裁かるゝエミリ
今回5/24にリリースすることになりましたFrancisニューシングル『裁かるゝエミリ』について書きたいと思います。
加納エミリさんとの出会い
2年前ぐらいだろうか。アルバム“GREENPOP”を聴いて面白い女の子のSSWがいるんだなぁと以前から気になっていて、たまたま彼女のインスタを見つけフォローしたところ向こうからも返してもらい、たまに私の「#オリのコーヒーゼリー」にいいねをしてくれる程度の交流が始まりました。
2021年末、数年かけて作り続けてきてたFrancisアルバム“Borelo”のリリースの目処がやっとたち、それに向けて新旧の面識のあるアーティストや文筆家の方々にコメントをお願いしていました。そんな中、ぜひ彼女にもコメントを書いてもらえたらとダメ元でオファーしてみたところ喜んで引き受けてくれたのをきっかけにして、まだ会ったこともないながらも少し距離が縮まったような。
ちょうどこの頃リリースされたイックバルプロデュースの楽曲“Steppin'”も個人的に気に入っていて、なんとなく漠然とだけど、彼女が歌う楽曲を作ってみたいという衝動に駆り立てられたのもまさにこのタイミングでした。
まずは彼女が嗜好する音楽をもっと知りたいという思いから、私が主催するDJイベント“Terminal Jive”に不慣れながらもゲストDJとして参加してもらい、まさにこれが初顔合わせの機会となりました。
後で聞いたのだけど、この夜サリー久保田さんがイベントに遊びに来てくれてなんか珍しいなぁと思っていたら、先日彼が手掛けリリースしたエミリさんをフィーチャーしたカバーナンバー企画のオファーをこの時しに来ていたとのこと。自分のイベントがそういう風にハブ的役割になれるのは大歓迎なので、この話を聞いた時に純粋にとても嬉しかった。
そして昨年の春には、私が主催するライブイベント“Francis's Playhouse”にも出演してもらうことに。この日のDJには、ネモト・ド・ショボーレくんのバンドChildish Tonesのボーカルとして知り合い、その後エミリさんが楽曲提供したりもしてる宇佐蔵べにさんに参加してもらったりと色々なご縁がじわじわと続くなと。
この時点ですでに彼女をボーカルにしたコラボ曲を作りたいという話はメールのやりとりで本人に了解をもらっていたので、あとは曲を完成するのみ。筆の遅い私なりに一生懸命作るのだけど、、、今まで女性が歌う曲の歌詞をほとんど手がけたことがなく、作詞作業は非常に困難を極めていました。
小西さんに作詞をお願いした経緯
昨年6月、下北沢mona recordsで久々に小西康陽さんと共演する機会がありました。彼が出演するとは聞いていたのだけど、DJとして参加されるのだろうと勝手に邪推していたところなんとライブをするのだという。小西さんがプロデュースしたアーティスト矢舟テツローさんのコンボを従えてご自身の楽曲をトークを交えて歌うそのライブパフォーマンスには非常に心を打たれました。小西さん自身これ以降弾き語りなどライブを積極的に続けているので、ご自身にとっても手応えのある大事な表現としてこれはさらに進化しているはず。
そもそもテイチク時代のピチカートファイブも大好きだったし、ネオGS時代から一緒にバンドをやっていた田島貴男くんがインディ時代の我々オリジナルラヴと並行してピチカートファイブのボーカリストとして活動していた時期もあり、当時は直接の面識は無いながら非常に身近に感じていた小西さん。そんな彼と、オリジナルラヴ脱退後に私が加入したザ・コレクターズの最初のアルバム“Collector No.5”のプロデューサーとして邂逅することになるとはさすがに思いもよりませんでした。
1991年、コロムビアの同じレーベルアーティストということもあってブッキングされたこのレコーディングは、同じようにスインギングロンドンが大好きな加藤ひさしと小西康陽という二人ではありながら、音楽的なアプローチでは好きなニュアンスがあまりにも隔たりがあり、スムーズには進まずけしていいムードなスタジオとはいえないピリピリとした雰囲気でした。そんな中、最初に出会うなり小西さんから「小里くんって、ピッキーピクニックだったんだよね?」とあの独特な語調で語りかけられびっくり。業界の中で一番最初にピッキーピクニックの話に触れたのは小西さんだったのです。そんなわけで急速に距離が縮まり、個人的には居心地のいいプロとして最初のレコーディングを経験させていただくことになりました。
前回のFrancisアルバム“Bolero”のリリース時に小西さんが書いてくれた、とてつもなく長文のコメントに驚かれたかたも沢山いらっしゃると思います。詳細については私自身記憶が曖昧な部分もありますがけしてフィクションという訳でも無く、私とも共通の知人だった小西さんの知人女性が冷静に当時語っているのだから、恐らくおおかた事実なのだと思います。
そういう意味で、音楽家としての関係性を超えたところで個人的には小西さんに親近感も抱いていたと言っても過言ではないかもしれません。
ピチカートとはレーベルも一緒、ディレクターも一緒だったりして色々と接点もあり、1996年にはミニアルバム「フリーダムのピチカートファイブ」のレコーディングにも参加させてもらいました。このセッションでは、今回のシングルB面「セッソマット」のkeyソロで参加してくれてる堀江博久くんも一緒でした。彼はちょうどニール&イライザをリリースした後で、聴かせてもらった記憶も。
そんな訳で小西さんとは積もる話もあり、モナレコードの楽屋でダラダラと昔話や健康状態のこと、プライベートなことなどを雑談のようにして数十年ぶりにざっくばらんと話も盛り上がりました。そしてふと制作中の楽曲の作詞に悩んでいる話になった時、勢いで「小西さんって、もちろん気軽に相談出来る方じゃないのは存じた上でなのですが、作詞をお願いしたらやってもらえたりするんですか」とまるで耳打ちするかのように大胆に打診してみたところ、「うん、いいよ。ただ、最近は他人のメロディに詞をつけることをやってないので、時間かかってもいいかな?」との快い返答。こんな有難いことってあるのか!?と心の中でひとしきり小躍りしていたその後の私。
これからしばし待ち、小西さんとやりとりを重ねて仕上がってきたのが今回のこの「裁かるゝエミリ」なのです。
けしてレトロではない、でもコンテンポラリーなものでもないが刺激的なアンサンブルとエミリさんの魅力的な歌声、そしてコンセプチュアルという枠を軽妙に逸脱した小西さんのリアルな言葉、その絶妙なコラボレーションを楽しんでいただけたら嬉しいです。
ぜひ聴いてみてください!
ちなみに後日談ですが、楽屋で小西さんに作詞依頼を打診したまさにこの日、Francisライブで暴れ過ぎて右足ふくらはぎの肉離れを初めて体験することに。全治1ヶ月。調子に乗って図々し過ぎたバチがあたったのかとも胸に手を当てて考えましたが、結果こんなに素晴らしい作品が出来たのだからそんな事すら気にならないぐらいリリースが決まって本当に嬉しいです!
改めてエミリさん、小西さん、そして前作に続き最高なアートワークを手掛けてくださった小田島等さん、Vo録音、ミックスそしてマスタリングでお世話になった佐藤清喜さんに改めて感謝いたします。
P.S.先日neeさんのnoteにて、彼女が感じたFrancisに対しての想いを綴っていただいた文章に触発され、せっかくだから自分の想いを書いてみました。neeさん、きっかけをくれてどうも有難うございます!
最後まで読んでくださり、どうもありがとうございました。
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