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【観劇】ミュージカル 『悪ノ娘』 〜原作ファン編〜

はじめに

3月某日の観劇日和

 春の訪れを感じるような陽射しの中、私は山手線に揺られて新宿へと向かった。少々苦手な土地で、自ら赴くことは滅多に無いのだが、今回ばかりは仕方がない。何しろ芝居を観に行くのだから。

 観劇したのはこの作品。
 劇場を出た後も、少し目が腫れているような感覚が残っていた。久しぶりに芝居に泣かされた気がする(元々感動しても涙を流すことは滅多にないタイプ)。
 感想を書こうと衝動的に筆を取った。思ったこと感じたことをそのままに書いていこうと思うので、まとまっていないだろう。許せ。


 原作ファンとしても、演劇バカとしても、大満足の作品だったのでひたすらに語りたいのだ。
 原作ファン編演劇バカ編の2部構成にさせていただく。2つの視点から作品を語るというレアケースだ。私がそれくらい、演劇などのエンターテイメントに染まっているということだが……。表も裏も知ると楽しいぞ?(笑)

 では、まずは原作ファンとしての感想をどうぞ!



観劇作品紹介

あらすじ

 王国を治める王女「リリアンヌ」
 贅沢の限りを尽くし、国民に重税を課す彼女の「悪政」に民衆は苦しめられていた。やがて彼女の幼き嫉妬心が隣国を滅ぼすに至り、ついに民衆は武器を手に王宮を取り囲む!
 王女の傍らにいつもいた召使いの「アレン」その時、彼が取った恐るべき行動とは!?

「いったいどれほど尽くせば、貴方に振り向いてもらえるのだろう?」

 滅びゆく王国と運命に翻弄された姉弟の「絆」の物語。

公式サイトより引用


公演ポスター
ポスター裏よりキャスト紹介

 __(アンダーバー)さんがいることに、歌い手オタクの私は沸いたのは別の話(笑)。前回の公演から継続のキャストと、今回から新しく入ったキャストがいるらしい。美男美女いっぱいだし、キャラクターの再現度も高くてもう好きです。


原作紹介

悪ノP (mothy) のボカロ楽曲

 このミュージカルは、原作楽曲のうち「悪ノ娘」「悪ノ召使」「リグレットメッセージ」「白ノ娘」からのストーリーがまとめられている。
 それぞれの楽曲についても語りたいところだが、長くなるので私からは言わないことにする。とりあえず聴いてほしい。夜中に1人で聴いたら絶対泣く。私がそうだった。

 ”悪い王女が治めていた国が滅びる”というエピソードを、王女(悪ノ娘)、召使(悪ノ召使)、隣国の少女(白ノ娘)の視点から描かれている。そして、「リグレットメッセージ」はエピローグに位置付けられるような内容になっている。

 悪人なりの心理や正義を感じられて、奥が深い。まずは「悪ノ娘」「悪ノ召使」を聴いて欲しい。


ミュージカル感想

原作の雰囲気と奥深さが舞台の上に……

 リリアンヌの傲慢で孤独な感じが、セリフだけでなく些細な仕草からもよく伝わった。あの衣装に着られていない感じ(振り回されていない感じ?)がすごいなと思う。ミュージカルだから歌ったり踊ったり戦ったり、すごく動き回ってたんだけど歌唱がブレないのホントやばい。歌に引き込まれるって感覚だった。

 もう1人の主人公・アレンは王女の為にと悪に染まっていく感じが切ないくらいに出ていた。本当は絶対いい子なのに!って冒頭にあった、メイドたちとの駆け引きを思い出してまた泣く。人間として道を踏み外していく雰囲気が、切なくて辛い。その演技ができるのがホントすごい。

 ※衣装のすごさも語りたいので、それは演劇バカ編で……。

 魔道士・エルルカのセリフで「歯車が回ってしまった」的なものがあったが、まさにその通り!
 偶然と必然が絡み合う感じ、運命が動いている感じ、誰にも止められない感じが舞台上にできあがっていた。歴史という物語を再現しているっていうのが割としっくりくるのかもしれない。


モデルボカロキャラの個性が出てるのマジ好き

 キャラクターデザインのモデルは、様々なボーカロイドキャラクターたちである。
 リリアンヌとアレンは、鏡音リンと鏡音レン。赤き鎧の女剣士・ジェルメイヌは、MEIKO。青の国の王子・カイルは、KAITO。緑の国の少女・ミカエラは、初音ミク。などなど、このような具合になっている。

 初音ミクといえば、長ネギだ。
 ミカエラの歌唱シーンで長ネギをゴリ押していた時は腹を抱えて笑った。クラリスが必死にツッコミを入れていたが、全く同じ気持ちだった。大量の長ネギは謎すぎる(笑)。

 ジェルメイヌが酒豪という設定も、MEIKOを思わせる感じがあってニヤけたものだ。
 原曲ファン、ボカロファンも巻き込んでくる勢いが面白いところで、原作を生かす強みに感じる。

 このような小ネタのコミカルさが、作品の暗い部分をより引き出しているのだと思う。


個人的に好きだったシーン

 ネタバレにならない範囲で話そう。原作リスペクトのシーンはもちろん、キャラクターが生き生きしている感じが私は1番好きだ。

 さて、最も印象的で泣いたシーンは、物語の終盤。山場であるリリアンヌとアレンのシーン。
 攻め込まれた城で追い詰められた2人。この時、アレンが意を決したようにある提案をする。提案を受け入れられないリリアンヌに向かって、アレンは『××××』と言う(気になる方は「悪ノ召使」を聴いてくれ)。
 セリフの言い方に、鳥肌と涙が出た。段々と悪人へ落ちていくアレンの本音のようにも聞こえたし、残った最後の善意のようにも聞こえた。もう純粋な男の子はいないのだと感じたし、やや残酷とも取れる優しさだったもあった。
 バットエンドだと原曲を聴いて思っていたが、アレンにとってはメリーバッドエンドなのかもしれないと考えが改まった瞬間である。

 歌唱シーンで好きなのは、原曲である4曲がそれぞれ歌われた時。
 ボカロでは感じ取れないような、細やかな感情変化があるし、ミュージカルならではのアレンジもあって好きだった。原作がちゃんと残っているのが何より嬉しい。
 若干原作に触れるが、「悪ノ召使」でレンとリンが同時に歌っている部分がある。それを舞台上で再現されていることに感動した。

 コミカルなシーンも多かった。
 俳優さんたちのアドリブもあるだろうけど、ネタシーンとして好きなのは、王女の愛馬・ジョセフィーヌが他の馬たちと絡んで歌っているところ。"王女のお気に入り"ということで他の馬たちにマウントを取っているのが、主人そっくりで笑ってしまった。
 __(アンダーバー)さんたちの腰振りや足運びがあまりにも馬だったので、驚きと感心でいっぱいだった。前世は馬だったのだろうかと、真剣に考えてしまったくらいに……。

 バックボーン(キャラクターの背景)がしっかりしているからこそ、全てのキャラクターに行動の理由がある。最後に黒幕が明かされたときには、予感が当たったことの衝撃と、俳優の演技に鳥肌が立ったものだ。
 ミステリードラマでもなかなか味わえない感情。この臨場感がまた、私を舞台の沼に引き摺り込むのだ。


一時休戦

軽くまとめ

 オタクな語りが止まらない(笑)。
 こうして文章上に整理してまとめているが、口頭だったらブレーキは効かないと思う。自分の感動や考察を思いつくがままに喋るだろう。

 とりあえずこれだけは言える。原作ファンも大満足の作品だった。ダークな世界観と正義がそのまま再現されていたのは、本当に嬉しかったし感動した。

 さて、次は演劇バカな視点からこの作品を語ろうじゃあないか。

/ Foルて


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