日経新聞のキホンの読み方
各新聞の特徴/日経新聞は世界一の経済メディア
各新聞社が発行する新聞には、それぞれの特徴や得意分野があります。これから私たちが読もうとしている「日経新聞」の得意分野はもちろん経済です。日本では、多くの新聞が発行されていますが、なかでも「全国紙」とか「5大紙」と呼ばれる新聞では、テレビ局や雑誌など系列のメディアをもっており、グループも巨大です。
日経新聞社は、2015年7月にはイギリスのFT(フィナンシャル・タイムズ)社を買収し、紙媒体を出している経済メディアでは世界一の規模となりました。
世界の経済メディアは、アメリカの経済新聞「ウォールストリート・ジャーナル」を発行するダウ・ジョーンズ社のグループと日経新聞(日本経済新聞社)のグループが、2大巨頭となっています。
日経はビジネスマンの合言葉 役員クラスとも話が合うコミュ力が身につく
日経新聞はビジネスマンのコミュニケーションツールとしての役割が大きいと言われます。その理由は2つ考えられます。
❶ビジネスマンの多くが読んでいる
❷経済を扱っているのでどの世代も関心が高い
まず❶ですが、これは簡単ですね。大きな企業に勤めている人から、自分でビジネスを営んでいる人。都会で仕事をしている人から地方で働いている人。
ほとんどのビジネスマンが日経を読んでいます。「一流のホステスさんは日経を読んでいる」という話を耳にしたことがありますが、ビジネスマンの関心=日経に掲載されていること、と考えれば話のネタにするには一番のメディアといえます。
また、意外と見過ごせないのが❷の効用です。
たとえ、みんなが同じ新聞を読んでいたとしても興味のある分野が違えばコミュニケーションツールとしては使いづらくなります。同じ新聞を読んでいても、読んでいる場所が違えば意味がありません。ところが日経は、経済分野に特化しているので、そのようなことはありません。老若男女みな同じところを読んでいます。
これから学校を出て社会に出る人たちは、生まれたときから携帯電話がある1990年代も半ば以降の生まれなワケです。おじさん世代とは生まれ育った環境がまるで違います。これでは、同じことに関心をもつということは難しいでしょう。
しかし、ビジネスマンならば、日経新聞という共通言語があるのです。経済ネタを共通ワードにして、ジェネレーションギャップが埋められます。とくにビジネスマンの場合には、「総合」「経済・政策」「ビジネス」「テック」の各面が役に立ちます。
※2021年5月10日から、紙面(名称含む)の刷新がありました。「経済」は「経済・政策」に、「企業」は「ビジネス」「テック」「企業・人事」に細分化されました。
投資家として読む日経新聞 何よりも企業情報に強い!
投資にはさまざまなものがありますが、もっともポピュラーな株式投資の基本となるのは、その企業を知ることです。
では何を知るのか?それは、
●企業の能力(技術力や販売力)→「ビジネス」「テック」「企業・人事」
●企業の成果(売上げや利益)→「投資情報」
この2つに尽きます。どれだけ技術力があっても財務力がなければその会社には投資対象としての魅力がありません。また、今は業績が良かったとしてもそれが今後も継続するのかの見通しが立たなければ、投資対象から外されます。
★2021年5月10日から、「企業」は分化され、「ビジネス」が新商品・新体制・新業態など、「テック」が新技術・新ルールなど、「企業・人事」が新人事となり、企業情報も目的に応じた読み方ができるようになりました。
投資家は 人より一歩先を行く読み方を
日経新聞に好材料の記事が載ったときには、買い手としてはすでに遅し。ほぼすべての投資家がそのニュースを知っているからです。結果的に「高値掴み」となるケースが多くなります。
「え?じゃあ日経を読んでも儲からないの?」
いえ、そうではありません。
株で勝つために日経新聞を読む場合、「買い」に結びつく情報をいち早くキャッチすることが必要です。「ビジネス」「テック」「企業・人事」は知恵の山、「投資情報」は成績発表が細かく掲載されているので、この2つを照らし合わせて情報感度を鍛えましょう。
→ 詳細は改めて。
ライバルとなる市場平均をチェック
さらに、それらの企業を取り巻くマーケット(株式市場や商品市場など)全体がどう動いているのかの確認も必要です。
一見、マーケット全体と企業との相関がないように思えても、自分なりの解釈・推測をしましょう。この練習をすることで、投資活動に役に立ちます。
また、私がおすすめするのは配当を重視した株式投資です。これは、面白みのないつまらない方法と考えられがちですが、そんなことはありません。そもそも「投資」にスリルを求めてしまってはギャンブルと同じことです。
配当を重視した株式投資のことを「インカムゲイン狙いの投資」と言いますが、このときにライバルとなるのが「市場平均」です。市場平均よりも良い成績を上げられない投資ならば、どこかやり方に問題があるはず。そのチェックのためにも「マーケット情報」をしっかり確認する必要があります。
→ 詳細は改めて。
新聞の「版」と「号」 刻一刻と紙面の内容がかわる
日経新聞の1面、左上にはさまざまな数字が並んでいます。「面」、「版」、「号」と書いていますがこのうち「面」はページ番号だとわかりますね。まず、「版」について簡単に触れます。
「版」は情報の鮮度 刻々と情報は変わる
「版」は新聞の原稿締切時刻を示しています。新聞には「版建て」というシステムがあり、締め切り時間ギリギリまで最新の情報を掲載する努力をしているからです。通常朝刊の最終である14版は、午前1時半を原稿の締切時刻としています。これは、過当競争を防ぐ ため新聞各社で協定を結んでいるんですね。
朝刊だけでなく、夕刊にも締切時刻があります。日経新聞の場合には、上図のとおりです。日経新聞の場合、夕刊には海外の経済情報を多く掲載されます。日本時間の昼が欧米のマーケットの閉じる時間だからです。
なお、夕刊を発行している地域は、以下の通りで、それ以外の地域では、朝刊・夕刊が一体となった「全日版」を発行しています。
【東京本社】関東地方、山梨県、静岡県
【大阪本社】近畿地方
【名古屋支社】東海地方
【西部支社】山口県、福岡県、佐賀県
ルーツはマーケット情報 140年もの歴史
日本経済新聞は1876(明治9)年に「中外物価新報」という名前で三井物産の益田孝氏により創刊され(当初は週刊でした)、140年の歴史があります。当時は海外とモノのやりとり(貿易)を行うとき、日本各地で取引される商品の価格の一覧表がなく不便でした。
そこで、それを取りまとめることになったのです。そうやって創刊したのが中外物価新報です。その後、1946(昭和21)年に、「日本経済新聞」という現在の名前にかわりました。日経新聞のルーツは、モノの値段を知らせることから始まったんですね。これは今でも、「マーケット商品」の紙面につながります。私はこの面を読むときは、日経の歴史に改めて思いを馳せます。
【メモ】益田 孝(ますだ たかし)
(1848-1938)日本の実業家。草創期の日本経済を動かし、三井財閥を支えた実業家である。明治維新後世界初の総合商社・三井物産の設立に関わり、日本経済新聞の前身である中外物価新報を創刊した。茶人としても高名で鈍翁と号し、「千利休以来の大茶人」と称された。
号数は通算 号外の本当の意味とは?
数は発行される日ごとに「1」増えます。ですので、朝刊と夕刊とでは号数は同じです。大事件が起こったときに発行される「号外」は、「通し番号にカウントされない」って意味です。
つづく。