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Tom Petty 『Wildflowers』

 不意に風が吹き抜け、足下を見れば小さな花が咲いている。春が来ることのありがたさを、今ほど感じたことはない。

 トム・ペティがこの世を去って、もう6年ほど経つ。最初に聴いた彼のアルバムは、大学生の頃に買った『Full Moon Fever』だった。以来、『Into The Great Wide Open』や『Wildflowers』といったアルバムを長年愛聴してきたが、とりわけ前述の『Wildflowers』は僕にとって大事なロック・アルバムの1つであり続けている。

 タイトなドラム、ざっくりと刻まれるギター。僕はこういうシンプルで温もりのある音楽が好きだ。タイトル曲の「Wildflowers」や「You Don`t Know How It Feels」(昔、渋谷クアトロにダイアン・バーチのライヴを観に行ったとき、彼女がこの曲を歌っていたのが印象に残っている)、「To Find A Friend」あたりが昔から好きで、聴き返す度に胸が高鳴る。この「胸が高鳴る」というのが大事なのであって、それこそがロックのすべてではないかとさえ僕は思う。

「君は野の花のなかにいるのが合っている 
   君は海に浮かぶ船に乗っているのが合っている  
   時を忘れて航海に乗り出してごらんよ  
   君には自由を感じられる場所が合っている」 

_Tom Petty「Wildflowers」(訳:大野れい)


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