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通訳をするということ ~仕事の一環としてやる業務上通訳編~


わたしはプロの通訳の方を尊敬しています。

通訳は基本的に会話・発話等の2か国語以上の言語間変換を担います。
会話は生き物なので常に話題は流動し、主題から話が逸れていくこともあれば、状況が想定外の自体に及び説明に困ることも起きます。

プロの通訳者はそういうことに惑うことなく対応する能力、且つ特定分野や業種の専門知識や専門用語の蓄えなども持ち合わせます。
語彙力、語学力は当然のことながら、オールマイティな対応力を要し、言語変換を瞬時に行っていくお仕事「プロの通訳」とは、語学界の端くれにいるわたしからすると、ほんとに雲の上の存在、いや宇宙を見るほど高いレベルのお仕事をされていると思っており敬服しています。


さて今回は、その「通訳」に関連する記事となりますが、プロの通訳、プロの視点や側面からみたお話しではありません。これをはじめにお伝えさせていただきます。

わたしが記事内で書く通訳の内容は、

-自分の業務上の一環としてやっているもの
-家族、知人などに頼まれてやるもの
-外国人の友人が訪日するので、その案内や付き添い人としてやるもの

となります。

つまり、一般のある程度の語学精通者が、必要性があって行うという状況での「通訳」に関する内容となります。
(もちろんプロではないのでそこに金銭授受は発生しません)

また、今回の通訳記事は2回に分けて投稿します。
1つ目は、仕事の一環としてやる「業務上通訳編」
2つ目は、家族、友人、知人関係としてやる「フランクな通訳編」
となります。


通訳に特に興味はないという方も、外国語でコミュニケーションをするという観点でみると、とても役立つ内容が入っていますので、是非参考までにご覧になってください。


仕事の一環としてやる「業務上通訳」とは


以前のnoteで「日本でフランス語を使う仕事に就くにはどうすればいいか」という記事をあげていて、そこにも登場しておりますが、わたしの知人で、現在フランスに関わる事業の会社に10年以上勤めており、業務上日常的に外国語を使用、通訳をすることも頻繁にあり、且つ海外出張にもよく行かれている方がいます。

この方に、業務の一環としてやっている通訳についてのお話を伺いたく、インタビューをさせてもらいました。

とても価値のある回答が多かったので、質疑応答形式でそのインタビュー内容をすべて載せていきたいと思います。
(掲載することに関してご本人の承諾を得ています。)




<記載方法>
知人の陣さん(仮名です):陣
わたしEva:E


E:インタビューよろしくお願いします。さて、早速ですが、業務上の一環として通訳をやる際に “これは絶対必要だな” と思うことは何ですか?


陣:「事前準備」 ですね。どんな通訳をするのか、つまり商談内容によって、その情報や背景、歴史的なことから、専門用語についてなど諸々のことを必ず調べておきます。
又、その海外の方の国のことを(通訳する相手の方の国)どれだけ知っているかが、通訳する上での強みになるということが多いと思います。


E:何か実例でそれを具体的に教えてもらえますか?


陣:実際にあったのが、通訳時に、話題が日本の古典や歴史の話に及んだことがあって、そこで外国人に、例えば「源氏がこうで、平家がこうでね」なんて説明しても、相手からすると、その知識がない限りどんなに説明しても伝わりづらいんですよね。

そういう場合に、それに相応する「あなたの国でいうところの〇〇ですよ」というような通訳をしてあげると、話が早い、相手がパッと理解した、ということがよくあるんです。

これは日本語でそのもの自体の説明を細かく訳していくのは難しい、という時にとても使えるテクニックだと思っています。


E:なるほど。確かにそれは大変分かりやすいです。何か他にも大事だと思うポイントはありますか?


陣:相手や、商談の場において、いい雰囲気をつくることですね。


E:具体的に説明いただけますか?


陣:例えば、商談を始めるにあたって、外国の方が自分たちの持ってきた商材などについて、日本人に対して「既に見聞きなどして、少しは知っていますか?」と聞くことがあるんです。
しかし、日本人側から普通に「全然知りません」って答えられることがあるんですよね。笑

それをそのままそっくり返す、そのまま訳すというのが、通訳なのかと思うのですが、わたしは商談のいい雰囲気を作るために、あえて訳として「先方は知らないそうです。しかし興味はあるみたいですね。」と商談を円滑にさせる為の、ネガティブ的発言はそのままには伝えない、ということをテクニックとしてやることがあります。

ここがプロの通訳の方と違うところでしょうか。
目的は商談なので、正確な訳しではなくてもいいというか。それによって支障があったらだめですが、相手がクライアントとなると、弊害がでない程度での雰囲気作りとしての訳し、というのは、テクニックの一つとして重要でもあるかなと思っています。


E:なるほど。次に少し失礼な質問で申し訳ありませんが、10年以上のキャリアをお持ちですが、今でも通訳中に相手の外国語が「何言ってるのか分からない」って思うことはありますか?


陣:ありますよ 笑。さすがに全く分からなくて立ち行かないと言うことはないですけど、通訳していて思うことは『もっといい訳があるんだろうなぁ..』と感じることが多いですかね。


E:万が一、その場で分からなくて困った時はどう対処されているんですか?


陣:普通に相手に聞きます。「もう一度言ってください」か、「その言葉はどういう意味ですか?」など。プロの通訳ではないので、あくまで仕事を進めている最中の話だから、別に聞くことによって問題が起きるということはありません。

あと、そういう場合、けっこう大事なのが「発想力」だと個人的に思います。ドンピシャの言葉、単語や言い回しなどが瞬時に通訳していて思い浮かばない、ということはあります。でも、近いキーワードなどを手繰り寄せて、それを中心に文章に変換していく、ということも手段として用いています。

わたしは同時通訳者とか、イベントのMC通訳とかでもなく、あくまで基本「商談」なので、相手に聞いたりすることができる環境にいることが多いです。なので分からない時は率直に相手にまず聞きますね。


E:ありがとうございます。では、陣さんにとって「業務上で行わねばならない通訳」とは何か、個人的な想いなどはありますか?


陣:うーん(熟考の上)、「2国間交流の草の根」でしょうか。観光だろうが、ビジネスだろうが、そこを担って、日本のよいところを知ってもらいたいという気持ちがありますし、ただ訳すのではなく、先程言ったような小技なんかも使いながらも、互いに興味をもってもらいたいという感じでしょうか。

特に“雰囲気作り”という側面では、これはAIにはできないことだと思っているので、人間的な部分の草の根交流を円滑に好感的にできるように努める、という価値があるかなと思います。


E:わかりました。今まさにお話しにでました、AI通訳についてもお伺いしたかったのですが、ずばりAI通訳のことをどう思っていますか?


陣:「避けられないもの」この一言に尽きます。


E:今後通訳をAIに頼みたいですか?


陣:うーん、今のAI通訳のクオリティではまだ頼めないですね。でもあと5年以内には、実現するかもしれません。

わたしが個人的に思うことですが、AIって「添乗ができない」んですよね。
「お付きの人」になれないというか。
1箇所にとどまってやる通訳としてなら将来的にAIでよいかもしれませんが、企業を何社もまわったり、食事や観光、訪問先など行く先々で起きる何か分からないことや、聞きたいこと、円滑に早く進めたいこと、などを対処していくにはAI頼みだけではうまくいかないんじゃないかなと想像しています。
又、人としての「付き合い」「関係性」というものがありますからね。そこはAIには代われないと思います。


E:わかりました。とってもためになるお話ばかりでした。色々お聞かせいただきありがとうございました。




まとめ


「なるほど」とお話しながら、うなずくばかりのインタビューでした。
あくまでも業務を遂行する上でやっている通訳なので、言葉の変換だけを重視しているのでははなく、雰囲気や進行を作る・読む、又商談がうまくまとまるためのテクニックがある、というのが新たな発見で大変面白いと思いました。

又、分からないことがあったら率直に聞く、相手の国での例え話をして分からせることもある、というような会話をうまく進める方法などは、通訳だけではなく、日常の会話力としても勉強になる内容でした。

わたしは通訳を日常的にやることは全くありませんが、会話をうまく行う心がけとしても役立つお話でしたので、今回の記事としてシェアをしました。

皆さんいかがでしたでしょうか? 次回は、フランクな形式の通訳へと内容が変わります。「家族や友人、知人などに頼まれてやる通訳編」となります。


わたしは最近、父が自身の作品を展示する個展を開きまして、そこに個人レッスンをしていただいているフランス人の先生をご招待し、父を介した先生へ作品案内通訳をするという体験をしてきました。
その内容も含む「仲良しフランク通訳」となっております。笑

こちらは一転、笑いあり、わたしのフランス語レベルが高くないので、通訳はわちゃわちゃして大変でしたが、楽しい思い出共有型通訳の結果、得たことなどについても書く予定でいます。是非そちらの投稿も合わせてお読みください。


ではまた次回のnoteでお会いしましょう。

À bientôt !

Eva

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