R6予備試験 行政法 再現答案

第1 設問1
1 Xに、本件訴訟1における原告適格(行政事件訴訟法(以下略)9条1項)が認められるか。
2(1)この点について、「法律上の利益を有する者」とは、当該処分によって自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は侵害されるおそれのある者をいうと解する。
(2)Xは、本件地域内にある甲土地において本件住宅を建築してそこで居住するとともに、本件畑を耕作し根菜類を栽培している者であり、本件畑で育てた野菜の販売により収入を得ることによって生活を営んできた。そうだとすると、Xは甲土地で平穏に耕作を営む権利を有するといえる。そして、本件処分によって令和6年5月頃から、本件畑は付近の田に入水がされた際に冠水するようになった。また、本件畑の南側部分の排水障害は著しく、同部分では常に水が溜まり、根菜類の栽培ができない状態になったのであるから、甲土地で平穏に耕作を営む権利が侵害されたといえる。
(3)よって、原告適格が認められる。
3 (1)また、原告適格が認められる「法律上保護された利益」は、当該処分を定めた行政法規が、その利益をおよそ一般の公益にとどめず、それを個々人の具体的利益としてまで保護する趣旨であると解される場合に認められると解する。
(2)これを本件についてみるに、農地法5条2項4号は「農業用用排水施設の有する機能に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合」には許可をすることができないとしており、近隣で農業を営む者らに生ずる支障を考えているため、行政法規が、個々人の具体的利益としてまで保護する趣旨であるといえる。よって、Xは法律上保護された利益を有するものであり、それが侵害されているから、原告適格が認められる。
(3)なお、同年6月の時点において本件住宅に関する損害は発生していないが、Xは、本件住宅の床下が浸水による被害を受けるおそれもあると考えており、Xの所有権が侵害されるおそれがあるともいえるため、この点でも原告適格が認められる。
4 Xは、このような主張をすべきである。
第2 設問2(1)
1 国家賠償法1条1項の「違法」とは、行政事件訴訟法上の違法とは異なり、単なる違法を指すのではなく、公務員がその職務について故意又は重大な過失によって注意義務に反することをいうと解する。公務員に過度な負担を負わせることを避けるためである。また、このように考えると、「違法」が認められた場合は当然に「過失」も認められると解する。
2 たしかに、Y県の担当者DはB及びCに対し、本件畑の排水に支障を生じさせないための指導をし、Bは丙土地上に本件畑の南西角から西に向かう水路を設けた。しかしこの水路は排水に十分な断面が取られておらず、勾配も十分なものではなかった。にもかかわらず、このような争いの担当者であるはずのDは、あろうことか目視による短時間の確認を行なっただけでBは指導に従って措置をとったと判断しており、本件処分をしている。よって、重過失によって注意義務に反したといえる。
3 したがって、国家賠償法1条1項の「違法」「過失」が認められるとXは主張すべきである。
第3 設問2(2)
1 37条の2第1項の要件について
(1)まず、Y県はCに対する本件処分を取り消すべきであるにもかかわらずこれがされないから「第3条6項第1号に揚げる場合」に当たる。
(2)また、「一定の処分がされないことにより重大な損害が生ずるおそれ」があるかどうかについてみるに、本件畑は、付近の田に入水がされた際に冠水するようになっており、根菜類の栽培ができない状態になっているから、本件畑で育てた野菜の販売によって生計を立てているXは、生活できないようになる可能性があり、一旦無職になったら回復も困難であるから重大な損害が認められる。
(3)さらに、本件畑に盛土をしてかさ上げする工事を行う場合、120万円近くかかるため、「その損害を避けるためはに適切な方法がない」といえる。
(4)よって、要件が充足される。
2 農地法第51条第1項の要件について
(1)Y県の担当者DはB及びCに対し、本件畑の排水に支障を生じさせないための指導をし、Bは丙土地上に本件畑の南西角から西に向かう水路を設けたが、この水路は排水に十分な断面が取られておらず、勾配も十分なものではなかったため、「農業用用排水施設の有する機能に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合」にあたり、本来許可の要件を満たさない。にもかかわらず許可を得ているため「第5条第1項の規定に違反した者」(農地法51条1項1号)に当たる。
(2)よって、要件が充足される。
3 Xはこのように主張すべきである。
                              以上

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