![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/26355191/rectangle_large_type_2_6ab8fcec7bfeb63e2cee52d1f786a846.jpeg?width=1200)
アメリカの名詩🇺🇸和約
自分がこの世で1番好きな詩を紹介させてほしい。
エミリー・ディッキンソン。
19世紀を生きた人類史上、稀にみる才能をもった女性詩人。裕福な家庭にうまれ、不自由もなく暮らし、生涯結婚もしなかった。彼女の詩集は生前まともに出版もされず、公になった詩の数編は、悲しくも酷評にあっていた。
まずは実際に詩を読んでみて頂きたく。
(タイトルはない。彼女はタイトルをつけなかった)
Because I could not stop for Death —
わたしが死のために立ち止まれなかったから
He kindly stopped for me —
親切にも彼(死)のほうで立ち止まってくれた
The Carriage held but just Ourselves —
And Immortality.
わたしたちはともに馬車に乗った
不滅と一緒に
We slowly drove — He knew no haste,
わたしたちはゆっくりと進んだ。彼は急ぐことを知らなかったし
And I had put away
My labor and my leisure too,
For His Civility —
それにわたしは置いてきてしまった
わたしの仕事も、わたしの休暇も
彼の誠実さに応えるために
We passed the School, where Children strove
At recess — in the Ring —
わたしたちは学校を通り過ぎた、そこではこどもたちが競技で争っていた
輪になって
We passed the Fields of Gazing Grain —
We passed the Setting Sun —
わたしたちは通り過ぎた
こちらを見つめてくる小麦畑を
わたしたちは通り過ぎた
沈む太陽を
Or rather — He passed Us —
というよりも、彼(太陽)がわたしたちを通り過ぎたのかもしれない
The Dews drew quivering and chill —
露がこごえる寒さと震えを引き寄せた
For only Gossamer, my Gown —
My Tippet — only Tulle —
というのも薄いガーゼ、それだけがわたしのガウン
わたしの肩掛け、それはチュールだけなのだ
We paused before a House that seemed
A Swelling of the Ground —
わたしたちは家の前に立ち止まった
それは隆起した地面にみえる
The Roof was scarcely visible —
The Cornice — in the Ground —
屋根はなんとか見える程度
軒は地面のなか
Since then — 'tis Centuries — and yet
それからというもの、いく世紀かが流れた、
でもまだ
Feels shorter than the Day
あの一日よりも短く感じる
I first surmised the Horses' Heads
Were toward Eternity —
はじめて馬たちが永遠に向けて鼻先を向けた
あの一日よりも
*********************
ここまでが、彼女の詩。
死の直後のことを時間軸にそってロードムービーのように、描写していく内容。
彼女は一度死んだ経験があるのではないかというくらいのリアリティと、臨場感を感じる。
英語のまま声に出して読んでみると、彼女の声がきこえてくる気がする。この世のものとはおもえない浮世離れした声。
"Since then — 'tis Centuries — and yet
Feels shorter than the Day"
自分が好きなくだりはここ。このくだりで夢中になってしまった。
あの世とこの世とでは時間の流れかたが違う
それを感じさせてくれるセンテンスだ。
「数世紀が過ぎたが、あの一日より短く感じる」
こんな詩を封建制の価値観が色濃く残る、19世紀のアメリカで書いたのだ。