パッシブデザインとプランニング ~2階→1階リビングの選択 その1~
こんにちは。1985理事の米谷です。
前回に引き続き、設計者の視点から
パッシブデザインとプランニングについて考えてみようと思います。
今回のテーマは、リビングの位置と時間軸のデザインです。
■南側に建物がある場合はどうする?
敷地の南側に道や公園などの空地があり、
しかも十分な間口があれば、
少し工夫すると日射熱利用暖房に効率的な住宅が設計可能ですね。
しかし、設計対象がそのような恵まれた敷地ばかりではありません。また、住まい手の暮らし方に変化がありえます。
新築したとき、
世帯構成に変化があったとき、
住まい手が歳を重ねたとき、
多くのシーンで通用する最適解とはどんなものか?
少し視野を広げて考えておくと計画していく上で、
心丈夫だと思います。
図のような宅地で考えてみましょう。
南側接道している宅地Aは日射を十分に受けられそうですし、
少し方位が傾いていれば
北東側の宅地Bも配置次第で何とかなりそうです。
■2階の窓から1階リビングへ日射熱を得る選択
さて、問題は北側接道の宅地Cです。
たぶん、パッシブデザインをする多くの設計者は
南側の一部に吹き抜けを設けて
日当たりのよい2階の開口部から1階へ日射を導く計画をすると思います。
これはこれで、リビングの奥まで日差しを導ける快適な住宅になると思います。メリットは接地階がある1階にリビングを設けられることです。
日常的な外出時に便利だし、いざという時に避難もしやすいですね。
一方、吹抜けに面した開口部の操作や
メンテナンスに一定の配慮が必要なことや
吹抜けがあることによる上下階の音問題、
日の当たらない庭を眺めて生活することなど
デメリットもあります。
また、世帯人数が減っても
大きな気積を冷暖房しなくてはなりません。
■2階リビングという選択
「2階階リビング」という言葉には抵抗感がつきまとい、
建て主に提案をする際に躊躇してしまうつくり手の方は
多いのではないでしょうか?
北側接道の敷地であっても、
2階にリビングを設けて1階を個室(寝室)にすると、
日射利用暖房する上で、とても有利になります。
また、耐震の面からみても、
壁が多く必要な1階に個室を設け、
壁が少なくても済む2階に開放的にしたいリビングを
設けることはとても合理的です。
■暮らし方の変化を考える
35歳で新築した建て主が85歳まで暮らすことを想像してみましょう。
私が設計に携わった新築のケースでは、
ご夫婦と乳幼児お一人で入居されることが多かったように思います。
リフォームのケースでは、
お子さんが大学生~社会人になられた時点で、ご夫婦だけの生活を快適にすることが、リフォームのキッカケが多かったように思います。
このようなケースでは
上下階に広がっていた生活範囲を1階にまとめるようにしてきました。
大ざっぱな区分けですが、
35歳から85歳の50年の間のうち、
前半の25年は3~5人世帯でご夫婦は身体的に元気な時期で
後半の25年は1~2人世帯で身体的にはやや不安な時期を迎えます。
もちろん、後半は世帯によってさまざまなケースがあると思います。
子供さんが社会人になっても同居が続くケースや
親と同居されるケースや
子供さんの夫婦と2世帯で暮らすケースなどです。
■2階リビング⇒1階リビングの選択
新築した時点だけで考えると、
1階にリビングがある方が無難だと多くに人が感じることは確かでしょう。
しかし、北側接道のような宅地Cで
冬の間1階に十分な日照が得られないなら、
前半の25年は2階をリビングにして、
後半の25年は1階をリビングにして暮らせるように
最初から工夫しておくことは一定の合理性があると考えます。
ポイントは
2階から1階に移動できるように、
最小限のリフォームで可能なように
新築するときから準備をしておくことだと思います。
このあたりの具体例は、次回にお話ししようと思っています。
快適さに敏感なネコちゃんやワンコちゃんなら、
冬は2階で日向ぼっこするだろうし、
夏なら1階の玄関にある土間にひれ伏していることでしょう。
彼女たち?(彼ら)は
2階の床を穿って吹抜けを設けることや
衣類で寒さを凌ぐことはできませんが、
とても素直に快適な居場所を移動して過ごします。
パッシブデザイン的(状況を受け入れて、工夫する)で、
なんだかいい感じがしませんか?