通訳をするということ ~家族・友人・知人関係における通訳編~
前回投稿しました「仕事の一環としてやる業務上の通訳編」に引き続き、今回は「家族や友人、知人関係などにおける通訳編」として、わたしの最近行った通訳体験記を書きたいと思います。
どんな通訳をしたかというと、わたしの父が自身で作った作品を展示する個展を最近開きまして(作品の分野は日本伝統芸能となります)、そこにわたしのフランス語の個人レッスンをしていただいているフランス人の先生をご招待し、父を介しながら先生へ作品案内通訳をするということをしてきました。
いわゆる、仕事ではない関係性の中での “フランクな形の通訳” なのですが、わたしのフランス語レベルは高くないので、もう半ば珍道中的な、わちゃわちゃした通訳となり 笑、大変でしたが、楽しい思い出でもあり、いい経験となりました。
また、通訳体験をしたことで、自分のフランス語に関するウィークポイントが明らかになったので、フランス語を学んでいる皆さんにも参考になるかもしれないと思い、そちらについても書きたいと思います。
わたしの通訳体験
わたしの今までの通訳経験は、フランス企業と取引のある会社に勤めていた時に、数回経験したことがあるのと、知人フランスマダムの姪っ子さんが日本に旅行に来るというので、その観光の付き添いをした時くらいで、どちらもかなり昔の話となります。
正直自分の言いたいフランス語ですらままならないことがあるので、他人の意とするフランス語を訳すというのは、本当に難儀だろうと思っていました。
なので、わたしが通訳するにあたってやったことは、前回投稿の「仕事の一環での通訳編」のインタビューで学んだ、入念な事前準備です。
・事前準備
展示作品の目録を、先生に渡す用にすべてフランス語に翻訳しました。
訳すことで、自分も作品全部の概要をフランス語で頭に入れることができ、且つ知らない単語などもあって勉強になりました。
又、作品の背景、歴史、一般的な知識などに関する単語もフランス語で調べておきました。
あとは、仲の良い先生と自分の父との間の通訳ですので、その場で適宜対応していこうと思っていました。
・当日
先生はちょうど来場のお客様が少しはけて、静かになったタイミングでいらしたので、通訳に集中できそうな雰囲気でした。
先生は作品に興味津々の様子で見始められたので、早速目録をお渡しして、とりあえずフランス語で作品内容を理解してもらいながら、口頭でも補足説明をしていきました。
通訳をし始めてすぐ、わたしはある面白い点に気づきました。
それは、先生のする質問が日本人がするそれと視点が違うということです。
個展は全日程が4日間だったのですが、先生がいらしたのは最終日となる4日目、その前の3日間に、わたしは数十人ほどの来場の方に(日本人)、作品の説明や解説をしたり、その中で生まれる質問に対しての対応をしていました。
日本人の方はほとんどの方が同じようなことに疑問を持ち、同様の質問をしてきました。聞くポイント、感覚が同じ国民同士でおそらく似通うのかもしれません。もちろん、わたしも日本人なので、皆が同じような質問をすることに対して疑問も抱きませんでした。
しかし先生はとにかくこの3日間でわたしが聞かれなかったような質問をしてきます。なので、色々下調べなどの準備をしてきたとはいえ、聞かれることの答えを持っていないことが多く、冷や汗ものでした 笑。
もちろん日本人はベースとしての作品への (日本の伝統芸能への) 基礎知識があるから、ゼロベースの先生とは質問の様相が異なるということはありえるのですが、そうは言っても、やはり感性や見る視点が違うような気がしました。
ひとつ例を言うと、展示作品に使われている「塗料(顔料)の原料は何か?」とまず聞かれました。
『原料・・・(放心中)、貝殻の粉末なのかな確か..』と思って父に聞くと、「それは貝殻を粉末状にしたものに、〇〇と△△という古来からある原料を混ぜ、そして~~という工程を経て、」と始まり、急いで携帯の辞書を取り出しましたが、それはまだ一回目の質問の時でした。笑
その後も父をつかまえては「これって何?」、「これどういう意味?」、「これ何の時に使うの?」など質問は絶えませんでした。
父も外国人の方にそんな興味を持って色々質問されるということが、とても嬉しいようで、まぁ言いたいことを自由に長々と話します。笑
通訳泣かせです、話しが止まりません。
「はい一回そこでストップ!じゃ通訳タイム!」とはいきません。
時に、わたしは超小声で父に向って「いつまで話してんねん」とツッコミを入れることもありましたが 笑、わたしの技量が足りないとは言え、通訳の大変さを身に染みて思い知りました。
又、わたしの白旗があがった時は、旦那の外国語スキルを途中拝借して通訳するなど、完璧には程遠いわちゃわちゃ通訳となりました。
でも気持ちだけは真摯に、最後まで通訳をやりきりました。
・通訳中に感じたこと
-レッスンではなく、プライベートで会ったので先生の話すスピードがいつもより早い。
-絶え間なく通訳していると、だんだん日本語とフランス語のラインがごっちゃになる。
(言語の切り替えをパッとするのが難しく、なぜか父に対してフランス語を言うという事がありました。 笑)
通訳という仕事は黒子的存在でありながらも、自分の技量によって話が中断したり、会話が滞ってしまうという、重要部分を担ってもいるという、相反性を持つ特殊作業であり、本当に大変なお仕事だなと今回身を持って痛感しました。
通訳体験から学んだフランス語における自分の弱点
通訳をしていて、自分のフランス語における弱点が垣間見えました。
正直これは、普段 Podacastでラジオを聞いていても起きる現象=わたしのウィークポイントでしたので、やはりそうなのかと嘆いたとことろです。
実は、(皆さんもそういうことあるでしょうか)わたしは読む文章上で分からない単語があっても、それを無視して読み進められのに(推測しながら、気にせず読めるのに)、
口頭で聞く長文において分からない単語があると、なぜかその単語以降からフランス語がストップしがちになるという癖があるのです。
つまり、文章で読み進めるみたく「とりあえず聞き進める」ということが急に難しくなるのです。
これが現在わたしが多聴学習をやりつづけている上での大きな壁となっています。
ここの癖を取らない限り、前に進めないと自覚しています。
そしてこれは訓練しかないのだろうなとも思っています。
分からないことがあっても追随していくこと、ストップするという頭の癖を少しずつ改善すること、そしてもちろん、自分の語彙数を増やす、ということも大きなポイントとなります。
一方、多聴(Podcast, Netflix)を続けている成果も見えました。フランス語の早さにそれなりの耐性ができているように今回感じました(これは、かなりいい収穫でした)。
素のフランス語の早さにに慣れる、聞ける、理解できる、を推し進めてきた中での成果を(というほど成長曲線は高まっていませんが)少し感じ取れただけでも、なによりでした。
(わたしが現在やっている詳しいフランス語学習方法については、下記リンクをご覧ください)
わたしは、今年の2月の準1級の合格通知を受けてから、多聴学習に重点を置く勉強へと路線変更をし、かれこれ8か月ほど経ったのですが、「成長」とは成長している最中は自分では気づけず、今回のようないつかの未来に『あ、できるようになったな』とわかるものなのだと今回のことで(フランス語の早さに慣れてきたこと)あらためて思いました。そしてそれは、確実に自分の喜びとなります。
自分のレベルや趣向、目的や希望に沿った学習方法を見つけるのは意外と大変ですし、学習方法に唯一これが正しいというのもないですし、紆余曲折はするものです。もちろん間違ったっていいです(その後方向転換すればよいです)、その試行錯誤の過程も決して無駄ではありません。又、適切に分かる人から(専門家、先生など)指導を受けるということも大切だと思います。
そうした中で、見つけて進んできた自分の学習ロードが、間違っていなかった、と未来に思えることはとても嬉しいですし、「能力」という目に見えない自分の宝になって積み重なるはずです。
最後に
今回の個展では、トータル1時間以上に及ぶ通訳でしたが、自分の体感的にはあっという間でした。
先生が帰られた後、旦那から「かなり長時間連続でがんばってたね」と言われ、拙いフランス語ながらも、先生にもその頑張りが伝わっていれば良いなと思い、その後はしばらくぼーっと放心していました 笑(脳の疲労回復です)。
そして、最後のさいごにですが、私のしょうもない通訳談を皆さんにお伝えして終わりにします(オオトリにするなんて・・)
1時間以上つきっきりでの質疑応答通訳・会話をやり続けて、おそらくわたしの脳は、【何か言われたら、そのをすべてを相手のわかる言語に変換して伝えなければならない】となっていたようです。
先生が帰られる頃、お別れのご挨拶をしていた時です。
先生と一緒にいらした奥さまが「とても良いものをみせていただきました。ありがとうございました」と日本語で言いました。
わたしはなぜかそれを受けて父に、
「お父さん、すごい良かったって!ありがとうって言ってるよ!」
と日本語を日本語に通訳するという失態をしました 笑。
まわりにいた家族も先生もみんな一斉に笑っていました、、。
情けないわぁ..笑
ということで、わたしの久しぶりの通訳体験エピソードでしたが、皆さんいかがでしたでしょうか。ここまで長文をお読みくださりありがとうございました。
また次回のnoteでお会いしましょう。
À bientôt !
Eva
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