独身

30歳独身である。

最初いた職場には同期が14人いて、私の退職時には私を含めもうひとり独身の女の子がいた。あとはみんな結婚し、会社を辞めたり子どもを産んだり家を買ったりしていた。

そのもうひとりの独身の女の子が寿退社で引っ越すことになったので、と同期の男の子から送別会の誘いがさっき来た。少し前に彼女と会った時に、大学の時に付き合っていた人とくっついたり別れたり、でも結婚、するかも、とは聞いていたので落雷は免れたが、それでもやはり電気は走った。

大阪ではあるがかなり田舎の方に住み、勤めているのでこの歳になって結婚していなかったら周りからは後ろ指をさされ、出会い頭に「早よ結婚して子ども産め」と言われ、人間性に難ありの烙印を押され、石を投げられる。かなり痴呆の進んだ我が祖父も、私が独身であることだけは鮮明に記憶している。口を開けば、の状態だ。そのたび、懸命に働き税金を納め、毎日風呂に入りお粗末ではあるが化粧をして人に不快感を与えないよう努め、お笑いライブや動物の写真や動画などを見て心を癒し、森林伐採や海洋汚染を悲しむまともな人間になんで文句あるねん、と言いたくなる。だがそんな言葉は心にしまって「そうですね〜いい人いればいいんですけどね〜うまいこといきませんね〜」とヘラヘラ答えてしてしまうのが私だ。結婚していないことがなぜそんなにいけないのか、いつも腹を立ててはそのまま寝て流す。

でも、贅沢にもこのまま生が続くのなら、老後に一人でいるのはやはりさみしい気がする。そんな時に結婚していなかったら後悔するのかもしれない。なんかそれ、わかる。ポストに新聞やチラシが溜まりに溜まって、大家が部屋に入ったところ炬燵に突っ伏したままの一部白骨化した独居老婆が発見された。それが私だ。なんてのはちょっと嫌だ。そっか、そのための結婚でもあるのか……うーん……あーー……

しかしよく考えると、美容師さんと話すのが億劫すぎて10ヶ月美容院に行ってないし、休みの日は11時くらいまで寝てるし、夜中に唐揚げを食べて酒を飲み、胸はえぐれて太ももは極太、顔は下の下、台風で近所の電信柱や信号が倒れたのを見てちょっと笑ってしまう自分は人間性に難しかなく、今世での結婚は諦めた方がいい。残念ながら炬燵で生涯を閉じることになりそうだ。今から整形・豊胸したとしても覆らない部分が多すぎる。


よっしゃ上等やかかってこいや!と返信しようとしたが、結婚するんや!おめでとう〜仕事で遅れるかもやけどおめでたい席行かせてもらいます!と返信した。寿退社して遠くの街に行くのはさみしいが、おめでたいと思う気持ちはちゃんと持ってる。送別会に行く頃、私は31歳独身になっている。

#白骨化

#唐揚げ


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