起業家が疑うべき14の「常識的アドバイス」
10代で実際に起業するまでは「起業したい」と言うだけでいちいち否定されたり「むずかしいよ」と言われたり、さまざまなアドバイスをもらいましたが、その多くは(たいへん失礼かもしれませんが)今となっては「余計なお世話」と思えるものばかりでした。
それらのアドバイスは私のことを思った「善意のアドバイス」だから余計にやっかいなのですが、「人のアドバイスは素直に聞け」と言われてきた私は、それでも納得がいかず、どこか苦しんでいました。
基本的には、起業してそれなりに結果を残している人のアドバイスでさえも疑ってみるべきだと思います。
アインシュタインは、「常識とは、18歳までに身につけた偏見のコレクションのことをいう」と言ったそうです。
そんな、他人の偏見に人生を左右されたくはありません。
今、スタートアップにしてもスモールビジネスにしても、起業の成功率、企業生存率はかなり低いとされています。では、そんな低い世界の常識は無視したり、疑ってみることが成功なのかもしれません。
このnoteでは、私が実際に受けたアドバイスをはじめ、若手起業家へのよくありそうな、疑うべき「常識的アドバイス」に対しての私の考え方をまとめました。
ぜひ併せて読んでいただきたいnoteは
・「10代で私が起業した方法」
の2点です。
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1.「大学は行っておいた方がいい」
私は中卒(厳密には中卒後入った専門学校をすぐに中退)ですが、今のところそれが起業において不利になると感じたことはありません。もちろん大学に行ったことがないので、大学についてまともな意見を言える立場ではありません。
ちなみに、自分から「中卒」と言わないでおくと、頻繁に「大学生起業家」と勘違いされたりしますので、世間では若い起業家は大卒が当たり前ということなのかもしれません。
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2.「お酒が飲めなくても、同じ場所の空気を共有したら勉強になるから飲み会に来た方がいい」
お酒の有無にかかわらず、だれとどのように過ごすか、が大事だとは思います。居酒屋でさんざんアルバイトしてきた経験から、人が酔っ払ってする話でまともなものを聞いたことはないので、重要視するほどの価値はないと思います。
もちろん、どんな場所にいて、そこで勉強だと思って何かを吸収するか、ぼーっと過ごすかはその人の自由です。
ちなみに後述しますが、私は人に会っているほどの時間や気力の余裕もないですし、さほど楽しくもないのに「楽しかったです」「お話を聞けて有意義でした」というようなお世辞も器用に言えないので(言えますが、言いたくない)、人には極力会わないようにしています。
とにかく楽しく過ごせたら何か勉強になるだろう、という時間の使い方が好きな人は、そのようにするのもいいと思います。
今のままで満足している人のひまつぶしに、これから!まだまだ!と思っている人がつきあう必要もないと思います。
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3.「利益を出さなきゃビジネスじゃない」
利益を出さなくても、人を雇用したり、社会の役に立っていることもあるはずです。
もちろん事業を維持、発展させるためにも利益は出したいと思っていますが、初期の頃は利益など出さずに、その分の資金を事業の発展のスピードアップに振り分けるのもいいと思います(いざとなったら他人の資本を入れる覚悟はしておいてもいいかもしれませんが)。
株式を公開している企業のように、株価を気にして短期的に利益を上げなければならないビジネスばかりではないことも知って欲しいです。
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4.「実家や仕送りに頼っていてはだめだ」
論理的に頼ってはだめな理由を言える人は少なくて、その根拠は「頼っていたら本気になれない」というような精神論が多いと思います。使える物はできるだけ使って起業して、うまく行ってから恩を返す、という選択肢もあると思います。
これが「身内に頼らず社会で出会った人からお金を集めなさい」という意味でしたら、まともなアドバイスと言えるかもしれません。
ちなみに私の場合は、ルームシェアで生活費を抑えながら、アルバイトも起業につながるようなものに切り替えたりして過ごしていました。あまりお金がかからない事業で起業したので、それでも十分でした。
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5.「あの人は社長だからかわいがられておいた方がいいよ」
特定の人に気に入られないとやっていけないビジネスをするのは不安です。それに社長などどこにでもいるので、社長と言うだけでその人にかわいがられる必要はないと思います。
「ビジネスモデルによっては特定の人に嫌われたら仕事にならない」というケースがもしあるのならば、ときにはSNSなどを味方につけて、逆にその業界のそういう常識を打ち破ることを考えたらいいと思います。既得権益は利用するか、壊すのか、自分で決めたらいいと思います。
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6.「体力があるときは寝ないででも仕事した方がいい」
個人的には普通に寝た方がいいと思います。その方が頭がクリアになって、お客様に喜んでもらえるアイデアなども出やすくなると思います。
また、寝ないで仕事ができるくらいの単純な仕事であれば外注するのもいいですし、自分の時間の使い方を考え直した方がいいかもしれません。
私は、体力や気力が余っているような人しか起業できないとされるような世の中はつまらないと思っていて、省エネで事業を軌道に乗せて、どんどん拡大していきたいです。
体力や気力が余っている人しか起業できないのであれば、ハンディキャップを持っている人、時間がなくてがんばれない人などは起業を諦めなくてはならなくなると思います。
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7.「人脈は多い方がいいのでいろんな会に出た方がいい」
私には人脈がないのでわかりませんが、人脈がなくて困った経験もありません。SNSもありますし、人脈などほとんどなくてもいいと思います。たいていの人には、必要なときには会いに行けます。
自分が何か魅力的なビジョンを打ち出したり、しっかりと自己表現していけば、会えないと決めつけていた人にも会いやすくなると思います。
特定の産業の人や興味がある地域の人が集まる会などであれば、明確な目的を持って参加させていただくかもしれません。
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8.「人にはどんどん会う方がいい」
こういうアドバイスを真に受けたためか、人に会いすぎて疲れていて事業が進まない起業家が多いと想像しています。そもそも「人に会う方がいい」はグーグルもなかった時代に形成された常識だと思います。
私は人には極力会わないようにしています。会う必要を感じないですし、会うことで消費する体力や気力、たまるストレスなどを考えていくと会うことは必要だとは思えません。
もちろん、具体的目的を持った商談や取材は別ですが、事前に資料を送ったりして、会う時間がお互いにとって有益になるようにしているつもりです。
個人的には「ギブ」するふりして「テイク」ばかりしていく人が世の中には多すぎるという印象を持っています。そういう人を見分けられる能力も、私にはまだないと思いますし、そういう能力を身につける必要性も感じません。どう考えても会う方がいいと思える人はいるはずですので。
「人に会ったらいろんな価値観に出会えて視野が広がる」ことは否定しませんが、「人に会わなければいろんな価値観に出会えないので視野が広がらない」ではありません。
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9.「社会経験を積んでから起業した方がいい」
私はほとんど社会経験を積んでいな状態で起業しましたが、困ったことは特にありませんでした(今のところ?)。
また、社会経験は起業してから毎日積んでいるつもりですが、日々ものすごく勉強になっています。もちろん、企業に勤めた人でしかできない経験は私にはありませんが。
具体的に「社会経験とは?」と聞くと、「上司の期限の取り方」「ホウレンソウの仕方」「タクシーでの席順」など、本に書いてあるようなことばかりが返ってきますので、疑ってもいい常識だと思います。
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10.「失敗も経験した方が良いからすぐに起業したらいい」
失敗するのは簡単で、準備不足のまま、精神論で突っ走ったりしたらすぐにいつでも「失敗」できると思います。このようないつでもできる「安易な失敗」からは学べることも限られると思います。
もちろん私も細かい失敗をたくさんしています。その経験から考えてみると、失敗の質が大切だと思います。それよりもしっかり準備して、小さくてもいいので成功する経験の方が貴重なので、経験目的で慌てて起業しない方がいいと思います。
個人的には「すぐに起業」ではなく「すぐに起業の準備」ならいいと思います。
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11.「同じような仲間と一緒に勉強した方がいい」
仲間がいないので、仲間がいるメリットもデメリットもわかりません。お世話になっているWEBデザイナーさんや外部業者さんはいます。少なくとも私レベルのスモールな起業の場合、仲間や一緒に勉強することは不要なのではないかと思います。
人との絡みが増えるとやっかいごとが増えて、私にとって希少な資源である時間や体力、気力が奪われると思います。事業規模が大きくなったら一緒にやるメンバーは必要かもしれませんが。
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12.「お金を貯めてから起業した方が良い」
事業の内容によると思いますが、お金がなくても私のように「クラウドファンディング」をしたり、いろんな調達方法があります。ラーメン店がオープンするときに、お店の工事費が足りなくて、「食事券」を作って、知り合いに前払いで買ってもらい、その資金で工事を完成させた、という話を聞いたことがあります。
こういう私的なファンディングの方法もあります。工夫しだいでどうにかなるようになってきていると思います。
ただし、生活費6ヶ月分くらいはないと、起業後に「お金をすぐに稼ぐために、本来したくない安売りをして現金を集めなければいけない」というようなことになるのかもしれません。
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13.「信用が大切なので信用を大切にしなさい」
お金も「信用」も副産物なので、どこかに余っています。魅力的なビジョン、商品の企画書、設計図などをもって、それが余っている人から借りる発想があれば、十分だと思います。副産物であるお金や信用を目的にビジネスをすることは、個人的には興味を持てません。
そもそもお金は自分でコントロールしやすいので便利ですが、「信用」はいつも他人の持ち物です。他人の顔色をうかがって「私、信用されているかな?」と気にしながらビジネスをするのはストレスが貯まる気がします。
信用がなくても「そのビジョンに賭ける」という人も世の中には多いはずです。「信用がないこと」を理由に応援してくれないのは、銀行がお金を貸してくれないのと同じで、回収できるか、を考えている証拠だと思います(それが悪いということではありません)。
もちろん、お金も信用もあった方がいいことは否定しませんが、「なくてはならない」というものではないということです。
他人の評価や顔色、信用など無視して、「お客様の課題をどう解決するか」「そのために、商品を磨くか、どこで売るか」をしっかり考えて、実力、経験をつけていくことがいいと思います。
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14.「素直さがない人は成功できない」
素直であることよりも、何でも疑うことの方が圧倒的に大切だと思います。
「素直さ」は本来、関係性に基づく態度でありリアクションなので、もし相手があなたに「素直でない」態度をとっているのであれば、「あなたに対しては素直になれません」「リスペクトできないので素直に言うことを聞けません」ということになります。
つまり、「あいつは素直じゃない」と言っている人は「俺はリスペクトされる人間や関係性になっていない」と言っているのに近いと思います。
ラーメン店の店主がおいしくない冷えたラーメンを提供しておきながら「あの客はおいしそうに食べない。態度が悪い。素直じゃない」と言っているのと同じだと思います。
仮に「とにかく言われたとおりやってみたらわかるのに…」という親心からだとしても、やはり「素直になりなさい」は「自分より立場の低い人を思惑通りに操りたい」という考え方がベースにあるような気がします。
もちろん、情報を自分の色眼鏡で見ずに、一度はそのまま素直に聞く、受け取る、という意味の素直であれば、素直の方がでいいと思いますが、そういう意味でアドバイスされることは皆無だと思います。
素直になれることは、すばらしいことだと思います。いちいち疑う手間も省けます。私にも「この人がすすめてくれた本は疑わずに読んでみる」と決めている人がいますので、ありがたいことだと思います。
もう一度言いますが、素直はだれかに要求するべきものではなくて、結果として態度や関係性からくる態度のことです。
起業家が疑うべき「常識的アドバイス」が、今日もだれかの起業を断念させたり、起業の準備を始める決断を遅らせているとしたら、おおげさかもしれませんが、社会の損失だと思いますので、微力ながら個人的な意見として発言させていただきました。
これから起業しようと思っている人の参考になれば、また、周囲に起業志望の人がいてアドバイスする立場にある人の参考になりましたら幸いです。
フォーチュンファクトリー株式会社 代表取締役。新潟出身。東京在住、20才。「CAMPFIRE AWARD 2017【特別賞】灯火賞」受賞。「フォーチュンボックス」や自社ブランド「五感プレミアム」シリーズを販売中。