王子(女子)と王子(男子)の恋の様子に、ときめきともどかしさを感じてやまない│やまもり三香『うるわしの宵の月』
「#推しの少女マンガ」というハッシュタグを見つけて、真っ先に浮かんだのがやまもり三香先生。
『sugar』『ひるなかの流星』『椿町ロンリープラネット』など、描く作品すべてがみずみずしいときめきにあふれていて、でもところどころに相手を思うがゆえの切なさもあって、控えめに言っても最高。全作品が必修科目で課題図書。
そんなやまもり三香先生の最新作『うるわしの宵の月』が全私の中でメガヒットしており、このハッシュタグをつけて投稿せざるを得ません。
1巻の書影のふたりがヒロインとヒーロー。見ていただいてわかるようにとにかく顔がいい。でもこの作品の魅力はそれだけではない……!ときめきともどかしさを感じる二人の物語を、この場をお借りして紹介させていただきます。
あらすじ
「王子」というあだ名で呼ばれるスマートで容姿端麗な女子高生の宵(よい)。自分の見た目からお姫様というよりヒーローや王子のほうがしっくりくると思いつつ、そのことに複雑な思いを抱いています。ある日、同じく「王子」と呼ばれる同じ高校の先輩・市村に出会い、「あんためちゃくちゃ美しいな」の一言。チャラそうなふるまいに第一印象は最悪なものの、自分の気持ちを肯定してくれたり、好意(らしきもの)を包み隠さず伝えてきたりする市村に振り回されているうちに、「おためしで付き合う」ことに。ふたりの「王子」が不器用ながらも一歩ずつ前に進んでいきます。
王子(女子)の初恋と王子(男子)の本気の恋
その見た目やふるまいから「王子」と呼ばれる主人公の宵ですが、周りからの認識に違和感を覚えつつ、なんとなくその状況を受け入れてしまっています。そんなときに目の前に現れたもうひとりの「王子」の市村。市村は宵に素直に「かわいい」と告げてきます。
上記は2巻の書影で、左が宵ちゃん。イケメンすぎますね……?
そんな宵ですが、「女の子扱い」や自分に向けられた好意、そして自覚する初めての恋らしきものに心が揺さぶられるも、自分の気持ちが分からずなかなか前に進めない。しかし、自分なりに一生懸命に市村との関係性について考え、遠回りをしても正直にあろうとする誠実な姿を見て、応援せずにはいられません。
そしてそのクールな見た目の印象と、初めての恋にいっぱいいっぱいになって顔をあからめるそのギャップが、とにもかくにもかわいい。なんでこんなにかわいいのかよ(CV:大泉逸郎)。
一方、市村はそのルックスと経済的に太めの親の存在(推測)もあり、むかしから彼女には困ってはこなかった様子。自分の外見やステータス目当てに寄ってくる女性が多かったようで、恋愛に対してもやや冷めた目線をもっています。
そんな市村がはじめて執着したのが、宵。
最初は余裕のある素振りで宵にアプローチしますが、だんだん宵のことを知っていくうちに、目が話せなくなっていきます。
それにしても、少女漫画における余裕がなくなったイケメンってとんでもなく良いですよね……。少女マンガの醍醐味といっても過言でないシーンが、この漫画ではたんと味わえるのです……。ありがたい……。
「目の保養」だけじゃない
ここまでお伝えした通り、当初は「美しい人と美しい人の恋、なんて素敵な目の保養」と思っていました。もちろんそれも魅力のひとつだと思いますが、他者から「王子」というカテゴリーを貼られ、なんとなく「自分はこうあるべきだ」みたいに思っていたふたりの男女が、お互いの恋心を自覚していくうちに「自分ってどんなだ?」「相手に対するこの気持ちはなんだ?」と考え自覚していくプロセスがめちゃくちゃいいです。
少女漫画的に「王子」という他者からの評価はとてもキレイで漫画的に見えますが、現実においても「王子」とはいかないまでも、第三者からの評価と本当の自分の違いに悩むことは誰だってある。
「姫」と「王子」ではなく、あえて「王子」と「王子」というふたりにすることで、相手と自分の関係性を見つめて「お互い王子と呼ばれているわけだが、本当の自分はどうありたい?この関係性はどうありたい?」という問いを、宵と市村の視点からそれぞれ考えているのが、この作品のもうひとつの魅力だと感じています。
まぁ色々語ってしまいましたが、言いたいことは「とにかく読んでくれ(ください)」です。ときめきともどかしさを感じつつ、王子(女子)と王子(男子)の背中を押してあげたくなること請け合いです。そんな私の「#推しの少女マンガ」でした。
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