『ザ・トレーディング』まえがき全文公開!【試し読み】
全世界で500万部超の大ベストセラー!個人投資家、機関投資家を問わず、世界中のトレーダー・投資家にバイブルとして読み親しまれてきた『ザ・トレーディング』(アレキサンダー・エルダー著)、本書冒頭の「日本の投資家の皆さんへ」と「まえがき」を全文公開させて頂きます。
本ページにて本書を知った皆さま、トレーダーにとって唯一無二ともいえる実践的トレードの教科書『ザ・トレーディング』を、この機会にぜひご一読ください。
日本の投資家の皆さんへ
日本の友人と読者の皆さん、私の最新の著作を選んでいただいたことに感謝いたします。本書は、私がこれまでに執筆した著作の中で、最も重要であると考えています。それは、数十年に及ぶ自分のトレーディング人生を通じて学んできた、重要な教訓の集大成というべきものです。
私の最初の著作である Trading for a Living(邦題『投資苑』)は 1993年に米国で出版され、世界的なベストセラーとなりました。この本が日本においても広く受け入れられた理由として、その翻訳者であるフクイ ツヨシ氏の優れた翻訳によるところが大きいといえます。彼は、プロの翻訳家ではなく、世界銀行という国際開発金融機関の債券ポートフォリオマネージャーとして金融市場でアクティブに資産運用をしています。
それから 21 年の歳月を経て、出版社から Trading for a Living(邦題『投資苑』)を改訂する依頼がありました。当初は3カ月もあれば充分と考えましたが、このプロジェクトは結果的に 18 カ月もの期間を要し、その間は改訂作業に集中することになりました。本文のおよそ 80%を書き直し、ほぼすべてのチャートをカラーにして作り直しました。
そして幸いなことに、元本の翻訳出版以来、私の良き友人となったツヨシが本書の邦訳を担当することを申し出てくれました。私は、彼の協力に感謝するとともに、本書を出版する FPO 社の友人たちにも感謝の意を表したいと思います。FPO は、信頼する翻訳家を選択する裁量を私に与えてくれて、私たちとともに本書の日本語版の出版に向けて、共同作業を行ってきました。
本書を読み進める際に、成功するトレーダーになるためにはマーケットの分析以上のことをしなければならないことを覚えておいてください。すなわち、自分自身も分析し、自己の規律を実践しなければなりません。マーケットは、私たちにとてつもない誘惑をもたらします。トレーディングは金塊を貯蔵する金庫の中を歩くことにたとえることができますが、あなたが歩む道は狭く、宝物と同時に数多くの危険に取り囲まれています。
あなたは、この道の歩き方を学ぶ必要があります。すなわち、マーケットについて自分で分析するということです。具体的には、相場のトレンドやその反転、天井や底を認識する必要があります。本書は、あなたに一連の分析ツールの使い方を伝授します。それらを、チャートのパターン、テクニカル指標、トレーディングシステムの順に説明します。
また本書は、あなたが自己の規律を確立するための手助けもします。それは、事前の準備(予習)、資金の管理、きちんと準備した計画に従って行動することです。マーケットに関する知識と自己の規律を組み合わせることによってのみ、あなたは勝者になることができるのです。
マーケットでは、お金を儲けて傲慢になり、不注意なトレーディングを始めて当初の利益を吹き飛ばすだけでなく、元々の資金すら失ってしまう人が数多くいます。自己の規律を維持するための最善のツールは、トレードの記録をきちんと整理することであると、自分の経験から学びました。
私は、これを日課にし、そうすることにより、金塊で一杯の金庫の中の正しい歩き方に自分を集中させることができます。本書では、どのような記録を整理するのかを明確に示します。すなわち、それらは、毎日事前に行う課題、トレードの計画、成績の評価方法です。
トレーディングは、あなたに自由をもたらすことができます。すなわち、誰の指図も受けず、世界中を好きに旅することができ、支払いの際にお金のことを心配する必要もありません。あなたがトレードを上手にできるようになることを手助けするために、本書ではマーケット分析、リスク管理、自己管理などの最重要スキルを、かいつまんで解説しています。
あなたの成功を祈るとともに、私のトレーディング人生の集大成といえる本書が、あなたがトレーダーとして成長し、個人として自由を獲得するための一助になることを願っています。
Dr.アレキサンダー・エルダー
まえがき
旧著Trading for a Living(邦題『投資苑』)は、1993 年に刊行して以来、このジャンルの国際的なベストセラーになりました。旧著は、いまだに数多くのトレーディングの推奨参考文献リストの上位を占めています。友人同士の口コミで推奨されたり、銀行や証券会社の新入社員の教育用に使われたりしています。
実を言えば、旧著の改訂版を出すことには、あまり乗り気ではありませんでした。著者として、旧著の内容の一貫性に自信があり、満足していたにほかならなかったからです。それ以来、トレードする傍ら、旅行をしたり、他の本を執筆したり、セミナーでトレーディングを教えたりしてきました。そして、出版から21 年の歳月が過ぎ、自分の著書の中で最も好評な旧著を全面的に書き直す決心をしました。その結果、旧著執筆時にはなかったテクノロジーの進化を反映し、その後に私自身が学んだことを新たに書き加えました。
本書を捧げた、今は亡き偉大なる我が友、ルー・テイラーは、かつて冗談で、私にこう言いました。「もし、自分が毎年0.5%だけ賢くなれるなら、自分の寿命が尽きるころには天才になっているだろうね」。私が最初に出版した旧著を書き直していると、その後に学んだことや経験したことを踏まえて、自分がまだ若かったあの頃にタイムマシンに乗って戻り、もう一度、本を執筆しているような不思議な気持ちになりました。
旧著の書き換えを計画するにあたり、私はオーストリアのウィーンにあるガソメーターと呼ばれる建築物群を思い浮かべました。その建造物の中には、20 世紀初頭のレンガ職人が作った何層にも分かれたガスの貯蔵タンクがあったのですが、都市ガスが天然ガスに切り替わると、その巨大なシリンダー状のガス貯蔵施設は用済みになってしまいました。
それを建築家たちが現代的な集合住宅に作り替えたのです。レンガの壁の一部を取り壊し、そこに大きな窓を取り付け、外部をパノラマのように広く見渡せるように作り替え、床やエレベーターを設置し、屋上にはガラス張りのペントハウスを増築しました。かつて私は、その一部屋に宿泊したことがありますが、そこで古い職人技と新しいテクノロジーがうまく融合したガソメーターのコンセプトをモデルに本書を執筆しようと考えました。
本書を読み始める前に、トレーダーとして成功するために最も重要なステップとは何かを自分に問いかけてください。答えは以下のとおりです。まず、人間の心理を学ぶことがトレーディングにとって重要な最初のステップです。私は旧著Trading for a Living(邦題『投資苑』)を執筆する傍ら、精神分析の臨床医として患者の治療に従事していました。旧著のトレーディングの心理面を扱った部分については、歳月が過ぎても、その重要性にいささかの変化もなく、今回の書き換えに際しては、ごくわずかの変更箇所にとどめています。
次に、テクニカル分析が非常に重要なステップです。しかし、テクニカル分析でチャートを見るときに必要なデータは、始値、高値、安値、終値、出来高のわずか5つのみです。これらのデータに基づいて作られるテクニカル指標や古典的チャート分析のパターンを数多く取り上げることは、かえって混乱を招くだけです。むしろ、厳選した少数のテクニカル指標やパターン分析を用いるほうが、トレーディングでは好ましい結果をもたらします。
旧著を読んだ読者は、本書ではテクニカル分析の説明箇所を縮小、または、インターネットでダウンロード可能な参考文献に差し替えていることに気づくでしょう。その一方で、インパルスシステムを筆頭とする新しいツールを詳述する節をいくつか追加しています。
リスク管理はトレーディングにおけるステップとして、この上なく重要です。金融市場こそが、あなたに損害をもたらす危険の温床だからです。旧著ではリスク管理について述べた部分が、ほかのステップと比べて説明不足だったという反省に基づき、今回は全面的に書き直しました。本書で学ぶことになる多くのツールの1つとして、「リスク管理の鉄の三角形」が登場します。
トレードにおける人間の心理、トレード戦略、リスク管理が、トレーディングで成功するための3本柱です。しかし、これら3本の柱を1つに束ねる4つ目の要素があります。それは、トレードの記録をきちんとつけることです。トレードの記録を整理して保存することにより、3本の柱が総合的に結びつくのです。
トレードの記録をきちんとつける習慣を身につけることにより、あなたは自分の経験から多くを学ぶことができます。儲けは小さいのに損は大きく、コマネズミのようにせせこましくトレードし、冷や汗をかき、ストレスに苛まれるだけで、一向に成長しないという悪循環を断ち切るために、トレードの記録をつけることが大いに役立つでしょう。記録をきちんとつけることが、あなた自身を自分の良き師とし、トレーディングの上達につながります。本書では、トレードの記録の付け方を説明し、私自身のトレード日誌の事例も披露しています。
あなたが旧著を読んだことがなく、本書で初めてトレーディングを学ぶのであれば、トレーダーとしての新しい旅路についたことを心から歓迎します。あなたが、すでに旧著を読んだことがあれば、本書の内容が21 年の歳月を経た分、旧著よりいっそう示唆に富む内容になっていることを分かっていただけたら幸いです。
Dr.アレキサンダー・エルダー
ニューヨークおよびバーモントにて
『ザ・トレーディング』イントロダクション全文公開!【試し読み】
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