イギリスの里親制度を知るセミナーに参加しました!(その1)
今回は、里親のホッブス美香さんのリポートです。
2024年8月3日(土) 日本財団主催による『フォスタリング・ネットワークの活動とスキル・トウ・フォスターについて』、イギリスの里親制度についての講演会をウエビナーで視聴しました。
登壇者はイギリスのフォスタリング・ネットワークCEOのサラ・トーマスさん、ファシリテーターは日本財団の高橋恵理子さん、そして早稲田大学教授の上鹿渡和宏さんでした。
イギリスの社会的養育の変遷から。
― 1552年から救貧院のような形で社会的養育の記録があり 1853年には里親制度が始まり救貧院から里親へ預けられ、里親は自治体から支払いを受けていたとのこと。
これはちょっとびっくりしました。早いですね。日本はいつからだったのでしょう。
― 1868年にはバーナードホームという(ここは有名)いわゆる児童養護施設の誕生。1945年には子どもの最善の育ちには養子縁組又は里親が望ましいという方針が出され、施設養護も8人から12人までという中規模の施設形態が望ましいといった流れがあった。
イギリスでは、1970年代に施設から里親へシフト
この「里親の不足を補うための施設の増加」というのは正直驚きましたが 施設はまったくゼロにするということはベストでは無いと私も思います。高齢児で、家庭に今更馴染めない子もいるでしょう。また里親家庭でなかなか抱えきれなく、里親家庭を転々とするのも良い事とは思えません。ただ しっかり最後の砦になる専門性の高い施設が必要ですね。
日本では1万5607世帯(令和4年3月末現在)が里親登録していて 実際に子どもを養育しているのは 半分以下であります(里親委託率20%)。子どもの最善の利益を考えた末に実際にこうなっているのか それとも理由もなくなんとなくこういう状況であるのか この違いはじっくり検証すべきであると思います。
日本の里親子のサポート体制は?
日本の子育ては、基本「親任せ」「個人責任」である面が否めないと思います。里親という本来パブリックな養育であっても、「里親という存在自体が私的なものか公的なものか」微妙なのです。あくまで自分は私的な子育てをしているんだという立場を貫きたい里親もいれば、自分はパブリックな子育てなんだという里親もいます。しかし、決して中途からの養育は私的であっても公的であっても易しいことばかりではないのです。 関係機関は決してそういうつもりはなくとも、 里親側には切迫感がつきまとっているかもしれないと思います。
「子育て辛いんです。この子難しいんです」などと言おうものなら 児童相談所に子どもを引き上げられてしまうかもという恐怖が日本の里親にはついて回ります。本音はいつも心の奥深くに仕舞われていたりということも珍しいことではないです。
でも トラウマを抱えた子どもの養育にはたくさんの命綱が必要なのです。
里親同士のピアサポートへもきちんと予算がついたり(日本の里親のピアサポートはもちろんお互い無料奉仕)不安定な時にはスタビリティチーム(ベテランのソーシャルワーカーや心理士達のサポート)が短期間で関係を強化してくださったり 日本でもこれから里親を増やし、家庭養育をメインにしていくには 民間企業の力もお借りして支援に拡がりを持っていくことが肝要でしょう。
日本の里親制度がもっと知られ、里親登録が増えますように!
なによりも 日本では里親制度がまだまだ知られていないということ、人口が日本の半分のイギリスで登録里親が53,000組(実際には里親は足りていない状態でありますが)。しかし 日本では登録里親1万5607世帯(なんとこちらは、半分以上は子どもをお預かりしていない)。日本の里親の登録数もせめて最低3倍にはしていく必要があるでしょう。
セミナーでは動画もありましたが、登場するサポートする側の人間も自分たちのしていることの意義をしっかりわかっていてやりがいを感じているのがとても伝わってくきます。
多くの手と受け皿で 実親と一緒に生活できない子達をしっかり支えるんだという思いが伝わってきます。
ー 白黒つける ー
子どもを育てる? それとも、手放す?
そんな二者択一ではなく、『苦しいときに苦しいと言えて、きちんとサポートを受けられる』そういう仕組みを日本でも拡げていけたらと思いました。
「育てる」「育てない」の間には幅広いレイヤーがあり、そこに専門的な眼や手が入れば、ちょっとしたサポートや休養ができる仕組みがもっとあれば、「育てない」にイッキに振れるケースも減っていくでしょう。
次回は、セミナー報告(その2)として、現在のイギリスの里親支援について書きたいと思います。
ホッブス美香(里親)
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