R6予備試験 労働法 再現答案

第1  設問1
1 X組合は、Y学園による会議室の使用拒否が支配介入(労働組合法(以下「労組法」という)7条3号前段)に当たると主張して、労働委員会に対してポスト・ノーティス命令、会議室の使用請求を申し立てることが考えられる(労組法27条1項)。
2 では、会議室の使用拒否が支配介入に当たるか。
(1)この点について、たとえ組合活動であるとしても、そのことから当然に使用者の施設を利用できるわけではなく、施設の利用について使用者の承諾がない場合は、使用者が承諾しないことが不当であると認められる特段の事情がない限り、支配介入は成立しないと解する。
(2)本件では、Y学園は、教職員がその職務外の活動により学校施設を使用する場合は、本件規定に基づき、希望する日の2週間前までに学校に対し許可申請をし、許可を得なければならないこととなっていた。たしかに実際は教職員の約30%が加入する労働組合であるX組合が会議室を使用する場合、その直前に管理職である教頭に口頭でその旨を告知すれば、学校運営上の具体的な支障が生じない限りその使用を認める取扱いが事実上行われてきたが、これをもってY学園の承諾があったということはできない(判例)。
 また、令和5年4月に新たに学校長に就任したAが、上記取扱いによってX組合だけが事実上自由に会議室を使用することができる状態になっていることは不公平であると考え、X組合についても、会議室の使用につき本件規定に従った取り扱いをするように指示したのであり、Zが主張するように、X組合が当時、Y学園との間で部活動の顧問を担当する教諭の待遇改善を議題とする団体交渉を行なっており、主張が激しく対立する状況にあったことから拒否したと断定することはできない。
 さらに、たしかに他に上記日程に会議室の使用を予定している者がいなかったから取扱いを認めるべきといえなくはないが、X組合も本件規定に基づき2週間前に許可申請をして許可を得れば会議室を使用できるのであり、2週間前に許可申請することがX組合の活動を著しく困難にするともいえない。よってY学園が会議室の使用を承諾しないことが不当であると認められる特段の事情があるとはいえない。
3 したがって、支配介入は成立せず、申し立ては認められない。

第2  設問2
1(1)まず、戒告処分が有効といえるためには、就業規則などに懲戒処分について定める合理的な規定がなければならない(「懲戒することができる場合」(労働契約法(以下略)15条)。
(2)本件では、Y学園教職員就業規則に懲戒処分についての定めがあり、弁解の機会を与えるなど手続きの公平さも認められるため、合理的な規定があるといえる(「懲戒することができる場合」(15条))。
2 次に、Zに懲戒処分該当性が認められるか。
本件で、Zは職員室内でビラ配布をしており、Zもそれを認めているから、「印刷物等の・・・配布」(39条5項)をしたといえ、懲戒処分該当性が認められる。
3 もっとも、懲戒が「客観的に合理的な理由を欠き」「社会通念上相当であると認められない」場合に当たるとして、「濫用」により無効とならないか。
(1)この点についてみるに、たしかにZが配ったのはA4サイズの紙1枚のみであり、また、職員室内において、生徒がいないことを確認した上で配布し、離席している教職員に対しては裏返しに置くという方法で行っており、温厚な態様で行っているといえる。
また、ビラ配布に要した時間も10分のみである。しかし、一般にビラ配布を禁止する趣旨は、ビラ配布によって組織内の対立を見せないようにするためであるから、たとえ温厚な態様であっても、懲戒することに「客観的に合理的な理由」がないとはいえない。
(2)また、Zに対して行ったのは、懲戒の中でも一番軽い戒告であるから、「社会通念上相当である」といえる。
(3)よって、濫用により無効とならない。
4 したがって、Zに対する戒告処分は有効である。
                              以上

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