ワインエキスパートの勉強まとめ(ローヌ渓谷地方①地理的特徴)
フランス10大産地の中でも重要な地域のひとつで、銘醸地が点在するローヌ渓谷地方をまとめていきます。
地理的特徴
・ローヌ渓谷地方の名前の由来でもあるローヌ川は、スイスとの国境にまたがるレマン湖からサヴォワ地方、大都市リヨンを経て地中海にそそぐ大きな川です。ローヌ川は北から南へ流れるので、西部(写真左側)が右岸、東部(写真右側)が左岸となります。
・ぶどう畑はローヌ川に沿いを約250kmにわたって広がり、一般的に北部(ヴィエンヌVienneからヴァレンスValenceまで)と南部(モンテリマールMontélimarからアヴィニョンAvignonまで)にニ分されます。
・冬から春にかけてミストラルという非常に強い地方風が長期にわたって吹き続けます。大西洋からアルプス山脈で折り返した風が、勢力を拡大しながらローヌ渓谷を含むフランス南部に広く吹き抜けます。地元の人々はこの風が苦手らしいです。
北部の特徴
北部の特徴・この地域は中央山塊とアルプス山脈の衝突によって渓谷が生れ、山がちな急斜面にぶどうが植えられています。このため垣根仕立てに適さず、棒仕立てで栽培されています。ほとんどの畑が右岸にあります。
・中央山塊に近い右岸の土壌は花崗岩(ボージョレ北部と同じ)です。
・気候は半大陸性よりです。
南部の特徴
・ローヌ川の河口に近く、丘陵や平地が多い地域です。ミストラルが強く吹くためここでも垣根仕立てができず、棒仕立てにより栽培されます。
・この地域の土壌は多様で、たとえばシャトー・ヌフ・デュ・パプはガレ・ルレという大きな玉石に覆われています。
・気候は地中海性気候よりです。
下の動画では、30秒でローヌ渓谷地方を概観できます。
ローヌ渓谷ワインのプロフィール
・ローヌ渓谷地方の栽培面積と生産量は、ボルドーに次いでフランス第2位です。
・赤ワインの生産が全体の8割を占めますが、ロゼ、白のほか発泡ワインやVDN(天然甘口ワイン)も生産されています。
・ぶどうの品種は白・黒とも多岐にわたり、地区によって異なります。
長い歴史あるローヌ渓谷地方
中世の古い町並みを残すローヌ地方ですが、ワイン史においても重要な事件があります。
ぶどう栽培は早期に行われた
1世紀 にローマ人がマルセイユを経由して北上し、ローヌ渓谷の傾斜を中心にぶどうを植樹しました。
中世の一時は法王の拠点に
中世に入るとワインづくりがさらに加速します。
1309年、時のフランス国王の影響下にいたボルドー(グラーヴ地区ペサック村のシャトーパプ・クレマン)出身のクレメンス5世が法王になり、ローマにあった法王庁をアヴィニョン(ローヌ地方南部ヴォークリューズ県庁所在地)に移転しました。次のヨハネス22世はアヴィニョン北部、現在シャトー・ヌフ・デュ・パプの地に居城を建築しまし、周囲のぶどう畑の開発にも献身しました。
なお、現在は町の名前ともなった「シャトー・ヌフ・デュ・パプ」はフランス語で「教皇の新しい城」を意味します。
フランスAOCの先駆者
試験の大部分を占めるAOC問題。そのAOCの礎を築いた方がこの地区に。
19世紀に入るとぶどう栽培面積が徐々に拡大します。一方、北米から入り込んできた害虫フィロキセラによる被害や悪天候によるワインの品質低下、産地の偽装が蔓延しました。
当時法律家でシャトー・ヌフ・デュ・パプでも一流のドメーヌの娘と結婚したル・ロワ男爵がこの地域の呼称保護の法整備に着手します。このときの仕様書に盛り込まれたぶどうの品種、栽培地区の範囲や栽培方法、アルコール度数などのラベル記載ルールが1935年に法定化されたAOCの基礎となりました。1936年にシャトー・ヌフ・デュ・パプはタヴェル、プロヴァンス地方のカシス、南西地方のモンバジャック、ブランデーのコニャックとともにフランスで初めてAOCの認定を受けました。
このル・ロワ氏は「フランスAOCの創始者」と言われ、後に設立されたINAO(の前身組織)やフランスワイン学士院Académie du vin de Franceにも在籍しました。
参考
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