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余市のワインをめぐる旅 ドメーヌ・タカヒコの畑をめざす
せっかく仁木フルーツ&ワインマラニックに参加するのであれば、隣町の余市にも行ってみたい。そんな思いから始まったのが、今回の余市のワインをめぐる旅です(仁木も余市も余市郡にあることから、「余市のワインをめぐる旅」とします)。
余市のワインをめぐるといっても、余市の町内にあるワイナリーの多くは家族経営もしくは小規模運営で、一般客の見学を受け付けていないところが多いです。滞在先の札幌もしくは小樽市内で見学や試飲ができるワイナリーを訪問しようかとも思いましたが、やはり余市のぶどう畑だけでもみてみたい、ということ、そして自然の中に身をおいて頭を空っぽにしたい気持ちがあったこと、また、現地に行けばもしかしたらドメーヌ・タカヒコのまぼろしのワインを入手できるかもしれないと思い、余市へ足を運んでみることにしました。目指すはドメーヌ・タカヒコのぶどう畑。
交通手段は自転車
去年のボルドーワインを巡る旅に続き、今回も手段は自転車。幸い、余市駅隣接の余市町観光協会が運営するエルラプラザでは、自転車と電動アシスト付き自転車のレンタルをしています。ドメーヌ・タカヒコのワイナリーやぶどう畑の中には入れないものの、余市駅から4.5km程のところにドメーヌ・タカヒコの展望台があり、そこからぶどう畑や余市の眺めを一望できるとのこと。ワイナリーを回れるサイクリングマップをいただき、4時間1,500円の電動アシスト付き自転車を借りて、この展望台を目指すことにしました。
※レンタルには飲酒乗車しませんという内容の確認書にサインが必要(日本の道路交通法では飲酒での自転車運転はダメ)
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駅から国道5号を経て、道道36号をひたすら走ります。自転車専用レーンはありませんでしたが、通行する車の数はそれほど多くなく、快適に走ることができました。
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この日も晴天でしたが、空気はからっとしていてサイクリングには最適でした。道道沿いに休憩用のレーンがあり、りんごの絵と共に「ご自由にお休みください」という案内看板が立っていました。あまり見かけないタイプの看板で、背景にある青々としたぶどう畑と空に溶け込んでいたので、ついカメラを向けてしまいました。ちなみにこの看板は道道を行き過ぎてたまたま目にしたもので、お目当ての展望台へはこのパーキングの手前の農道を曲がります。
農道に入って民家を過ぎると、一気になだらかな丘陵地が開けてきます。道路沿いには、すでに赤く色づき始めているリンゴの畑に、垣根仕立てのぶどう畑が見渡せます。
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なだらかな坂を下り再び丘を登ると、ニトリ観光果樹園が見えてきます。
また、この周辺からは断崖絶壁の尻場(しりば)山と日本海の絶景を見渡せます。観光果樹園の向かいにある駐車場の端には、大きなりんごの形のオブジェを発見しました。
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このオブジェは「透明リンゴ」といって、明治の北海道開拓の時代、この地でのりんご栽培を指導したアメリカ人技術者、ルイス・ベイマー氏の功績を称えた顕彰モニュメントのようです。
農道を挟んだ向かい側の観光果樹園は現在、「お、ねだん以上」のニトリグループが運営しており、果物狩りのほかに飲食店も兼ねていて、ジンギスカンなどの食事やアップルパイ、ソフトクリームの販売も行っているようです。また、最近ではこの農園オリジナルのワイン作りもしているようで、今後、ニトリでお値段以上の高品質なワインが買えるかも?
Nana-Tsu-Mori
観光果樹園を経てぶどう畑沿いを走ると、ついにドメーヌ・タカヒコのぶどう畑の表札が見えてきました。
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これまでさまざまな媒体で何度も目にした、赤いフォントが素敵なナナツモリの表札……ですが、あいにくうまく撮影できませんでした。
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目当ての展望台は、この入口の歩いてすぐ先にあります。
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ドメーヌ・タカヒコのぶどう畑の中に入ることはできませんが、こちらの展望台は一般解放されています。
早速階段を登ってみると
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展望台の中には椅子数脚に、赤いピノノワールと黄色いブランドノワールの空き瓶が並んでいました。ボトルを1本お借りして、記念写真を。
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ちなみにこの畑の入口の表札にはアルファベットで「ナナ・ツ・モリ」と書かれています。ずっとどういう意味なのだろうともやもやしていたのを思い出し、展望台で調べてみました。
この畑はかつて、7種類の果樹が育つ果樹の森でした。
その畑の歴史を後世に伝えるために、ナナ・ツ・モリ(七ツ森)と言う名前が付けられたました。
現在、ナナツモリの畑はドメーヌタカヒコが所有しており、ピノ ノワールだけが栽培されております。
この畑の全てはビオ(有機栽培)で管理されており、ラベルにはドメーヌタカヒコと明記されております。
展望台は居心地がよく、景色を眺めながら1時間程ぼーっとしてしまいました。その間、見学者がひと組、また小さな農機がやってきてぶどう畑で作業を始めました。
ドメーヌにきました🚲@DomaineTakahiko pic.twitter.com/zP31osJttP
— 𝑓𝑟𝑎𝑐𝑜 (@chezFraco) September 6, 2024
余市ワイナリーを寄り道
展望台訪問後は、観光協会でいただいたマップのサイクリングコースに沿ってサイクリングを楽しみました。
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サイクリングの終盤、余市のワイナリーの中でも最も歴史の古い「余市ワイナリー」を訪問しました。ここでは自由に醸造所の見学ができるほか、レストランやカフェ、またワインの直売を行っています。
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現地調査
サイクリングを終えた後はダメもとで余市駅付近の酒屋をまわり、ドメーヌ・タカヒコのワインを探してみることにしました。ドメーヌ・タカヒコのワインは余市町や札幌市内、その他一部の酒販店でしか取り扱いされていませんが、地元に行けば、何か良い情報がもらえるかも。
ドメーヌ・タカヒコの公式ウェブサイトの取扱店や、余市・仁木ワインツーリズムプロジェクトのガイドブック掲載のお店、その他ネットに情報のない地元の酒屋さんなど数件回ってみましたが、お店の方は「今はもうないね」と口調をそろえて仰っていました。
タカヒコグッズ購入
たかが数件の訪問でまるで自分自身が否定されたような失意の中(私は小さい人間だ)、駅前を歩いていたところ、セレクトショップのようなおしゃれお店を発見。ショーウィンドーにドメーヌ・タカヒコのロゴマークがあしらわれたエコバッグなどのグッズが飾られていました。
ここはYoichi Loopという宿泊施設を兼ねたレストランが運営するワインや余市の特産品を販売しているお店で、ワインのテイスティングも実施中とのこと。スタッフの若いお兄さんが仰るには、ドメーヌ・タカヒコのワインはなく、ご本人もこのワインを飲む機会はこれまでまだないとのこと。
ウィンドウに飾ってあったエコバックや手ぬぐ
い、バッジなどのグッズは、前の週に行われた地元余市でのワインイベント「La Fête des Vignerons à YOICHI(ラフェト・デ・ヴィニュロン・ア・ヨイチ/農園開放祭」の開催を記念して作られたもので、現在はこのお店だけで販売中のようです。
はじめてのタカヒコ
タカヒコグッズを買った後、駅から伸びるリタ・ロードをとおり、ニッカ・ウヰスキーの蒸留所の歴史の重みを感じさせる外観を見学(所内の工場見学は1か月先まで予約満席とのこと)。その後、電車が来るまで時間があったので、午後の時間帯にも開いていた駅前のワインバーに寄ってみました。
そしたらなんと、この日はドメーヌ・タカヒコのワインが2杯分だけ残っているのことで、迷わず注文しました。
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今回いただいたのは、ヨイチノボリ パストゥグラン (2020)です。
ワインの名前「パストゥグラン」は、もともとはブルゴーニュ地方でガメイとピノノワールをアッサンブラージュしたものを指したものですが、こちらはピノノワールと余市を代表する赤系品種・ツヴァイゲルト・レーベをアッサンブラージュしたものです。
熟成を感じる縁の淡いガーネットの色味に、いちごやラズベリーなどの赤いくだもの、すみれやばらのような華やかな香りにきのこや湿った土、そしてしょう油のような形容しがたい日本の発酵食品のような複雑な香り。そして一口ごとに感じる長い余韻が印象に残りました。
このワインバーは金曜午後からから日曜日にかけて週に3日しか営業していないお店で、ワインのラインナップは毎回変わります。そしてドメーヌ・タカヒコのワインは前の週、特別に開けたものの残りもので、幸運にもあやかれるのはあと2人だけ。私が入店したのはちょうどお店のオープン直後でした。運がよかったです。
私の入店直後にひとりでいらっしゃったお客さんはタカヒコ(勝手に省略)をオーダーしなかったので、つい「タカヒコあるみたいですよ」と話しかけてしまいました。その方は笑いながら、今日はタカヒコはいいやみたいなことをおっしゃっていました。ワインの経験値の差を感じて恥ずかしかったのですが、彼も関東から来て翌日に仁木のマラニックに参加予定、また今年は仁木のマラニックと同日に行われたメドックマラソンにも参加経験があるとのこと。勝手に親近感がわきつつも電車の発車時刻が近づいてきたので、タカヒコの余韻を感じつつお店を去りました。
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それにしても、特に旅となると「これを見たい」「ここに行きたい」と思うが最後、異常なまでの執念には自分自身であきれることがあります。このエネルギーを何かもっと別のことに捧げられればよいと思うのですが、今のところ自己満足で終わってしまっています。せめてこの記事が、どなたかの旅の後押しになることを祈るのみです。
さて、夜は小樽にて。
北海道チーズのフォンデュに、またも北海道を代表する白ぶどうのケルナーの図。
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