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【勉強会レポート】法務局・相続手続きが変わった!を学ぶ(前編) マイホームや実家をどうする?

空き家になった実家やマイホームを、そのまま置いておくと罰金を取られることを、みなさんはご存知ですか?
令和6年4月1日に相続登記のルールが変わっています。
頻繁に起きる法改正や制度改正に対応するために、FPは常に専門家から最新情報を勉強しなければなりません。
今回は、2024年3月26日にSG大阪ウッドクラブで開催された「法務局・相続手続きが変わった!を学ぶ 相続登記の義務化によって変わること」の勉強会レポートです。


900万戸!全国で増え続ける空き家

最近、住む人がいない「お化け屋敷」みたいな家を見かけることが増えましたね。

空き家は年々増え続けていて、令和5年には約900万戸。日本の住宅の13.9%が住む人がいない空き家になってしまっています。

参照資料:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査住宅数概数集計(速報集計)結果」(https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/pdf/g_kekka.pdf

空き家が増える原因

空き家が増える原因は大きく分けて7つのケースがあります

1.所有者が地方都市や農村部から都心部へ引越しして、それまで住んでいた家を放置する
2.所有者が長期入院したため家をそのままにしておく
3.所有者が認知症になって介護施設に入所し、家が放置される
4.身寄りのない高齢者が亡くなった後、家屋が空き家として放置される
5.遺族が思い出の詰まった家を売るのに抵抗を感じる
6.遺産相続で相続人が決まらずに空き家が放置される
7.相続人が維持管理や税金が負担になり空き家を放置する

「所有者本人の問題」「相続人の問題」の2種類があることがわかります。

参照元:政府広報オンライン「なくそう、所有者不明土地! 所有者不明土地の解消に向けて、 不動産に関するルールが大きく変わります!」

https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202203/2.html#firstSection

相続登記が義務でないことが空き家問題を助長した……不動産鑑定士FP・岡本芳夫氏の目線

今回の勉強会の講師は「SG大阪ウッドクラブ」を主宰する独立系FP・有限会社岡本事務所の岡本芳夫氏。
FP歴34年。不動産鑑定士・宅建士などの資格を活かして、大阪北部を中心に住宅ローン・土地の登記・相続など、不動産に関わる業務全般をこなす実務家。
兵庫県金融広報委員会やミサワホームなど、講師実績も多いベテランFPです。

本来ならありえない「所有者不明土地」

法律上「家の所有」とは「登記」なので、登記上の不備があると「持ち主がわからない・所有者と連絡がとれない事態」が起こります。

「所有者不明土地」が発生するしくみ

1.相続税の発生を嫌った相続人が土地を相続登記せずに放置
→現在の所有者が誰かわからず連絡できない

2.新しく家を買って転居した人が、前の住所のまま転居を繰り返して住民票の一番最初の部分が消失
→所有者の連絡先がわからない

「登記手続きが面倒」「税金を払いたくない」などの理由で所有者不明土地は全国で増え続け、現在では九州と同じ面積になりました。

行政側からみた未登記の土地や空き家の問題点

「所有者不明土地問題」は「ゴミ屋敷」のイメージが強いのですが、行政にとってもデメリットが多いものです。

1.自治体が固定資産税を徴収できない
2.国が相続税を徴収できない
3.道路建設や公共施設建設などの公共事業ができない
4.河川の整備や避難用空き地の設置などの災害対策工事が進められない

更に問題なのが、境界線が曖昧で不動産の売買をはじめとする「土地の有効活用」ができないこと。

相続登記しても「損」な時代が続いていた


「今まで相続登記に関して罰則がありませんでした。だから、山林や田舎の実家など、相続した土地に価値がなく、融資も売却も難しい。相続税控除で税金を払わなくていいケースでは、相続登記せず放置されることも多かったんです。固定資産税などの税金の支払いや空き家の取り壊し代、司法書士に支払う手数料など、お金がかかるし手続きが面倒ですからね。しかし、令和6年4月1日からは、相続登記しないと罰金がかかる。行政は強制執行がやりやすくなりました。これは民法上、大きな変化なので、FPとしては知っていないとダメです」

申請期限を過ぎれば罰金が最大「10万円」に!

2024年4月1日から施行された「民法等一部改正法・相続土地国庫帰属法」は不動産登記や相続登記を義務化したもの。

1.相続発生から3年以内に相続登記をしなかった場合は10万円以下の罰金
2.法改正以前から放置している相続登記も罰金の対象に
3.法務局が最新の土地所有者状況を把握
4.相続した土地を国に返すことが可能になった

なお、2026年4月1日には「所有者移転登記」が厳罰化。所有者の氏名・住所・名称等変更後、2年以内に不動産登記をしなかった場合は5万円以下の罰金になります。

このルール改正の怖いところは、過去の相続も不動産移転登記も罰金の対象になること。
行政側が住民基本台帳ネットワークを使って、土地の所有者の正確な捕捉をはじめているので、相続した不動産を放置しておくと大変なことになります。

参照資料:法務局公式サイト「民法等一部改正法・相続土地国庫帰属法の概要」
https://www.moj.go.jp/content/001401144.pdf

登記より相続の方が面倒……25年放置の空き家トラブルに直面したライフのFPこみなみの目線

高齢化が進めば、ますます増える空き家トラブル。
私も「空き家と相続」のトラブルにあったことがあります。
実家に住んでいた親が亡くなって、相続人が「相続でもめたくない」と25年間空き家を放置していた結果、相続人が次々と亡くなるケース。

この話については、また改めて書くことにしますが、正直、登記手続きよりも相続手続きの方が面倒だと感じました。

勉強会の後半のテーマは「相続手続きの簡素化」。
「後編」で引き続きレポートします。
お楽しみに。


ここでは、FPこみなみ(AFP認定者)が、独自の目線で、お金に関する話題について解説しています。あくまで個人的見解で、日本FP協会の見解ではないことをご容赦ください。(写真:Yuka Shimamura)

日本FP協会公式サイト https://www.jafp.or.jp/

【執筆者】
小南由花(FPこみなみ)
AFP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)・終活アドバイザー・独立行政法人日本学生支援機構認定スカラシップ・アドバイザー(2017年認定)

夫の勤務先の倒産で破綻寸前になった家計を、ファイナンシャルプランニングで切り抜けたことをきっかけに、50歳からファイナンシャル・プランニングの勉強をはじめる。2017年(52歳)でAFP(提案書作成研修を修了した2級FP技能士)資格を取得。
朝日新聞出版「デジタル版知恵蔵」や「FP Woman」などで執筆。講師として活動中。
日本年金機構「わたしと年金」エッセイにて令和5年度厚生労働大臣賞を受賞。
日本FP協会大阪支部運営委員としてFP相談のキャリアを積んでいる。

終活アドバイザー協会会報「ら・し・さ通信」2023年秋号に寄稿したエッセイ「2冊のエンディングノート」
https://shukatsu-ad.com/wp-content/uploads/2023/09/tsushin-42-hp-2023-autumnpdf.pdf
「わたしと年金」エッセイ厚生労働大臣賞受賞作品https://www.nenkin.go.jp/info/torikumi/nenkin-essay/20231130.files/01.pdf

X:https://x.com/fpk2017
note:https://note.com/fpk_2017


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