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卵から育てたニワトリがラーメンの具材になるまで③ 【0からラーメン】
(※ニワトリの解体など刺激の強いシーンがありますので予めご留意ください。)
突然ですが、ペットと食用動物の違いって何でしょう?
「前者は犬猫で、後者は牛豚だ」
「どんな動物も動物であることに変わりないのだから分け隔てなく接するべき」
「食用はうまいけどペットはマズそうだから食わない」
色んな答えがあると思います。
しかし、世間一般では分けられがちな先述の概念2つが曖昧になる場面があるとするなら……。
「0から」ラーメンを作ることで、その瞬間に立ち会うことになるのなら……。
あなたは、進んでその経験を望みますか?
この問いに「はい」とお答えになった方に、私達FR0M SCRATCHはこの記事を謹んでお送りいたします。
(FR0M SCRATCHとは何か?をこちらの記事で紹介していますので、ぜひ見てみてくださいね。)
この記事は、卵から孵したニワトリがラーメンの具材になるまでを書いた三部作のパート3になります。
ニワトリ達の成長過程を記したパート2は下のリンクから飛べますのでそちらを参考にされてください。
そしてついに、その日はやってきた
有精卵を手に入れて三か月弱。
5つあった卵の内、4つが孵化し、結果的に3羽のニワトリが生き残りました。
ここまで来るのにニワトリが盲腸便という臭い糞をするわ、1羽亡くなってしまうわ、エサを想定以上のペースで食べまくるわ、はっきり言って苦労の連続でした。
しかし、それと同時に愛くるしいヒヨコを間近でみたり、ニワトリそれぞれに明確な個性があるのを感じたりと、今まで「食用の肉」としての一面しか見えなかった彼らもまた確実に「生きている」ことなど、学びも沢山あったのです。
いつしか、ニワトリは私達にとって欠かせない、そんな存在になりつつありました。
「情が湧いちゃってるんじゃないの、いっそのことペットとして飼っちゃいなよ」
そんな言葉もちらほら。
それも一つの結末としては正解なのでしょう。
でも、0から鶏塩ラーメンを作ることが最終目標の私達FR0M SCRATCHに初めからその選択肢はありません。
兼ねてより決めていた日程通り、ついに彼らを締めることにしました。
大まかな流れ
今回のニワトリが食用になるまでに、大きく分けて4つの過程がありました。
それは①気絶させる、②血抜きをする、③羽をむしる、そして④包丁で切り分ける、です。
1.気絶させる
ニワトリ達から肉とガラを取るためには、当然ながら彼らを殺さなくてはなりません。
しかし、そうするにしても出来るだけ苦痛のない状態でいてほしい。
狩猟で捕れるイノシシなど、必ずしも一瞬で仕留めることが叶わない動物なども実際にはいますが、ニワトリは締め方によってはそれが可能です。
その一つの方法は、気絶をさせること。
まず、脚部を掴んで、逆さにします。
ニワトリを持つ時に、フワフワな羽と、42℃という高い体温から来るぬくもりが感じられて、躊躇するかもしれません。
ぐっと、こらえます。
吊り下げられる時の不快感で「きゃあきゃあ」と悲鳴のような鳴き声が。
これもこらえます。
正直な話、人懐っこい個体をこうしなければならないのは余計に心が……
こらえます。
しばらくすると、大分動きが落ち着いてくるので、そうしたら野球バット程の木製もしくは金属製の棒で頭部を叩きます。
頭頂部(トサカのある場所)あたりに棒の先端がクリーンヒットするのが理想で、気絶した場合、両目が閉じて首がだらりと伸びるので確認を。
失敗してしまった場合、まだ目を開けていたり、辺りを見回すなど明らかに意識が残っているのが分かると思うので、その時は可哀想ですがもう一度叩きます。
2.血抜きをする
気絶させたら、次は血抜きへ。
血抜きは、首の頸動脈二本をナイフで切断するか、首を斧で切断するかで行います。
頸動脈を切る場合、頭部を手で押さえながら、良く研いだナイフで頭と首の接合部の両端からそれぞれ嘴に向かって斜め下に切れ込みを入れます。
首の皮はかなり柔軟性があり、刃が鈍っていると中々切れてくれません。
精神衛生的にもきついのでこの辺の準備は抜かりなく。
動脈が切れると、真っ赤な血が勢いよく流れ出る上、反射でニワトリが暴れるので再度動かなくなるまで逆さにしたまま待ちます。
この時、血しぶきが飛ぶのでポンチョを着るなどして対応することに。
首を切断する場合は、一旦ニワトリを丸太など切り付けて構わない場所に移動させ、頸部を横にして斧を一気に振り下ろし、あとは頸動脈が切れたときと同様の対処をします。
血がほぼ出きった状態になると、先程までの反射的な動きも、ぬくもりもさっぱりなくなり生物としての「チキン」がいなくなったことが頭に入ってきました。
ここでスゥ―っと、深呼吸ですね。
3.羽をむしる
タイトル通り、羽むしりです。
カートゥーンなどでは、羽毛に覆われてた鳥が何らかの拍子で丸裸に……
なんて描写があったりしますが、現実の鳥の羽は皮膚にしっかりとついていて、そのままむしろうとすると莫大な労力と時間を要すること間違いなし。
そこで、70℃ほどのお湯を用意し……
ニワトリをその中に一分ほど入れます。
こうすることで、皮膚表面の毛穴が開き、羽がむしりやすくなるのです。
細かすぎて抜けない羽毛も幾らかあるのですが、バーナーなどで焼き払ってしまいましょう。
4.包丁で切り分ける
最後に、包丁で切り分けます。
羽をむしり終わると、見た目はほぼスーパーの丸鶏。
もう少しで、完成ですね。
長くなってしまうので詳しくは説明しませんが、まず首と肛門の辺りに切れ込みを入れて内臓を引っ張り出します。
そして、胸肉なら胸肉、もも肉ならもも肉、といった具合でそれぞれの部位毎に切り分け……
食材としての「鶏」完成
ついに、食材としての「鶏」が完成しました。
左が肉で、右がガラ。
合計で2羽分の量です。
「あれ、3羽いたんじゃないの?」
と、思われた方、鋭いですね。
残りの1羽に関しては、参加メンバーの個人日記である「FR0M SCRATCHのこっち側」でいつかご紹介できたらと思います。
……とにもかくにも、これで「0からラーメン」に最も必要だったと言っても過言ではない鶏肉とそのガラを入手することに成功しました。
青春18きっぷで約13時間かけて手に入れた有精卵を、自宅の個室を臭くしたり、エサを切らさないよう細心の注意を払ったり、なんだかんだ可愛がりながら、その後二か月以上かけて食用のニワトリになるまで育て上げたその道のり……。
そして彼らを実際に食材にするまでの過程……。
そこにはペットと食用動物の垣根を超えた、何物にも代えがたい関係が確かに存在したのでした。
有精卵の入手を含めると四部に渡る長編となりましたが、ここまでお付き合いくださり、本当にありがとうございました。
最後に、ニワトリさん達……心の底から、本当に、本当に、ありがとう。