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【勉強会レポート】法務局・相続手続きが変わった!を学ぶ(後編) マイホームや実家の相続でありがちなトラブルとその解決法

マイホームや実家がある人が知っておかないと大損改正された相続登記のルール。この記事は、2024年3月26日に開かれたFP向けの勉強会「法務局・相続手続きが変わった!を学ぶ 相続登記の義務化によって変わること」。FPが知っておくべき相続の知識を学ぶ勉強会レポートの後編です。


相続登記しないと罰金10万円!でも例外がある?

2024年4月1日に不動産相続登記のルールが変わりました。
自分が不動産を相続することをを知った日から3年以内に相続登記の手続きをしないと10万円以下の罰金。
恐ろしいことに、2024年4月以前の相続分も義務化の対象となってしまいました。

ところが、この厳しい法律には例外があります。
「相続人申告登記」のケース。
あまりなじみのない制度なので、相続登記の基本から説明していきましょう。

まずは相続登記の手続きの流れをおさらい

マイホームや実家の相続は一生に何度もありません。
最初に相続登記手続きの流れを確認してみましょう。

1. 戸籍の証明書の取得(法定相続人の特定)
2.遺産分割協議・協議書の作成(土地・建物の所有者の確定)
3.登記申請書の作成
4.法務局へ登記申請書を提出
5.法務局から登記完了証・登記識別情報通知書を交付される

参照元:令和6年4月版登記申請手続のご案内(相続登記①/遺産分割協議編)
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001388912.pdf

はっきり言って手続きがめんどくさいです。
特に1 の「戸籍の取得」と2の「遺産分割協議」。

今回の相続ルール改正で罰金を免除されているのが「やむを得ない事情で遺産分割協議が3年以内にまとまらず「相続人申告登記」を行ったケース」。
申出をした相続人の氏名・住所等をつけた「相続人申告登記」をすると、一時的に「登記が行われた」とみなされるわけですが、遺産分割協議がまとまれば、遺産分割成立日から3年以内に、あらためて相続登記をすることになります。

罰金の対象外となる「やむを得ない事情」とは?

遺産分割協議がまとまらない「やむを得ない事情」には、さまざまなケースがあります。

1.両親が相次いで亡くなるなど短期間で相続が重なる
2.法定相続人が死亡した後、代襲相続で子どもや孫が相続人となってしまい、相続人の把握と戸籍謄本などの取得に時間がかかった
3.法定相続人が認知症になっていて成年後見人を立てるのに時間がかかった
4.法定相続人が重病をわずらっていて手続きが困難
5.遺言の有効性や範囲で争っている最中     など

遺産分割協議は相続人全員の承諾が必要になるので、ある程度時間がかかるのは仕方のないことなのかもしれません。

問題の根底にあるのは戸籍の収集手続きの煩雑さ……不動産鑑定士FP・岡本芳夫氏の目線

今回の勉強会の講師は不動産鑑定士FP・岡本芳夫氏です。

「不動産相続手続きで一番大変なのは、遺産分割協議にもっていくまでの、戸籍謄本を集めることです。被相続人の戸籍と相続人全員の戸籍が必要になるんですが、全員の戸籍の取得はものすごく手間と時間がかかります。2024年3月1日の戸籍法改正で「戸籍謄本等の広域交付制度」ができて、戸籍謄本の一部がオンラインで申請できるようになったんですが、デジタル化していない古い戸籍は本籍地の市町村に直接出向いて申請する。もしくは郵送で手続きする。今も大変な手続きなんです」

不動産相続の最大のネック……戸籍証明書類が取りにくい!

相続に必要な戸籍証明書は、基本的には2種類。

・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍謄本)
・相続人全員の現在の戸籍謄本

しかし、次のようなケースは必要になる戸籍謄本の数が増えます。

相続人が亡くなっている場合(代襲相続)

親の死亡時にすでに子が亡くなっている場合、孫が相続人となります。
被相続人と相続人全員の戸籍の他に、代襲相続人を確定するために必要なのが「被代襲者(子)の出生から死亡までの戸籍謄本」と「代襲相続人全員の現在の戸籍謄本」。

亡くなった人に子どもがなくて兄弟姉妹が相続人になる場合

被相続人と相続人全員の戸籍の他に、直系尊属の死亡と異母・異父兄弟姉妹がいないか確認するための「亡くなった人の両親それぞれの出生から死亡までの戸籍謄本」が必要。
直系尊属の死亡と異父母の兄弟姉妹の存在を確認できるのがメリット。

子どもが多い人や、結婚離婚を繰り返して本籍地の変更が多い人も戸籍謄本の数が多くなる傾向があります。

戸籍証明書類は有料で交付されるので、戸籍証明書類の数が多いほど、相続の手続きにかかる費用も多額になります。

参照元:八十二銀行公式サイト「相続手続きに必要な戸籍謄本の取り方を徹底解説」
(https://www.82bank.co.jp/column-souzoku/koseki.html)

クローズアップされる「法定相続情報証明制度」

相続登記の義務化で、これまで以上に煩雑になりそうな相続手続き。
それをスムーズにするのが2017年5月29日に制定された「法定相続情報証明制度」です。

法務局や登記所に戸籍情報証明書類を提出すると、無料で相続関係が一目でわかる公的証明書「法定相続情報一覧図」を登録してくれる制度。

・故人の名義の不動産登記や有価証券、自動車などの名義変更
・預金の払い戻し
・相続税の申告
・遺族年金、未支給年金等の年金手続き
・保険金請求(対応していない保険会社もある)

これまでは手続きごとに戸籍証明書類(有料)を取らなければいけなかったのですが、無料の「法定相続情報一覧図」だけでできるので、相続の諸手続きが安く早くなります。

必要な書類は

・被相続人(亡くなった人)の戸除籍謄本
・被相続人の住民票の除票
・相続人の戸籍謄抄本
・申出人(相続人代表者)の氏名・住所を確認できる公的書類
・法定相続情報一覧図(法務局サイトからひな型をダウンロードして作成)

このとき、各相続人の住民票の写しを同時に提出すると「法定相続情報一覧図」に相続人の住所を記載することもできるので、次の相続が起きたときにも登記手続きがスムーズになります。

参照元:法務局公式サイト「法定相続情報証明制度」
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001394035.pdf

うちは家族仲がいいから大丈夫?じゃないかも……マイホーム相続問題に直面するライフのFPこみなみの目線

私の家は夫婦二人なので、どちらかが死ぬと、夫か妻と兄弟姉妹の組み合わせで遺産分割協議と不動産相続登記をしなければいけません。

「うちの家族は仲がいいから相続問題なんて起きるわけがない」

そうとも限りません。
これまで私は、兄弟仲のよかった人たちが、遺産を巡ってドロドロの争いをするのをたくさん見てきました。
だからこそ、今のうちに相続トラブルを避けるための手段を考えておきたいと思っています。


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ここでは、FPこみなみ(AFP認定者)が、独自の目線で、お金に関する話題について解説しています。あくまで個人的見解で、日本FP協会の見解ではないことをご容赦ください。(写真:Yuka Shimamura)

日本FP協会公式サイト https://www.jafp.or.jp/

【執筆者】
小南由花(FPこみなみ)
AFP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)・終活アドバイザー・独立行政法人日本学生支援機構認定スカラシップ・アドバイザー(2017年認定)夫の勤務先の倒産で破綻寸前になった家計を、ファイナンシャル・プランニングで切り抜けたことをきっかけに、50歳からファイナンシャル・プランニングの勉強をはじめる。2017年(52歳)でAFP(提案書作成研修を修了した2級FP技能士)資格を取得。
朝日新聞出版「デジタル版知恵蔵」や「FP Woman」などで執筆。講師として活動中。
日本年金機構「わたしと年金」エッセイにて令和5年度厚生労働大臣賞を受賞。
日本FP協会大阪支部運営委員としてFP相談のキャリアを積んでいる。

終活アドバイザー協会会報「ら・し・さ通信」2023年秋号に寄稿したエッセイ「2冊のエンディングノート」
https://shukatsu-ad.com/wp-content/uploads/2023/09/tsushin-42-hp-2023-autumnpdf.pdf
「わたしと年金」エッセイ厚生労働大臣賞受賞作品https://www.nenkin.go.jp/info/torikumi/nenkin-essay/20231130.files/01.pdf

X:https://x.com/fpk2017
note:https://note.com/fpk_2017

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