ショートショート#18『執念第一②』
五月一日は十年ぶりの青空同窓会となった。
小学校の創立記念日に合わせ、十年前に校庭の桜の下に埋められたタイムカプセルを、二十歳になった子どもたちが掘り起こす行事が毎年行われる。
十歳の時に自分宛に書いた手紙のことならよく覚えている。
「……になれてますか?」
無邪気に聞く幼き日の手紙は、いまのぼくには少なからず負担に違いなかった。二十歳の自分はまだ大学生で、世に出るまで猶予があるとはその頃は想像だにしなかった。二十歳といったら立派なオトナだった。
……にはちょっとなれそうもないかな。久々に会った級友と二言三言冗談交わしながら、大きな円陣を組んでジュラルミン製の銀の球が掘り起こされるのを待った。
「執念第一」
あれ?
こんなこと書いた覚えないけどな。周囲を見渡すと、誰彼もまた不思議そうな顔をして、おそらくは覚えのないことが書かれてあって戸惑っている。
こんなふうに励まされることもあるわけだ。そう思ってぼくは、快晴の空を仰ぎ見た。
(410字)