卒論
大学を出る時の卒業論文では映画についてつらつらと書いた。ドキュメンタリー映画というジャンル?があり(有名なところで言えばマイケルムーアが撮ってるような、実際に起きてることを撮っている映画)、それについて大学で本を読んだり映画を見たり担当教官と話したりこの卒論を書いたりした。はっきり言って非常に地味なジャンルである。しかしその中身は想像よりもはるかに過激で濃密なものであった。
書いたのは「ドキュメンタリー映画は台本のない真実の映画」みたいなイメージがあるけどそれはどうなんやろ、という内容だった。誰も興味ないだろう。卒論って感じ。大学当時、森達也の本を読んだ影響でここまで来てしまった。
卒論の中で、戦時中に撮られた「戦ふ兵隊」という映画を取り上げている。中国で今まさに戦っている日本兵たちを追った実録の、日本では最初期あたりのドキュメンタリー映画だ。タイトルが示すようにこの作品は戦意高揚ものである
と見せかけてよく見たら反戦もんやないかい、こんなもん見せられるか阿保という理由で上映禁止になった作品でもある。映し出される日本兵は戦うどころか皆うなだれ、疲れ切っていた。三角座りをしてハエにたかられるがそれを手で払う力も残っていない兵士の表情など、見ていて悲しくなる。戦意高揚どころか戦意喪失、こんなもん「疲れた兵隊」やないかい、と検閲でひっかかったらしい。
作り手によったら、逃げ惑う中国の人たちや日本兵のかっこいい戦闘シーンをたくさん入れ込んだかっこいい戦意高揚映画にもなるし、逆に作り手次第で「戦ふ兵隊」のような映画にもなる。
ドキュメンタリー映画は真実を映しながら実は作り手の主観がガンガンに入っている、もはやフィクションですよね?てか映されてる人もカメラの前でちょっと演技してるってか作ってない?え、じゃあ真実って何?コナン呼んで?みたいなオチのないことを非常に拙い表現で、他の作品も入れながらがんばって書いた。「共犯」という言葉をかっこいいと思って主題にしたりした。書く作業はとても楽しかった。
大学には映像関連の学部ができたことでありがたいことに貴重な映画が取り揃えられており、担当教官の裏ワザなども借りてこの上映禁止になった「戦ふ兵隊」などのDVDを手にすることができた。先生ありがとう。
ズブズブな担当教官との口頭試問も雑談のようなカジュアルさで終え、私の主題に興味を持った副教官の髭を蓄えた爺さんともほぼ初めて話したがかなり弾んだ。「僕ねぇこの「戦ふ兵隊」って30年前にロシアで見たんだよぉ」えーマジっすか!!と、この時に世界ってなんかおもしろいもんやなーと感じたりもした。副教官はこれを言いたいがために副教官になったのかもしれない。卒論はとてもいい評価をいただいた。
卒論を書いたことは活かされているかはわからないが、私にとってとてもいい思い出になった。虚実の皮膜みたいなんがおもしろいって話をしたかったけど、なんか回りくどい感じになってしまったなーといまだに反省もしている。また書けるのなら書いてみたい。ただもっとかっこいい文で。