見出し画像

【FPと考える】年金財政の健康診断(前編)年金を増やすためには?



年金財政は本当に破綻しないのか?

昨年、私は日本年金機構が主催するコンテスト「わたしと年金」エッセイで令和5年度厚生労働大臣賞を受賞したのですが、作品を書く時に、年金が本当にもらえるのか気になって、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)について調べてみました。

年金積立金を運用している政府機関「GPIF」

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)とは、将来の年金を確保するために、年金積立金を運用している政府機関。
国民から集められた年金保険料は「年金給付金」として、高齢者や障害者などの受給者に給付されています。
「年金給付金」を支払った残りの資金を「年金積立金」として「将来年金を受け取る人」のために運用しているのがGPIF。
この先100年、年金支給を続けられることを目標に、優秀な資産運用のプロフェッショナルが年金積立金を運用しています。

参考資料:年金積立金管理運用独立行政法人発行パンフレット「GPIFって、なに?」
https://www.gpif.go.jp/about/pamphlet.pdf

2023年度に過去最高の運用益を出したGPIF。でも……

2023年度のGPIFが年金積立金を運用して得た収益額は45兆4,153億円。運用資産額は245兆9,815億円。
「儲かっている」という感じがしますが「年金積立金」は「将来年金を受けて取る人」のためのお金です。
残念ながらGPIFの運用が成功して年金積立金が増えても、今、年金を支給されている人の給付額が増えるわけではありません。

参考資料:年金積立金管理運用独立行政法人公式サイト「2023年度の運用状況」
https://www.gpif.go.jp/operation/the-latest-results.html

年金世代がもらえるお金は現役世代の収入の6割!

年金収入だけで生活しようとすると、お金が足りません。
2024年度現在、現役男子の平均手取り収入額が月に37.0万円。
夫婦2人の平均年金収入が月22.6万円です。
「所得代替率」は61.2%。

所得代替率って何?

「所得代替率」とは年金を受け取り始める時点の年金額が、現役世代のボーナス込みの手取り収入額と比較して、どのくらいの割合になるかを表す指標。

計算式は
65歳の平均的な二人暮らしの夫婦の年金受給額(夫婦2人の基礎年金 + 夫の厚生年金) ÷ 現役男子の平均手取り収入(ボーナス込み)の平均額

2024年度は
22.6万円(13.4万円(夫婦の基礎年金)+9.2万円(夫の厚生年金)÷37.0万円(現役男子の平均手取り収入)=61.2% 

厳しい数字ですね。
しかし、ここで気になるのは「年金給付額は今後どのくらい減るのか?」です。

厚生労働省の試算「最悪のケース」と「最良のケース」

厚生労働省の試算で最も悪い結果は「現役世代の年金が半額に」。
厚生労働省は3つのパターンで所得代替率を試算しています。

1.実質賃金上昇率1.5%を想定した「成長型経済移行・継続ケース」で所得代替率57.6%
2.賃金上昇率よりも運用利回りが低くなる場合を想定した「高成長実現ケース」で所得代替率56.9%
3.過去30年の経済データを基に計算した「過去30年投影ケース」で50.7%

あなたは現役世代の半額の収入で暮らせますか?

参考資料:厚生労働省公式サイト「令和6(2024)年財政検証結果の概要」https://www.mhlw.go.jp/content/001270476.pdf

「後編」では、年金のルール改正で所得代替率を上げようとする、厚生労働省の施策をFP目線で比較・評価していきます。
お楽しみに。

【執筆者】
小南由花(FPこみなみ)
AFP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)・終活アドバイザー・独立行政法人日本学生支援機構認定スカラシップ・アドバイザー(2017年認定)

夫の勤務先の倒産で破綻寸前になった家計を、ファイナンシャルプランニングで切り抜けたことをきっかけに、50歳からファイナンシャル・プランニングの勉強をはじめる。2017年(52歳)でAFP(提案書作成研修を修了した2級FP技能士)資格を取得。
朝日新聞出版「デジタル版知恵蔵」や「FP Woman」などで執筆。講師として活動中。
日本年金機構「わたしと年金」エッセイにて令和5年度厚生労働大臣賞を受賞。
日本FP協会大阪支部運営委員としてFP相談のキャリアを積んでいる。

終活アドバイザー協会会報「ら・し・さ通信」2023年秋号に寄稿したエッセイ「2冊のエンディングノート」
https://shukatsu-ad.com/wp-content/uploads/2023/09/tsushin-42-hp-2023-autumnpdf.pdf
「わたしと年金」エッセイ厚生労働大臣賞受賞作品https://www.nenkin.go.jp/info/torikumi/nenkin-essay/20231130.files/01.pdf

X:https://x.com/fpk2017
note:https://note.com/fpk_2017

いいなと思ったら応援しよう!