黒澤明監督の「羅生門」を見ました
わたしは、本はよく読みますが、映画は全然見ません。
そんなわたしがなぜひと昔前の、この「羅生門」という映画を見たかというと、制作の肥やしになるのではと思ったから。
動画の勉強をする中で、名映画を資料にしたものがあるのですが、そのなかで必ず出てくるのが黒澤明監督。
あまりにも名前が出てくるものだから、一度見てみたいと思いました。
好きな映画は?と聞かれて思い浮かぶのは、ハッピーフライト、スウィングガールズ、風立ちぬ、ボヘミアンラプソディーなど。
白黒映画で見たことがあるのは、唯一ローマの休日くらい。
とりあえず黒澤監督の作品を調べてみることにしました。
そのときの羅生門のあらすじがこちら
羅生門(1950年)
死んだ侍、傷心のその妻、侍夫婦を襲った暴漢、目撃者の4人が藪の中で起きた事件について全く異なる説明をする物語。
記事はこちら↓
https://amview.japan.usembassy.gov/japanese-directors-lasting-influence-on-american-cinema/
これを読んでわたしはワクワクしました。
私は6歳の時から相棒を見ているくらいミステリーが好きです。
なのであらすじを読んでどんな事件なのか、何があったのかを想像します。
ここからは、視聴後の感想です。
ストーリーにも触れているので、これから見る予定の方は戻ってください。
ネタバレオッケー、クロサワ映画大好きだ!という方は読み進めてください。
羅生門という映画は、
夫が盗賊に殺されるだけの、出来事だけ説明すればよくある話。
でもよくあるサスペンスとは違って、出来事が複雑に絡み合っているのではなく、登場人物全員がうそをついている。
わたしは、その内容がおそろしいと思いました。
このおそろしさは、視聴した直後ではなく、時間がたつにつれて増していく。
事件のきっかけは、山中で休んでいた盗賊の前を、ある夫婦が通りかかろうとしたとき、ひと筋の風が吹いたこと。
盗賊も、夫も、妻も、あのとき風が吹かなければ、普通の人間だったのに。
ただ風が吹いて、妻の美しい顔を盗賊が見てしまった。
盗賊は妻を自分の女にしようと、夫を縛り上げ、目の前で妻を手籠めにします。
ここから物語が歪みはじめます。
後に夫の変わり果てた姿が村人によって発見されるのですが、奉行所での証言が盗賊・妻・夫で大きく異なるのです。
(夫は殺害されていますが、巫女の力で魂が呼び出されます)
・盗賊の言い分
夫とは、女を賭けて正々堂々と決闘した。
・妻の言い分
盗賊に犯されて彼が去った後、縛られている夫を助けようと駆け寄ったが、軽蔑の眼差しで見られていることに気が付く。
これまで見たことがないくらい、恐ろしい顔だった。
妻は気絶し、目をさますと夫は死んでいた。
・夫の言い分
盗賊に犯された妻は、盗賊とともに生きるかわりに夫を殺害してくれと頼みこむ。
でもその要求に盗賊はあきれ果て、「妻を殺すか生かすか、お前が決めろ」と夫に言いはなつ。
それを聞いた妻は逃げ出し、盗賊も立ち去り、夫は短剣で自害する。
このようにすべての証言が食い違っているのです。
誰が嘘をついているのか、何が真実なのか。
この事件には目撃者がいました。
それは、夫の死体の第一発見者である村人。
・村人の言い分
女の悲鳴で現場にかけつけた。
茂みからかくれて様子を見てみると、盗賊が女に頭を下げて「自分の妻になってくれ」と言っている。
だが妻は応じず、夫の縄を解く。
そのとき妻は、はじめて夫の軽蔑の目線に気が付く。
「なぜ辱しめを受けておいてその場で自害しないのか」
女は激高する。
「あなたも何故この盗賊を殺さない。その上でわたしに死ねと言えばいいのに」
女は夫と盗賊が殺しあうように仕向け、自分は逃げ出す。
やがて盗賊は夫を殺し、その場を立ち去った。
ここで疑問がひとつ浮かびます。
なぜ村人は奉行所で出来事を正直に話さなかったのか。
それは、現場にあった高価な短剣を村人が持ち去っていたから。
村人も自分の身を守るために、見ていなかったと嘘をついていたのです。
この映画を見て感じたのは、自分を守るためのウソ、とかそんな一言では済ませられない醜さ。
そして、おそろしいのは、自分のなかにもそういう一面が眠っていると思うから。
全ての登場人物に自分を重ねて理解してしまうことができたから。
黒澤監督がすごいなとおもったのは、最後に希望を見せてくれたことです。
村人が、捨てられた赤子をだっこしようとしたとき、法師は思わず怒ります。
「やめろ、この子から肌着までとる気か」
「・・・。うちは子供が6人いる。でも6人も7人もいっしょだ」
村人は、嘘をついたことを後悔している?恥じている?愚かだとおもっている?
とにかく「自分でも自分のことがよくわからねえ」といった村人。
人間の裏表が表されてるんじゃないかと思いました。
映画は、村人が赤子をひきとり、法師に頭を下げ羅生門を立ち去るところで終わります。
人間の心をありのまま描いた、すばらしい映画でした。
原作は芥川龍之介となっていましたが、老婆がでてきて下手人に身ぐるみをはがされるくらいしか覚えていないので、そちらも読んでみようと思います。
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