引き取り手のない死者の財産
遺言・相続・葬儀・埋葬のお悩みに「三つのそうだん」でお応えします。
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私が委嘱された行政相談委員は総務省の管轄で、その中でも行政評価局というところの管轄になります。
その行政評価局の業務の中に「行政運営に関する調査」があり、昨年度末の令和5年3月28日に「遺留金等に関する実態調査」が出されました。
遺留金とは「引取者のない死亡人」が出た時に遺される現金、預貯金、有価証券などのことで、引取者がいないので市町村がいったん管理し、まずは葬祭の費用に充て、それでも余った分は市町村の保管、最終的には国の収入となります。
ところが預貯金を引き出そうとする時に市町村が相続人を確認しないまま引き出してよいのか悩んだり、金融機関が相続人や相続財産管理人ではない市町村の引き出しに応じなかった事があったと報告されています。
法律としては、相続人などを定めた民法の規定は通則法に当たり、遺留金の取扱を定めた行旅法や生活保護法が個別法にあたり、個別法の規定により葬祭費用に優先的に充てる事が出来るので、預貯金の引き出しが出来ます。
まぁそんな細かな法律論まで末端の市町村や金融機関が把握できているはずもないので、総務省から厚生労働省に周知や手続の明確化をしなさい、と今回勧告が出ました。
それよりも調査で明らかになり衝撃だったのが「引取者のない死亡人」が平成30年4月1日から令和3年10月末日の3年半ほどの間に105,773人もいたことです。
特に身分を証明するものを持たないまま亡くなる行旅人が2,852人と報告されている事から、その分を差し引いた約10万人は福祉施設、病院や市町村が葬儀埋葬している事になります。
行政書士として相続の仕事を始めて、福祉施設の方とお話をした時によく聞く心配ごとが、身寄りの無いおひとりさまの入所者の葬儀埋葬でした。
私は住職でもあるので、その点についても連携する事が出来ますし、入所者の方の意思能力さえしっかりしていれば、死後事務委任として生前のうちに葬儀埋葬についても承る事が出来るとお話しすると、施設の職員の皆さんがホッとした顔をされていました。
葬祭費用に充ててもなお残る金品については市町村がいったん管理しますが、相続人調査を市町村の負担で行い、それでも見つからなければ国庫に入る事になります。
報告書ではまだ自治体が預かっている額がなんと約21億5千万円。
しかも年々増えているというか、急増しています。
自治体にとっては調査費用を自己負担しても自分の収入にならない訳なので、現場の負担感が大きい問題となっており、おそらく今後もさらに増え続ける事になるでしょう。
絶対的な解決方法などはないですが、亡くなった方が法的に有効な遺言を遺してくれれば、少なくとも身元が分かる方の問題はかなり解決します。
遺言を書こうといくら啓発してもなかなか普及しませんし、お金がかかるとなると敬遠されるでしょう。
そこで、身寄りの無いおひとりさまで、一定の財産額以下の人は、国が金銭負担をして士業に公正証書遺言を作成するサービスを実施してはどうか、と思いました。
遺言作成のための一定額の公金支出の方が、遺留金が発生してからの事務負担・費用負担よりも遙かに軽いと思うのですがいかがでしょう?
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