インフレなのに金利を下げる国がある!?
問題です。赤地に白抜きで三日月と星が描かれた国旗で、アジアとヨーロッパにまたがる中東の国といえば?
答えは、世界文化遺産イスタンブールがあり、日本人観光客からも人気が高い「トルコ」。一度は訪れてみたい観光スポットですが、今、この国の経済に異変が起きている!?
昨今、多くの国でインフレ懸念が高まっていますね。トルコも例外ではなく物価上昇が続いています。しかし、そのスピードが異常なために街からは悲鳴が聞こえるといいます。
「給料が足りなくて、買い物できない・・・」通常の半値以下でパンを販売する公営スタンドには、1本が約150円のバゲットを求めて毎日行列ができる。
トルコ統計局から発表された内容によると、昨年12月の物価上昇率は驚きの36%!日本で消費税が8%から10%になったとき、たった2%でもなかなかの騒ぎになったことを思えば、この上昇率は尋常じゃないといえます。
なぜ、そんなことになっているのか?急激なインフレを招いている原因のひとつが、トルコの通貨であるリラの値下がりです。2021年のはじめ1ドル=7リラほどだったリラは、その価値が1年で半分以下に暴落しています。
ちなみに、今のドル/円は114円ほどですね。それがたった1年で230円になるわけですから、どれほど衝撃的なことか想像できます。
小麦粉や乳製品、食用油、トイレットペーパー、電気やガスといった必需サービスにいたるまで、ほぼ全てにおいて価格上昇が引き起こされており、給料や年金だけでは生活できない状態になっているとのこと。
そもそも、どうしてリラは暴落したのか?それはトルコの中央銀行による「利下げ」が、最たる要因だと考えられています。
通常、インフレを抑制するためには、お金の流通量を絞る目的で利上げするのが定石。実際、物価高を懸念する米国では金利の引き上げが、早ければ3月にも行われる見通しとされているし、イギリスやニュージーランドでは、昨年からすでに利上げを実施してきています。
ところが、その流れに逆らうかのように、トルコの中央銀行は昨年12月までに4ヶ月連続で利下げを行ってきているのです。
トルコ政府はこのように考えているらしい。金利を下げれば、お金が借りやすくなり、製造業が活況になることで雇用も増える。またリラが値下がりすることで輸出業が儲かり、投資の呼び水となるだけでなく、海外の観光客も呼び込みやすくなる。
このように聞くと、妙策のように感じますね。実際、通貨安を追い風に輸出は好調で、21年の輸出額は前年比33%増と過去最高を更新。また隣国のブルガリアやイランなどから、爆買い観光客が続々とバスで訪れているようです。
ですが、一方では観光客が生活必需品までも大量に買い占めてしまうことで品薄になり、さらなる価格高騰の要因になっているというのです。トルコ国民にしてみたら、たまったもんじゃない!!
結局、安い金利でお金を借りられた企業も光熱費を含めたランニングコストが高騰して経営難となり、労働組合からは賃上げを抗議するデモが相次ぐなどリラ安の恩恵を受けるどころではないという。
さすがにトルコ政府や中央銀行も事態の深刻さから、国民のインフレに対する不満解消のためにこれ以上のリラ安を阻止しようと動きました。
しかし、その方法というのが利上げではなく!?8年ぶりの為替介入だったというのです。それも12月の1ヶ月だけで5回も実施!さらにリラ建て預金の為替差損を政府が補填する預金保護策を発表するなど何とかリラ安に歯止めをかけようとしています。
しかし、それも応急処置にすぎないと見ているマーケット関係者は少なくありません。こんなドタバタ財政に不安に感じて、かえってリラを売る人が続出するのではと懐疑的です。
もし、中央銀行が補填のためにお札をどんどん刷って、世の中に出回るお金の量を増やそうものなら、インフレがさらに悪化してしまいかねません。
実は、今回のように急激ではないにしろ、トルコは長年慢性的なインフレに悩まされてきました。なので、多くの国民は常から物価高に備えて、資産が目減りしないよう生活費以外のリラは、「金」や「ドル」に換金して寝室に隠していたりするのだそう。いわゆる虎の子ですね。日本なら「タンス預金」みたいなものでしょうか。
しかし、いよいよ切羽詰まってきたのか、エルドアン大統領は国民に呼びかけているようです。「国民の皆さん、枕の下の金を出して!」要は、手元の財産である金やドルでリラを買って、自国通貨安が進まないよう協力してほしいってことです。
政治不信が積もりに積もったトルコ国民が、大統領の声に素直に耳を貸すとは思えませんが・・・、もし、現在の危機を見事に乗り切ろうものなら、「インフレ抑制=金利の引き上げ」という経済のセオリーが覆されることになるため、投資家としては、引き続き注目していきたいところです。
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