第8回:秘教編3|イニシエーション 霊的進化の階梯
帰幽後に明かされたクレーム氏の霊的段階
ベンジャミン・クレーム氏は、3.46段階のイニシエートである。
(2014年時点)
彼は、生前自らの霊的段階を明かすことは無かったが、死後身内によって公表された。
秘教的なイニシエーションの5つの階梯
イニシエートとは、意識を拡大し霊格の向上に成功した者である。
神智学のことを秘教といい、この秘教の世界ではイニシエーションは5段階に分けられる。
ここではクレーム氏が3段階のイニシエートという話からイニシエーションの階梯を進めようと思うので、1段階と2段階のイニシエーションの説明は省略する。
本来、秘教の世界でイニシエーションという言葉が適用されるのは、クレーム氏の3段階からである。
よって、霊的段階において3段階と4段階はイニシエートと認められるが、正確にいえば、1段階と2段階ではまだイニシエートと認められることはない。
3段階:アナーガミ(メンタル体の制御)
クレーム氏の3段階のイニシエーションは、サンスクリット語でアナーガミ、日本語では「復帰しない」という意味である。
これはキリスト教でいうイエスの変容に値するもので、メンタル体の制御が求められる。
メンタル体とは、「目には見えない思考する霊的な身体」を意味する。
このメンタル体は、低位メンタル(具体的思考)と高位メンタル(抽象的思考)の二つに分けられる。
前者は生活の知恵を意味し、後者は仏教の智慧を意味すると理解すれば良いだろう。
このように秘教の世界を紐解くと、小難しい理屈がすぐ飛び出してくる。
なので読み飽きないように理屈はここまでにして、話を先に進めよう。
クレーム氏は3.46段階の方なので、あと0.54段階で4段階のイニシエーションに達することができる。
4段階:アルハット(人類が到達できる最高の霊的段階)
この4段階は、人類が到達できる最高の霊的段階である。
サンスクリットではアルハット、仏教でいうところの阿羅漢を意味している。
アルハットまでくれば霊的求道から逸れることはないといわれているが、クレーム氏のアナーガミの段階までは一歩間違えると脱落することもあるそうだ。
故に、イニシエートに生まれし者は、その生において霊的求道を歩むことは必然であり、一瞬たりとも気を抜くことは許されない。
総合ヨガの三浦関造氏も、「多くのイニシエートが闇に引きずり込まれた。」と著書の中で述べていた記憶がある。
それほどイニシエートの人生は過酷なものであるといえよう。
ここで4段階のイニシエートとして神智学に関係がある二人の人物を挙げておこう。
一人はブラヴァツキー夫人で、もう一人はクリシュナムルティである。
また補足として、この二人と関係の深かった2段階のイニシエート達も共に挙げておく。
ヘレナ・ペトロヴナ・ブラヴァツキー/4段階
ヒマラヤのアデプト(超人)モリヤ大師・クートフーミ大師の両者から古代の叡智を教わり、人類に伝える役目を担ったロシア人貴族の女性。
彼女の著作アイシス・アンヴェイルド(ベールをとったイシス)とシークレット・ドクトリン(密教)の2冊は、オカルトの世界では有名な著書である。
なお、シークレット・ドクトリンは世紀の科学者、アインシュタイン座右の書としても知られている。
(ちなみにアインシュタインは2段階のイニシエートである。)
ジッドゥ・クリシュナムルティ/4段階
かつて黄金のオーラを放つ少年として、チャールズ・ウェブスター・リードビーター司教に見出された人物。
彼は世界教師マイトレーヤの器として、神智学協会内で英才教育を受けることになる。
しかし、その後マイトレーヤは「自身の肉体で現れる」という判断をされた為、彼の役目は突如終焉を迎える。
そして、それまで準備してきた星の教団を解散し、真の自由を求めて生涯に亘り人々に「魂の解放」を説き続けたインドの思想家である。
5段階:アセカ(解脱してアデプトの超人に至る)
そして、4段階のイニシエーションを凌駕した者は、遂に人間の領域を超えて、輪廻の軛から解放される。
俗的に言ってしまえば 、「カルマの法則から脱すること」である。
この第5段階を秘教ではアセカといい、人間からアデプトへと進化し、ハイラーキーの一員として迎えられる。
(文章の構成上このように表現したが、厳密にはアデプトまでにならずとも、アデプトの弟子になり霊的な形で世界奉仕に献身している人々もハイラーキーの一員と見なされることも付記しておく。)
アデプトとは、秘教用語で「人間を超えた存在・超人」を指す言葉である。
一般的にはアデプトのことをマスター又は大師と表現するが、石川道子氏の翻訳では大師ではなく覚者と表現している。
(恐らく弘法大師ではないが、仏教的に捉えてしまうのを避けたためだと思われる。)
光の勢力:ハイラーキー(聖白色同胞団)アデプトの集団
ハイラーキーとは、人類から解脱を果たしアデプトへと進化を遂げた者達によって形成された霊的な組織である。
いわば彼らは光の勢力であり、神の経綸(プログラム)に基づいて地球上の全ての生命の進化に携わっている。
ハイラーキーは他にも様々な呼び方があり、日本では聖白色同胞団といわれる。
ただし、白色とはいっても特定の人種を指している訳ではない。
間もなく人類の前に姿を現す光の集団
クレーム氏がいうマイトレーヤとはハイラーキーの長であり、彼が地上に姿を現すときには複数のアデプト達と共に現れるそうだ。
要するに、彼らは集団で行動する霊的な組織であり、人類の背後で我々を啓導し守護している霊的保護者のような存在である。
これを伝えるために、クレーム氏は人生の後半生を奉仕活動に捧げられた。
参考文献:入門神智学
原題は「神智学の第一原理」。
第4代神智学協会会長 ジナラジャダーサ/著。
膨大かつ複雑な神智学体系を簡潔に説いた名著である。
残念な事に現在この本は絶版になっているようだが、ネットで竜王文庫の目録を見ると、ダイジェスト版があるようだ。