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花べこ縁起
年末の大掃除に障子や襖の反古紙が出ますでしょ。それで張子のべこ作るのが土地の習わしで、お披露目が桜の時期なんで花べこいうんです。べこの首が勝手に揺れたりすると、ご先祖様が来たなんていう。
昔から春先にこの土地では牛祭りがございまして。目玉は未経産の雌牛の品評会で、一等ともなれば家一軒立つといわれた。
昭和*年の大地震では品評会の雌牛がなまら騒いだいいまして、抑えが効かず縄持つ輩はどんどん引きずられたということで。見物が面白がって牛主の引かれるのを見届けた先があの鉄塔のある小山でして。雌牛どもが盛んに鳴くもんで、なにさねと見下ろしたらおっかねぇ津波が迫っててよ。
べこのお陰で助かったわけだが、先の地震でもこの教訓が生きた。だぁれも死ななかった。以来、あの鉄塔に花べこを紐でくくるのが習いとなりましてな、凪に首が揺れると、ああ、あんたも帰ってきたねぇとこの土地ではなるんです。
花べこは、あとはあの小山でみぃんな焼かれます。