長門湯本の再生②弱者は強者を真似は諦めるの巻【狂犬ツアー】
観光業においてもランチェスター戦略における『強者の理論』を、安易に『弱者』が真似してはいけないと、長門湯本での狂犬ツアーブリーフィングから思いました。
木下斉さん主催の狂犬ツアー@長門湯本。40〜50年ほど前には観光客数がピークの40万人近くになるも、その後はほぼ半減してしまいます。
昨日の記事で、かつての観光客数という『過去のプライド』を捨てて、新しく参入した星野リゾートに街作りのアイデアを求めた長門湯本の事例を紹介しました。なかなか過去のプライドが邪魔をして次に進めない人も多い中、英断だったと思います。
ブリーフィングでは、また別の気付きとして、『弱者』が安易に強者のマネをしなくていいこともわかりました。
温泉観光におけるランチェスター戦略
私は群馬県出身のため、温泉というと草津温泉のように硫黄の香りがモクモクと香り、湯畑がドーンとあって、その周辺を観光客数がそぞろ歩きするイメージがあります。
ありがたいことに草津温泉は日本の3大温泉としてカウントされることが多く、私の観たサイトでは草津温泉、有馬温泉(兵庫)、下呂温泉(岐阜)が紹介されていました。
これらの温泉地(ここでは『強者』とします)の共通点としては、もちろん長門湯本のように歴史はありつつ、大都市圏に近く、高速バスや電車など公共交通機関でもアクセスしやすい点が挙げられます。
長門湯本も広島市や福岡市、北九州市といった大都市からの物理的距離は近いものの、車でないとアクセスしにくい点が、温泉地における『弱者』な点の一つだと思いました。
アクセスや立地の面で『弱者』の長門湯本の再生に際して、ベンチマークとして安易に『強者』のやり方を真似することもできたはずです。
・草津温泉みたいに湯もみのショーを始めよう!(???)
・温泉に草津と同じ硫黄の成分を人工的に添加して『擬似草津』を味わってもらおう!(???)
・有名温泉地で流行っているインスタ映えするカフェを誘致しよう!(???)
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しかし長門湯本はこれらの『強者』の模倣をするのではなく、『弱者』としてのまちづくりに取り組みました。
・公ではなく民間がリーダーシップをとる
・新しく参入した星野リゾートにまちづくりのアイデアをゼロベースで依頼する
・入湯税の取り扱い方として、本来の150円に上乗せする方法を取り入れる
・温泉街の中心部にある『恩湯』(おんとう)について、あえて浴槽内の水深を深くしたストーリー※を広める
※浴槽のお湯が深いため、子どもは入るのが怖いが、いつの間にか成長して足がしっかり底につくようになり、成長したことを実感する、というストーリーが、恩湯利用者の共通の話題になる
長門湯本は安易に『強者』の二番煎じに走ることなく、上記のような戦略でまた観光客数が増えつつあります。
私たちも何か物事がうまくいかない時、うまくいっている事例のわかりやすいところだけピックアップしてそこを真似しようとしがちです。
でも真似るべき本質は本当にそこなのでしょうか。
何かの本で知ったのが、東京ディズニーリゾートにインスパイアされて、北九州市がディズニーのわかりやすい要素を真似したアトラクション施設を作った事例を聞いたことがあります。
真似するとはいえ、イメージキャラクターの知名度はミッキーマウスたちには到底及ばないキャラクターで、しかも東京ディズニーリゾート周辺の人口密度と北九州市周辺のそれとは全く規模感が異なるため、全くうまくいかなかった、というものでした。
『強者』を安易に真似するのではなく、弱者の戦略として自分たちのカードには何があるのか、把握しながら進めないといけない事がよくわかる事例です。
私たちも仕事やプライベートが常に順風満帆で進むとは限りません。そんな時、ついうまくいっている人の形だけマネをして、それでも上手くいかず、なんで上手くいかないんだー、と凹むこともあります。
でも真似をするだけだと、真似することが目的になって結局二番煎じ感が否めないアウトプットになるのですよね。
思考停止して他人のマネをするのではなく、自分のボトルネックになっているものはなにかを考えながら、物事に取り組みたいと思える事例でした。
それではまた!