誰がアパレルを生かすのか サブスクリプションが叶えるは「お得感」より「納得感」
2017年に話題となった本『誰がアパレルを殺すのか』は、ロングランでよく売れた。ちょうど書店で研修をしていた時期で、老若男女に広く買われるのが印象的だった。
アパレル関係者以外にも受けたのは、書名のインパクトとポップな装幀が功を奏したからだけではない。多くの人にとって、自らのビジネスの危機感や生活の変化に響いたのだろう。
私自身、正直オシャレとは縁遠い生活をしているものの、出版業界へのヒントを求め手に取った。旧態依然とした構造や増え続ける返品、過去の成功体験への固執など、他業界ながら、本の話をされているようでびっくりした。
単にモノをつくるだけでは、消費者に振り向いてもらえない時代である。売る・買うだけでなく、生活の在り方へどうアプローチしていくか? そんなことを考えさせられた一冊だ。
あれから2年。私たちの生活の変化とともに、アンサーソング的な事例が出始めている。若い世代を中心に徐々に定着しつつあるサブスクリプションモデルが、今後、アパレルを生かす一打となるかもしれない。
岡山発のストライプ・インターナショナルが提供する洋服のサブスクリプションサービス「メチャカリ」が、サービス開始から3年超の苦戦の末、ようやく黒字化が見えてきたようだ。
雨後の筍のように乱立する沢山のネットサービスへ、スマホを通じて自由にアクセスできる時代に、なぜ敢えて自分がそれを選択するのか?企業が提供する価値を見極める人々の感度は、年々高くなっている。
特に同世代と話していると、あえてミーハーであることによって多くの情報に触れ、常により納得感の高いサービスを求めること自体を楽しんでいるようにも感じる。単に質やコスパのみならず、理念やビジネスモデルへの共感を含め、自分が納得してそれを選択するという体験に満足感を得る。
定額制だと一度きりの付き合いにならずサービスへの理解が深まり、納得感を得やすい。逆に、生活に落とし込む中で納得感を得られなければ、人は離れていく。
昨年行われた「メチャカリ」のアンケートでは、約94%のユーザーが「ファッションレンタルアプリを通じて、ファッションを楽しみやすくなった」と回答する。企業側が当初想定していた「お得感」のみならず、ユーザーの生活に新たな価値を提供する「納得感」あるサービスが鍵となっているかもしれない
テクノロジーを取り入れながらモノのサブスクリプションモデルを進める他業界の成功・失敗事例に、学ぶことは多い。目の肥えた生活者に納得してもらえるようなモノづくりを模索していきたい。