酒蔵巡りで、隊長を務める
先週、丸々1週間を遊び歩き、アルコール漬けの日々を送ってしまったにも関わらず、
今週もまたアルコールにどっぷりな予定を入れてしまっていたのである。
一足先に師走の忙しさだ。
今回は、住まいから車で90分ほどの距離にある、日本酒の酒蔵を友人達と巡るのだ。
歩ける距離に五つの酒蔵が集中している面白い場所で、各蔵毎に4〜5種の日本酒が飲み比べできる。
酒好きには堪らないこの名所。これまでに県外から訪れた友人や父親など、酒好きをもてなす為にこの酒蔵巡りを楽しみ、そしてベロベロになってきた。
今回は、妻の高校生の頃の同級生であり、同じ弓道部の仲間であり、同じ志や悩みを持つ個人事業主(パン屋さん、焼き菓子屋さん)と連れ立っての酒蔵巡りである。
とにかく、大変な量の日本酒を飲むことになる。
しかも、酒のアテ、つまみ、肴といったものが無い状態での、酒との一対一の戦いになる。
過去には、気前の良い酒蔵のスタッフさんがどんどんと注いでくださるものだから、ついつい飲み過ぎてしまい、2蔵目ぐらいから既に味があまりわからなくなってしまい、飲み比べの意味を失ってしまったことがある。当然翌日は完全な廃人となって人生を無為に過ごした。もう2度と酒なんぞ飲むものかと、二日間くらい思い続けた。
そんな反省から、今回は万全の備えで臨む。
隊長である私は、蔵から蔵への徒歩移動の機動性を損なわないようにリュックを背負い、その中には大量のおつまみ(蔵から蔵への移動中に食べる)、水分補給の為のドリンク、胃薬、などを満載で挑む。
参加者にも、決して油断しないよう、心構えを説いて聞かせる。
皆にも、隊長、と呼ばせる。
規律を守らせ、結束力を高める。
1人の落伍者も出すことなく、この五蔵巡りを、五体満足で全員帰還する。
一つ目の蔵では、以前に訪れた時よりも広い試飲会場が設えてあり、機械にコインを入れて、ボタンを押すと試飲カップに規定量の日本酒が注がれる近代的なシステムへとアップデートされていた。
ふむ。これならば適切な飲量を守ることができるな。
随分と安全なシステムになったものである。
二つ目の蔵に移動する。隊長はこの僅かな移動時間中に、背負ったリュックの中からミックスナッツを取り出して貪り食った。
本来の好みで言えば、うるめいわしなどをゆっくり齧って、日本酒を舐めたい。
しかし、今は胃袋の中をある程度食糧で満たし、酒の占有率を下げることが優先だ。
女性陣は、きゃっきゃと笑いながら道中を楽しんでいるが、隊長は窘めたい気持ちを抑え、自身のメンテナンスに集中する。
かつてこの蔵を訪れた時は、スタッフのおじさまがまるで落語のような名調子で案内をしてくださり、もう存分に酔っていてあまり飲もうと思えない自分に「ささ、たんと呑んでいただかないと、モトが取れませんよ」と沢山のお酒を注いでくれた思い出がある。以来、五蔵巡りの中でも序盤に伺って、酔いが進み過ぎぬ内にあの名調子を聴こうと思っていた。
・・同じく配布されたコインを投入し、規定量をプラカップに受ける近代方式へと様変わりしていた。
どうやら、この数年の内に全ての蔵がこのような方式へと統一して変更されたようだ。
確かに、この方が安全である。
かつての隊長のように、無様に酔い過ぎるといった被害者が出ることを防ぎ、そしてそんな無頼者に絡まれる蔵側の被害も防ごうという、非常に効率的でよく考えられたシステムであった。
事前に参加者の危機感を煽りまくり、リュックを背負ってフル装備で決死の覚悟を熱く語っていた隊長の信頼は、地に堕ちた。。
隊長はもう振り返らない。
そうは言っても、機械制御でかっちり20mlずつを一つの蔵で4〜5種類ほどいただくのである。
3蔵ほど巡ると、元より強い訳ではない隊長は、心地よくフラフラと酔いにのまれた。
なので、隊長権限で隊列を裏路地へと誘導し、そこに偶然見つけた公園で小休止することにした。
これはやばいと言いながら、ブランコを漕ぎ続けた。
そしてジャングルジムにも登った。
もう、他人の評価なんか気にしない。
隊長はご満悦である。
なにせ、どの酒もとびきり美味しいのだし。
こうして、最終的に1人の落伍者も出すことなく、落伍の気配を出すこともなく、この五蔵巡りは、五体満足で全員帰還することに成功した。
リュックの中に満載であった糧食および水、トマトジュース、ブドウ糖飲料、胃薬、等は、全く重量を減らさずに車両に積み込まれ、撤収となった。
尚、友人1名と私と妻、計3名はこの五蔵巡りの後も帰宅せずに、ずっと泊まりたかったゲストハウスに宿泊することにしてあった。
これはまた別の記事で、ちゃんと、書こうと思う。