不味いチョコパイを貪る夏
夜9時、気がついたら空いたお菓子の袋が机の上に置いてある。
この時に、あぁまた自分は120calを体内に入れてしまった、太るのになんでこんなことをしてしまったんだろう、って自分を責めると、その後悔が新たなストレス源となって10分後にお菓子の袋が1つ増えていたりする。
だからお菓子を食べた後は、おいしかったなー!って明るい気持ちで袋を捨てることにした。過去は変えられないのだから、今と未来を明るく生きる。
からっぽなお弁当箱
おいしいものがそこそこ自分で作れるようになった。
お母さんのと同じくらいおいしい手羽先、お母さんよりうまく作れるようになった卵焼き、自分の好きなだけ海苔を入れられるごはん。
おいしかった!とお弁当箱の蓋を閉じるんだけど、なんだか物足りなくてお菓子を買いに行ってしまう。
日本にいた時はご飯の後にお菓子を食べたくなることなんてほとんどなかったのに。
自分の好きなものばかり入れられて、幸せいっぱいのお弁当なはずなのに。
You’re so sweet
私が私のためにつくるお弁当には愛とワクワクが無い。
私が作る自分好みのぷるぷるでほんのり甘い卵焼きより、お母さんが私のために朝早く起きてお弁当箱に詰めてくれた焦げた卵焼きの方がおいしかった。
お弁当箱を開けた時の、あ!今日は私の大好きな冷凍のエビグラタン入れてくれてる!っていうプチ喜びも自分のお弁当にはない。
お菓子じゃあ愛は埋まらないって分かってるけど、欠けたものを一時的に補うために、コンビニのぶっきらぼうな姉ちゃんが稀に言うHave a good one, を期待して120cal x n servingsをレジに持って行ってしまう。
クレジットカードで信用は積めるけど、どうやら愛は買えないようだ。
ケチャップ、ウスターソース、
今日の夜は何にしようかなあ、と先生が読む退屈な数式を右から左へと聞き流して薄暗い窓の外に追いやりながらぼんやり考える。
お米買いたいけど、あそこのスーパー8時半で閉まっちゃうから急いで帰らないとだなあ。
授業後いそいで路面電車まで駆けて、レースを共にした知らない女の子とやったね、間に合ったね!と駅伝ゴールばりの笑顔を投げかけ合ったらすぐ別れて真顔でイヤホンの世界に入る。夏が始まった合図がした。
帰ったらすぐお弁当箱洗わないとだなぁ。
取り出し忘れても教えてくれる人が誰もいないから。