【オランダ滞在記Vol.6】オランダ人夫が息子にオランダ語を話し続けた結果|息子・コザルの言語能力が垣間見れた嬉しい時間
Hoi!こんにちは。
今回は、前回の続きになります。
オランダ滞在を1ヶ月と長期に計画した一つの目的が、
息子・コザルが夫親族、家族とたくさんの時間を共有し、オランダとの繋がりをたくさん持てるようにすることでした。
ただでさえ、住居環境も食べ物も違うオランダで、言語が違うという環境は、大人でも超絶にストレスのかかることです。コザルは生まれてから一度もオランダへ訪れたことがないので、少なくても言語だけはなるべくギャップのないよう、夫は生まれてからこの4年間ずっとオランダ語を話し続けていました。本当に根気のいることでした。
息子・コザルの言語背景は以前書いたことがあります。
もしよければ読んでみてください。
パパはまともだった(笑)TVやパパ以外でオランダ語を聞くということ
夫にとって、なぜこれほどまでに根気がいるかというと、日常生活で自分しかオランダ語を話す人がおらず、息子からすると、自分の父親以外オランダ語を話す人がいないのです。
時々夫の友人がうちに遊びに来るとき、夫親族がTV電話をしてくれる時、Netflixでオランダ語のアニメーションを見る以外は誰にも出会いません。生活の中にオランダ語コミュニティーが父親しかいないことの孤独感は、夫にしても、息子・コザルにしても半端なことではなかったと思います。そしてそんな中、赤ちゃん時代からこの4年間の間で、父親拒絶期が数回ありました。それが言語によるものかもしれないと思ったものが何度もありました。父親だけ伝わらない、父親だけ何で日本語じゃないのか、そんな拒絶反応(泣き叫び、会話させてくれない状態)がありました。夫にとっても息子にとってもとても辛い時期だったのを今でも思い出します。
だからこそ、彼にとっても私たちにとっても、彼のオランダ滞在はとても大きなことでした。やっと父親以外の人がオランダ語を話していることを直接聞いて感じることで、父親はまともな人間だったのか!と理解してくれるのではと。父親と彼だけの世界ではないことを実感してくれるのではと期待しました。
息子・コザルの反応は?オランダ語能力は?
結論から言うと、コザルはちゃんと理解することができました。オランダに到着し、空港で夫の姉夫婦やいとこたちがオランダ語で話すことをすぐに受け入れてくれました。モジモジと恥ずかしがりながらも、夫の親族たちやいとこが話しかけてくれるととても笑顔になりました。
そこから数日、夫以外の人が話すオランダ語を理解していることがちゃんと行動や言動から読み取れました。夫と私は感無量でした。この4年間、夫は諦めなくて本当に良かったと。みんなと笑い、遊んでいるコザルを見ているのが本当に幸せでした。
ただコザルは、オランダ語が理解はできても自分の口から言語化することはなかなかできません。能力的には、リスニングとヒアリングは80%ほど理解していたと思いますが、スピーキングは10%ほどかなと。しかしながら「Nee (No)」「Yeah (Yes)」が言えて「Koude melk alsjeblieft(冷たい牛乳ください)」が伝わったのが自信になったのか、おじいさんや叔父さん叔母さん、いとこたちと日本語が混じりながらでもとても楽しい時間を過ごすことができました。そしてここで焦りは禁物と自分に言い聞かせました。コザルのペースでオランダ語のコミュニケーションを楽しんでくれたらいいなと感じました。
「コザルとのコミュニケーションはどの言語がいいの?」
そんな中、もう一つ感動したことがありました。
それはコザルのいとこ[A]中に、「自分のことを話すときに性別を表す一人称を使わず、名前で会話してほしい」という子どもがいます。自分の意思をしっかり伝え、なりたい自分像を相手に伝えることができる子です。
その子がコザルと初めて会ったときこんなふうに私に尋ねました。
[A]「コザルとのコミュニケーションはどの言語がいいの?オランダ語?日本語?日本語ならアプリで翻訳機能を使いながら遊ぶね。」
私は鳥肌が立ちました。未だかつて、こんなふうにコザルと会話する上で事前に聞いてくれる人は1人もいませんでした。
[私]:「コザルはパパからたくさんオランダ語を聞いてきたから、オランダ語で話してくれるといいかも」と伝えると、
[A]「そうなんだね!じゃあオランダ語だね。ちなみに英語はどうなの?」
[私]:「英語は私と◯◯(夫)との間でしか喋ってないから、オランダ語で大丈夫だよ。」
「わかった!」というと、すかさず自分の父親に、
[A]「パパー!コザルとはオランダ語で話すの!さっき英語で喋りかけてたけど、オランダ語だから!」
この子はまだ12、3歳です。コザルがどのようなコミュニケーションをとっているか自分で判断せず、ちゃんと聞いてくれたのです。
この子がちゃんとコザルと向き合ってくれている証拠であり、今のコザルの存在をちゃんと尊重してくれる子なんだと、とても嬉しくなりました。
大人によくある、『癖』が強くてアップデートできないとどう映るか。
大人は時に、自分の経験を元にした情報のみで相手への接し方を判断しがちです。私はそういう行動を『癖』というふうに言い換えています。
日本で生活していると、例えば父親とコザルと一緒に歩いていて、声をかけてくれる人のほとんどが「Hello!」と英語で挨拶をしてくれます。私たちの家族背景を知らない人からすれば、こういった親切心からくる『癖』を十分に理解をしています。ただ中には、私たちの家族背景を知っている人でさえ、この『癖』のおかげでアップデートできない人も多いのです。
例えば生まれてからずっと通ってるコザルの小児科の先生や看護師さんたち。コザルの名前も顔も覚えてくれていて、「大きくなったね〜!」といつも声をかけてくれるとても親身な小児科です。ですが毎回訪れると「コザルくん、日本語上手だねえ!」「痛い!ってはっきり日本語で言えるの?すごいじゃない!」「お家は英語なんでしょ?」「英語はどのくらい話せるの?」
…毎回説明しているのですが、父親はオランダ人、保育園も公立、生活はほとんど日本語なんです、と言っても容姿や『癖』が先行してしまいます。ここでの『癖』はおそらく『外国人はみんな英語を話す』と言う考え方の『癖』です。これがなかなか強過ぎて、アップデートしてもらえません。コザル視点からすると「この人たちは何言ってるんだろう?」としか思えないですし、そのように映っているのです。こういった場面がずっと続いていくと、思春期にもなれば子どもたちにとって煩わしさに傾いてしまうことになりかねません。
でも残念ながら、こういう人は本当に、本当に多いのです。日本だけではなく他の国でも同じです。だからこそ、コザルと向き合ってくれたこの[A]の行動にとても救われた気持ちがしました。訊いてくれたらいい。その子が話しているのは何語なのか親との会話を聞けば、それで十分な判断ができることが多いと思います。
息子・コザルのオランダ滞在を終えて
オランダ滞在を終えてから、息子と父親の関係が前よりも良くなったことを実感しています。きっとオランダ語の世界がちゃんと実在したこと、オランダで好きな食べ物、好きなおもちゃなどを発見し体験したことで、コザルの中の世界は広がり、前よりも寛容になったと思っています。そして言語も、夫の言葉を真似る機会が圧倒的に増えました。きっと安心したのだと思います。
言語の学習は、生活を基にすることがやはり重要です。言語は生活の中で使わなければ活かすことができません。オランダ語の習得には、数年に一度のオランダ滞在が必須になってくるでしょう。コザルがオランダ滞在を楽しみにする姿を胸に、気長に付き合っていく、それが今の私たちができることなのかもしれません。