法廷では日本語しか使えない
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7月に笑顔相続道の弁護士の先生方のアテンドで大阪地方裁判所に裁判傍聴に行きました。
同じ士業である土地家屋調査士が書類偽造を繰り返し実刑判決を受けた裁判。
160円のおにぎりを盗んで即日判決を受けた万引き常習犯の高齢者の裁判。
フィギュアの万引きと転売を繰り返し、法定に手錠と腰縄を着けられた23歳無職の若者の裁判。
どれも衝撃的で、今でも裁判途中の細かな部分も思い出せるくらいでした。
その中に中国人被告に対しての尋問をしているものがありました。
日本人弁護士が事前に準備したストーリーに沿って質問をしていきます。
被告の横に通訳の方が座られ、通訳を介しながらの尋問でしたが、なかなか会話が噛み合っていませんでした。
今回たまたま見ることができた法廷通訳人のなり手が不足しているという記事が出ていました。
・2023年9月13日 毎日新聞 記者の目
刑事訴訟法 第175条では「国語に通じない者に陳述をさせる場合には、通訳人に通訳をさせなければならない」と規定されており、これに対応して登録されている方の中から呼ばれるようです。
ちなみに民事訴訟法はどうなっているのだろう、と思い調べてみると、第154条第1項で「口頭弁論に関与する者が日本語に通じないとき、又は耳が聞こえない者若しくは口がきけない者であるときは、通訳人を立ち会わせる」となっていました。
刑事訴訟法は「国語」表記なのに、民事訴訟法が「日本語」表記なのは興味深いところです。
現在登録されている法廷通訳は約3千人。
通訳料と報酬が支給されるとのことですが、静岡大学の研究では経験者への調査で、難易度と金額が見合っていないという回答が多数返ってきているようです。
「誤訳が多い」と批判されるばかりで全く報われない、と登録を止める人も多いようで登録者数は年々減少しているとのことです。
今でも続けている人は、待遇にこだわらず使命感で仕事する人ばかりだと言います。
こうした現場でも、やりがいを押しつけて、実際の役割と責任感に見合った待遇がなされていないのか、と感じました。
私が見た裁判でも話が噛み合わないためなかなか進行することができないため、弁護士が時間を気にする様子が見られました。
ただ、被告が裁判官や検察官の質問を理解するのも、それに対して陳述するのも正確な訳があればこそです。
時間や手続や進行のために、一人の人間の罪を決定することが疎かにされることが無いように、と願わずにはいられませんでした。
幾ばくかの報酬が払われるとはいえ、基本的に能力を持つ人の善意とボランティア精神に頼る、こうした日本の仕組みは法廷通訳人に限ったことではありません。
裁判所という公の場から、能力に見合った待遇に改善をスタートするというのも、先ず隗より始めよ、として大事なことではないでしょうか。