三度目の虚構
今日の日記より抜粋:
目覚ましが鳴ったとき、私は昨日の夜赤の他人が言っていた地獄について考えている。
私は彼のいう地獄を8:15から始めることに決める。
いつもは避ける銀杏道を今日は踏みつける。
そのにおいを吸い込むことによって、私は初めて今日の私が生きていることを知る。
数百九十九円の服の入荷を待つ主婦たちの横を通り過ぎる。
明るいアッシュのような女の子の髪を見て、数年後わたしは何色にしようかなあ、ピンクの次は青かな、とふくらませるが、数年後の私はそうしない。
今日は雨の日
満員電車はいつも私を置いていく。
走っても歩いても、私だけがいつも同じところに戻ってくる。
そして何度でも、満員電車は私を置いて走り去る。
私は同じところに戻ってくることを選択し、満員電車に置いていかれることを選択している。
本当はみんなも24時間とちょっとのサイクルなはずなのに、みんなは済ました顔して24時間のふりをしている。
次の満員電車に乗り込む。
息ができなくなる。
人が動く、人が動く。
PCR
全部知っている。
この問題も、あの問題も、あの会話も、もうしたことがある。
ここで理解があやふやになるところも、ここでわからなくなって諦めるところも、全部知っている。
知っていることを辿ることに何の意味があるのか?
いやない。
知っていることを辿ることにも、辿らないことにも意味なんてない。
時々いつもと違う男の子と会って、わたしは興味を持って話しかけるけれど、翌日から私から目を合わせなくなることも私は知っている。
pCr
箱の中に赤玉と白玉が入っている。
無作為に出して、戻して、出して、戻して、出して、戻しているうちに、
自分が本当はどっちの球が欲しかったのかを忘れたから箱ごとひっくり返して捨てる。
そして空いた箱にイギリスから持ってきた茶葉を入れて、紅茶にして飲みほす。
ごみ箱から玉を拾って上に向かって投げるが、カゴにはひとつも入らない。
大谷がホームランを打ち、友達が地名にRomajiを使いはじめ、電車内でおじさんが私の脚元に傘を落とすが、私は無視して入らない玉を真上に投げ続ける。