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DELF/DALF対策:Productionパートで高得点を取るコツについて
今日は、DELF/DALFの本質についてお話ししようと思います。
テーマはズバリ、Cohérence(論理性) と Cohésion(結束性)――論理的に話すうえで不可欠な概念です。
多くの人にとって、フランス語学習 と聞くと、まず思い浮かぶのは文法や発音、語彙の習得かもしれません。しかし、とりわけDELF対策(特にB2以上) では、それだけでなく、論理的に話す力も鍛えられます。
なぜならDELFのProductionパートでは、単に文法的に正しく表現できるかだけではなく、「意見を筋道立てて説明し、相手を納得させる力」 が評価の軸になっているからです。
まさに、この試験の学習を通じて得られるのは、どの言語でも活かせる「伝える力」そのものなのです。
説得力のある話し方とは
話をするとき、ただ言葉を並べるだけでは、相手にうまく伝わらないことがあります。「話が分かりにくい」「結局、何を言いたいの?」 と言われた経験がある人もいるかもしれません。
では、どうすれば「分かりやすく、説得力のある話し方」ができるのでしょうか?
ここでは、DELF/DALFの exposé(口頭発表) を、「東京から大阪までの移動」にたとえて考えてみましょう。
スムーズに移動するためには、二つの条件 が必要です。
最適なルート
快適な乗り継ぎ
この二つが揃えば、目的地まで迷わず、スムーズにたどり着くことができます。話の展開も同じで、ゴールを明確にし(最適なルート)、各ポイントをスムーズにつなげる(快適な乗り継ぎ) ことが大切なのです。
最適なルート
行き方を決めずに適当に電車に乗り、「京都に寄ろうかな?」「やっぱり北海道もいいかも!」と迷いながら移動していたらどうでしょうか?
結局、どこに向かっているのか分からなくなり、無駄な時間が増えるばかりで、目的地にたどり着くのが難しくなってしまいます。
これは、話をするときも同じです。
最初に「何を伝えたいのか」というゴール(結論)をはっきり決めておかないと、話があちこちに飛んでしまい、聞き手は何を聞かされているのか分からなくなります。
具体例
❌ 悪い例(矛盾がある)
環境問題の解決には、車の使用を減らすべきだ。
なぜなら、電気自動車は環境に優しいからだ。
✅ 良い例(矛盾がない)
環境問題の解決には、車の使用を減らすべきだ。
なぜなら、車の排気ガスが温室効果ガスの大きな原因だからだ。
快適な乗り継ぎ
もう一つ。目的地が決まっていたとしても、そこにたどり着くまでの移動がスムーズでなければ、旅は快適ではありません。
大阪へ向かうのに、新幹線とバスを乗り継ぐ必要があったとします。もし、乗り換えの案内が分かりづらかったり、時間が極端に短かったりすれば、途中で迷ったり、次の便に乗り遅れたりするかもしれません。逆に、乗り継ぎがスムーズであれば、迷うことなく快適に目的地へ到達できます。
話し方も同じです。伝えたいこと(目的地)が決まっていても、その間の説明が途切れたり、唐突だったりすると、聞き手は途中で混乱してしまいます。
具体例
❌ 悪い例(接続詞が適切でない)
インターネットは私たちの生活を便利にしている。インターネットを使うと、情報を素早く得ることができる。ニュースサイトを利用すると、今日の天気だって瞬時に調べることができる。
✅ 良い例(接続詞が適切)
インターネットは私たちの生活を便利にしている。なぜなら、インターネットを使えば、情報を素早く得ることができるからだ。例えば、ニュースサイトを使えば、最新のニュースを瞬時に調べることができる。
フランス語で言うと
このように、話には 「最適なルート」と「快適な乗り継ぎ」 が必要です。
最適なルートが決まっている:全体の流れや構成がまとまっている
快適な乗り継ぎがある:接続詞を使って文と文、段落と段落をスムーズに繋げている
これをフランス語では、Cohérence(論理性) と Cohésion(結束性) と呼びます。
つまり、
Cohérence(論理性) = 話の構成(planなど)
Cohésion(結束性) =接続表現(connecteurs logiques)
を意識しないといけないということです!
DALF C1で求められていること
わたしは、このように話の構成を考えるのが非常に好きで、実際に DALFのPO(口頭試験)では満点 を取ることができました。
B2とC1では、exposé(口頭発表)に与えられる話す時間自体はそれほど変わりません。しかし、準備時間は 30分から1時間に増えます。これはつまり、C1では語彙や表現力の向上が前提として求められる一方で、論理的な構成を作ることに、より多くの時間を割く必要があるということです。
要するに、Cohérence(論理性) と Cohésion(結束性) に磨きをかける時間が増えるのです。
(この観点から見ても、一見すると「DELF/DALFのPO」と「仏検の二次試験」は形式が似ているものの、本質的に求められるものがまったく異なることが分かります。仏検(準1級と1級)の面接準備時間はたった3分です。)
わたしはexposéをするとき、単に意見を述べるだけでなく、どの順番で話せば、最も説得力が増すのかに結構こだわります。
例えば、「賛成する理由は2つあります」と言うとき、どちらの理由を先に話せばよりスムーズに伝わるのかを意識します。また、メリットとデメリットを話すとき、構成上どちらを先に持ってくるべきかも慎重に検討します。
なぜなら、話の順番ひとつで、聞き手の受け取り方が大きく変わるからです。
最後に
そして最後に、なぜこのような観点が重視されるのかを考えると、さらに興味深いものが見えてきます。
言葉を学ぶということは、単に語彙や文法を身につけることではなく、その言語を話す人々の思考や価値観に触れること。
フランス語を学ぶことで、フランス的な「議論の美学」を理解し、それを実践できるようになる。それこそが、外国語学習を超えてフランス文化の本質に迫ることではないでしょうか。