マジシャン入門
魔女になりたかった私はマジックに魅了された。
きっかけは小学3年生のことだった。
ちょうど、寄席出身のマジシャン、伊藤一葉が大ブレイクしていた。
彼はネタをひとつ演ったあとに「この件に関しまして何かご質問はございますか?」と言うのだが、この言葉も大ヒットした。
同じ頃、デパートのおもちゃ売り場で沢山の人が集まっているのを見かけた。近寄ってみるとマジック用品の実演販売だった。マジックディーラーの見事な技と伊藤一葉を真似たトークに観衆は魅了され次々にマジック用品が売れていった。私も両親にねだり「マジックセブン」という7種のマジックが出来る物を買ってもらった。1,000円だったと思う。
以来、このデパートに行くと必ずマジック用品売場に行き、少しづつコレクションを増やしていった。
テレビジョンでもマジックをよく見た。好きだったマジシャンは初代の引田天功としゃべくりで寄席の舞台を爆笑に包んだゼンジー北京、そして伊藤一葉だった。
マジックは中学生になっても続けてクラスの人気ものになった。私の芸風は伊藤一葉やゼンジー北京のような笑わせて人を騙すというものだった。その影響か、人を笑わせないと死ぬ病にかかり、今でも治っていない。
のちにMr.マリックが出現した時は驚いた。彼のマジックはそれまでのマジックとは次元が違う。まさに超魔術だった。マリックもデパートでマジックディーラーを演っていた。
もうひとり、デビッド・カッパーフィールドもテレビジョンを通して日本に紹介された。大人になって彼のステージを生で見たが、終演後は観客全員が立ち上がり拍手を贈った。私の人生初のスタンディングオベーションだ。
私をマジックの道に導いた伊藤一葉は酒が好きで45歳の若さで亡くなっている。先代の圓楽は伊藤と一緒に地方へ巡業に行く際、夜行列車の中でも酒が欠かせなかった伊藤の姿を何度も見たと言っていた。酒が彼の命を縮めた。
初代の引田天功は伊藤一葉と同じ年に生まれ、同じ年に亡くなった。運命の皮肉を感じる。
引田天功はマジック以外にも催眠術師としての顔を持っていた。それについては近日公開の予定。
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