen/
(注)PIWI(読み方はピーヴィー)とは、ドイツ語の形容詞“pilzwiderstandsfähig”に由来する。直訳すれば「菌に耐性がある」ということで、ワイン生産においてブドウ栽培時に脅威となるカビ病原菌に対して抵抗力がある品種を指す。このようなブドウ品種は、病害を防ぐための農薬の使用量を大幅に削減できることから、近年、環境への意識の高い農家・ワイナリーによる活用が増加している。PIWI品種は、交配によって人工的に作られており、菌耐性とワインの品質(味わい)の両立を高いレベルで実現するべく、新品種が次々と開発されている。
ドイツのPIWI栽培概況
2022年にドイツでは、PIWIの白ワイン用品種は上位10品種で1,135ヘクタール、赤ワイン用品種は上位10品種で1,790ヘクタールが栽培されていた。合計では2,925ヘクタールで、ドイツにおける全ブドウ栽培面積103,391ヘクタールの2.8%を占める。また、上位10品種に限らず全てのPIWI品種の合計では、3,072ヘクタールでドイツの全ブドウ栽培面積の3%弱となっている。
白ワイン用品種の増加
PIWIの白ワイン用品種の上位10品種合計は、2021年の957ヘクタールから2022年には1,135ヘクタールへ18.6%増加した。
最大のものはカベルネ・ブラン(Cabernet Blanc)で259ヘクタール(対前年11.9%増)。次いで、ソーヴィニエ・グリ(Souvignier Gris)で205ヘクタール(同48.1 %増)、ソラリス(Solaris)が185ヘクタール(同3.1 %増)、ヨハニター(Johanniter)が138ヘクタール(同4.4 %増)、ミュスカリス(Muscaris)が114ヘクタール(同12.0 %増)などとなっている。
(注)2024年8月27日付の記事『ドイツのブドウ栽培(品種別及びワイン生産地域別)の近況(2023年)』に記載したとおり、2023年のデータでは、ソーヴィニエ・グリの栽培面積が大きく増加し、白ワイン用PIWI品種で第1位となっている。
赤ワイン用品種は微減
PIWIの赤ワイン用品種の上位10品種合計は、2021年の1,815ヘクタールから2022年には1,790ヘクタールへ1.4%の減少となった。
第1位はレゲント(Regent)で1,609ヘクタール(対前年3.0%減)、次いでカベルネ・コルティス(Cabernet Cortis)で54ヘクタール(同13.1 %増)、ピノティン(Pinotin)が32ヘクタール(同13,6 %増)などとなっている。
生産地域別の特徴
なお、オリジナルのホームページ記事には記載がないが、13生産地域別のPIWI栽培データを各地域の全ブドウ栽培面積と比較し(2022年)、生産地域ごとのPIWI比率を筆者が計算したところ、興味深い結果が得られた。
13地域全体を平均すれば全ドイツの場合と同様に3%弱であるが、旧東ドイツ地域の生産地域ではPIWI比率が高く、ザクセン(Sachsen)8.90%、ザーレ・ウンストルート(Saale-Unstrut)7.06%であった。一方、旧西ドイツ地域では、最も高いのがヘシッシェ・ベルクシュトラーセ(Hessische Bergstraße)の5.21%で、面積の広い生産地域は全国平均程度(ラインヘッセン3.25%、プファルツ3.37%、バーデン3.11%)であり、1%程度に留まる地域もあった(モーゼル1.39%、ミッテルライン1.34%、ラインガウは僅か0.62%)。
ドイツにおけるPIWI品種栽培面積データ(表)
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