熊本・阿蘇の自然の中で感じたこと
熊本県の阿蘇を訪れた。自然の中に身を置いてみると、思った以上に得られるものがある。
清々しい気持ち、自分を小さく感じること、広い場所で風や湿度を肌で感じること。
阿蘇の草千里という場所に火山博物館があり、そこで観たビデオで阿蘇の神々について少し学ばせてもらった。
そこで思い出したことがある。
『大地がエネルギーを持っている』という、ちょっとスピリチュアルな感覚を教えてもらったのは、イギリスのグラストンベリー(Glastonbury)という地だ。
グラストンベリーといえば、音楽フェスというイメージがある人も多いと思うが、世界中からスピリチュアルに興味のある人が訪れる場所でもある。
イギリスに住み始めてすぐの頃、私の親戚がそこへ行くいう時に連れて行ってもらったことがあった。あの有名な石の大群ストーンヘンジも近くにあるので、セットで訪れた。
これらの場所は、いわゆるパワースポットと呼ばれている。
私はスピリチュアルな力は特にないが、グラストンベリーに行った時、何より自然の中に身を置くことの気持ち良さを感じた。
大自然が目の前にあること、それに感謝する人々に囲まれてのんびりすること。
それは思いのほか素晴らしい体験だったことを覚えている。
丘を登って行ったら、芝生の上に寝転んで足を伸ばした。目の前に広がるグリーンな風景。イギリスには九州みたいに高い山々なんてない。雄大な山々も良いが、平べったい自然も良い。阿蘇とグラストンベリーのコントラストは、なかなか良き。ということで素敵な思い出だ。
阿蘇を訪れる人々
私は大分に住んでいるので、熊本・阿蘇は車で1時間半で行ける。
そのわりに「じっくり行ってみようか」とはなかなかならないのが、近場あるある。きちんと阿蘇に泊まって満喫することは、今まであまりなかったのである。
今回は、阿蘇に1泊して熊本市内も満喫できた。
阿蘇を訪れる人々を見てなぜかグラストンベリーを思い出したのは、多くの人が自然の中にいるのを見たから。
人々が草千里という地で嬉々としてハイキングをしている。自然に感謝して笑顔になっている。その姿を見て、私もなんだか目の前の大自然が何か特別な、高貴なものであるような気がしてくるのだ。
阿蘇にはもちろん、火山がある。火山は大地のエネルギーで、それは時に恐ろしく、人間の力が及ばない怖さを秘めている。
火山博物館などで、阿蘇の神々の話や不思議な自然の造形などを教わるととても興味深く、同時に火山としての歴史をもとに恐怖も少し感じる。
だからこそここで、何かのパワーがもらえるような気がする。
「これはただの思い込み?確かに火山はすごいけれど。」
そんなふうに思った時、目の前のたくさんの人を見て思うのだ。
なんでもいいか。こんなに気持ちが良いんだもの。
大自然と大人数が生み出す力
もし阿蘇の草千里に行って、人っこひとりいなかったらどうだろう、と考えてみる。こんな大自然を目の前にして自分ひとりか、自分と家族しかいなかったら、なんだか怖くて心細い気持ちになるのではないだろうか。
それに対して、
「こんなにたくさんの人が訪れている、ありがたい地なんだ」そう思うことで、一種のグループに加入したような、妙な一体感、安心感を得ることができる。
雄大な自然の力はすごい。同時に、それを見に来るたくさんの人々に囲まれることも、一種のパワースポット体験なのだ。
そういえばイギリスの語学学校の友達とみんなで「ストーンヘンジへ行こう」と言っていた時、イタリア人たちが口をそろえて、「やめた方がいいよ。本当にただの岩があるだけだから」と言っていた。
「自分は騙されないぞ。」と思う人がいることも、確かに納得できる。
グラストンベリーにしてもストーンヘンジにしても、そして阿蘇にしても。共通点であり確かなことはたった一つ。大自然に囲まれる体験ができるということ。そこには自分以外にもたくさんの人が訪れているということ。
その場所に来れば、自分自身の心がリフレッシュされるかもしれないし、何か新しいアイデアが生まれるかもしれない。あるいはずっと吹っ切れなかったことに区切りをつけられるかもしれない。
自然は何かをしてくれるわけではないけれど、自然に囲まれた時の自分自身の心の変化は何かしらあるだろう。
その力は案外本物で、自分が良い方向に変わるきっかけになるのではないか。
少なくとも、そんな可能性があると思う。
私はこれからも人々が訪れる大自然の力を信じたいし、そんな地を訪れてみたい。