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麺作りのために小麦を育てた話 【0からラーメン】
さて、ラーメンを作ろう
そう思い立ってまずあなたは何をしますか?
カップ麺に注ぐためのお湯を沸かすでしょうか?
それとも時間のある休日のお昼なら、いつもよりちょっと手間をかけて生麺を用意して、お気に入りのラーメンスープを丼にあけるでしょうか?
それとも…...麺の原料である小麦を育てるために畑を耕すでしょうか?
FR0M SCRATCHのラーメン作りはここから始まります。
ラーメンと言えば麺。
麺と言えば小麦。
ラーメン調理のための小麦の栽培から製粉までを記そうと思います。
ちょっと料理を頑張ってみたい、ラーメンが好き、そんな方は参考にしてみては?
(FR0M SCRATCHとは何か?をこちらの記事で紹介していますので、ぜひ見てみてくださいね。)
麺作りは畑作りから
麺作り、すなわち小麦作りに必要なこと。そう、まず栽培場所が必要です。
というわけで畑を耕します。一般的な収穫量から10人前以上の小麦粉が穫れる分の面積、約6㎡を逆算し畑の開墾スタート。地道に鍬をふるいます。
ラーメンの麺、すなわち中華麺について調べると準強力粉という部類の小麦粉が使われているよう。準強力粉という耳馴染みのないこの粉の正体は、小麦に含まれているグルテンの含有量が強力粉と中力粉の間の小麦粉を示すようです。ちなみに、グルテンというのは簡単に言うと小麦特有のたんぱく質のようです。
ラーメン向きの小麦の品種もあるようですが、東京での栽培に適している種は見つからず、強力小麦である「ユメカオリ」と中力粉である「農林61号」をブレンドすることで準強力粉を作ることに決定。
強力粉用のユメカオリ。夢を追いかける少女を彷彿とさせるキラキラネーミング。パン用と書いてあるが、小さいことは気にしないのが料理のコツ。
中力粉用の農林61号。病害などにも強く日本を代表する小麦。改造を繰り返されたサイボーグさながらの名前からその風格を漂わせる。
種を植えて約一週間。
出芽!
毎日畑に行っては、芽が出ていないかと変わり映えのしない地面を眺め続けたあの希望と落胆の日々とはお別れです。
さらに一週間後。
一気に葉が伸びてきます。
種を植えてから一か月後。
ぱっと見た感じ規則正しく並んだ雑草です。
種まきから二か月後
順調に葉の数を増やす小麦たちですが、思ったより成長スピードが遅いです。
お前のためを思って踏みつけてやるんだ。
そして...... ついにこの日が......
何者かによって畑が荒らされている......
わけではありません。
麦は踏むことによって、収量が増えたり茎が太くなり風に強くなったりするのです。
大事に育ててきた麦を思いっきり踏んでいくのは、背徳感もあいまってなんだかイケナイ悦びに身をゆだねているようです。
この麦踏を約1か月ごとに2~3回行います。大体種まきから約3か月後と4か月後になります。
踏まれれば踏まれるほど強くなる最強体質。私もそんな小麦のような存在になりたいと憧れます。
しかし、4月を迎える頃の小麦は茎が頑強さを増し、踏むと折れてしまうのでこれ以降は麦踏は行いません。
踏まれて強くなれたのは若く純粋だったあの時だけだったのです。成長した今ではたっぷりの肥料と水とお日様を待ちわびるただのニートです。わたしもそんな存在になりたいとつくづく思います。
種まきから約5か月後(4月)の小麦。日が強くなると驚くほど一気に伸びます。
踏んでごめん、、これからは大切にするから。
定期的に踏み倒してきた小麦に今度はこれでもか、というくらいに優しさを注ぎます。冷たく突き放したあとにふと見せる思いやり。これでどんな小麦も私のものです。
第一弾は土寄せ。
お布団を掛けてあげるように、たっぷりの愛情を込めて根元に土を寄せていきます。この土寄せを行うことによって根元の乾燥を防ぎ、背の伸びた小麦が倒れることを防ぎます。
第二弾はネット掛け。
実がつき始める5月ごろはライバル(鳥)との争奪戦になります。「お前のことは俺が守ってやる!」の心意気でネットを掛けることで、確実に自分のものとします。
そして、ゴールイン(収穫)。
すっかりプレイボーイも板についてきた私は最後の大仕事に取り掛かります。
その仕事とは収穫。
彼女の肌はまさに小麦色。
そして花嫁の憧れであるであるジューンブライドである6月。
この機を逃すわけにはいきません。
日本での収穫時期は梅雨と重なり、さらに刈り取りは穂ができるだけ乾燥した状態で行うことが好ましいので、タイミングの見極めが難しいです。
湿気にあたってしまうとこのようにカビが生えてしまいます。また雨を受けると穂の中で発芽してしまいます。かと言って、穂が十分に実る前に収穫はできないので「全体的に成熟したと思われる時期」×「乾燥が続いている時期」を梅雨の中で探すことになります。タイミングが早ければ収穫高は期待できず、遅すぎればカビと穂発芽で壊滅といったシビアな状況です。
しかし、すべての日々はこの時のためだったのです。お互いこの日が来るまで幾多の艱難辛苦を乗り越えてきたことでしょう。式の日程を慎重に取り決め、ついに決行。
ザクッ!ザクッ!っと根元を抑えつつ鎌で刈り取っていきます。
そして麦の水分量を調節するため一週間ほど室内で乾燥します。このハネムーンのあとに待ち受けていたのは、夢のような新婚生活、と思いきや。
地獄の共同生活。
無事に収穫というゴールインを果たし、乾燥というハネムーンを終えた私たちは二人で分かち合う夢の人生を形作るために準備を始めました。
それは麦を穂から外し、さらにもみ殻を実から外すというただ地味で辛い上に時間と労力が果てしなく掛かる作業なのでした。
いくら幸せな結婚生活を想像したところでそれは日常の限られたワンシーンであり、その他大部分は地味でなんてことない日常なのです。
新婚生活その1 麦を穂から外す。
もう果てしなく辛い。楽な方法を試行錯誤した結果、一本一本手で取るのが地道だけど最短だということに気が付きました。二人の良好な関係も一朝一夕では成り立ちません。なんの変哲もない毎日を大事にするのが一番の近道なんです。
新婚生活その2 もみ殻を実から外す。
穂から外すだけでも一苦労でしたが、これからさらに実から殻を外して分別しなければいけません。まず穂から外した実を袋の中ですり合わせ、殻と実を分離します。そして適度な風を送って、粗く実と殻を分別します。そして弾かれた殻を手作業で取り除くということを幾度となく繰り返します。
この頃でしょうか。安易な快楽(市販の小麦粉の購入)が頭をよぎるようになったのは。しかし、そんな誘惑にもめげず地味な日々を繰り返したのです。実は日常こそが一番厳しく尊いものなのかもしれません。そんな悟りに目覚め始めた頃ついに分別完了。
計2キロほどの小麦が収穫されました。
長い道のりでした。数多の試練をともに乗り越えてきた私たちからは、もう熟年夫婦といっても過言ではない程の貫録がにじみでています。
今までありがとう。これからもよろしく。
日々を過ごすのに精いっぱいで気づけば定年を迎え、あとは余生を過ごすのみとなった私たちですが、一度区切りをつけ第二の人生を歩もうと決めました。
それは小麦から小麦粉になり、ラーメンへの道を志すということでした。
そして、門出の日を迎えました。
彼女はコーヒーミルの中に意を決して飛び込んでいきます。あの真っ暗な一寸先も確かではない未知の世界へ。恐れを抱きながら、しかしそれと同時に残りの人生に目を背けず立ち向かう覚悟とともに。
ただこの作業もつらいつらい。体力的には一番つらい作業でした。しかし、これも彼女の挑戦を後押しするには必要なこと。そう思って無心でミルのハンドルを回しました。
ミルでふすまを粉砕して、ふるいにかけて中の胚乳を取り出していきます。この胚乳という部分が普段小麦粉と呼ばれている部分です。
参照 乾麺の館 http://himeji.jibasan.jp/kanmen/material/index.html
そして、ついに。
小麦粉ができました!!
種を植えてから約一年。
ここまで来るのは本当に長い道のりでした。形は変わってもこれからも彼女とともに歩んでいく所存です。なんといってもラーメンを作るという志は同じなのだから。
ありがとう。これからもよろしく。
追記
小麦に関してYoutube動画もあります。
2分半程度なのでカップ麺が出来上がるまでの間になんか見てもらえればと思います。
あとがき
というわけで小麦粉が完成しました。ちなみにラーメンの麺には「かんすい」と「塩」が必要です。さらに麺を切る「包丁」も必要です。それらも作っていきます。もちろんスープも大事なので、「ニワトリ」も卵から孵します。
小麦粉だけでこれだけ大変だったのに、どういうことになってしまうのか。0からラーメン作ろう!とか言った自分を殴りたいです。
一杯のラーメンが出来上がるまでを見届けてくれる酔狂な方はぜひフォローを!
そしてここまで読んでしまった粋なあなたはいいねを!
みなさんに小麦の幸があらんことを。
ここまで読んでいただきありがとうございました。