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放送作家の先輩に番組企画案の極意を教わりました。

こんにちは!
入社1年目の鈴木です。
私はテレビ番組のリサーチ会社フォーミュレーションの関連会社の放送作家集団「ライトクリップ」の社員で、フォーミュレーション調査1部で放送作家に必要なリサーチ業務を行っております!

鈴木良治(すずき りょうじ)
2000年、韓国ソウル市生まれ。東京都荒川区育ち。エンタメ好きはだいたい友達。2023年に青山学院大学を卒業しライトクリップに入社。面白いことが大好き。最近髪を染めたのですが、その日にサウナに入ってしまい染料が全部落ちてしまいました。

放送作家には、視聴者やリスナーの興味を引きつける発想力、その発想を番組として成立させる企画力、プロデューサーやディレクターを納得させるコミュニケーション力、その企画を台本の中に落とし込む文章力などが求められます。

特に、テレビ局や制作会社に提出する番組企画書は、番組の面白さを左右するものであるため、才能が認められれば仕事を依頼されることが増えて「売れっ子放送作家」として活躍できます。


ライトクリップ紹介ページ

そこで今回は、「売れっ子作家」を目指す私と、同じく1部の斎藤が、実際にテレビで活躍されている放送作家の先輩にテレビ番組の企画書を提出し、「どういう企画が求められているのか」や「自分の企画を通す極意」などを教えていただきました。


今回、企画書を添削していただいた辻 健一さん
おはスタ・正解のないクイズ・おかべろ・バチェラー&バチェロレッテなど多数の番組構成を担当

※辻談
「(仕事でなかなか上手くいかずストレスが溜まっていることもあって…)あえて厳しくダメ出ししております!覚悟してください!」


企画の考え方や見方


辻:
「まぁね…」とスルーされたり、せっかく企画案を考え出しているのに逆にダメ出し…先輩作家の出す企画案と自分が出す企画案の差がわからない…

これは若手作家が陥りやすいところです。

しかし、新企画のネタ出しは、作家業のすべての始まりともなる重要なものであるので、このネタ出しで、自分の存在をアピールしておきたい所!

そんな時に、以下のチェック項目を今一度見返すことで、自身の出すネタをレベルアップ!

①興味を引く導入がある、今の流行り
・やはり、なぜ今これをやるべきなのかの説得力が必要!
・時代が求めている企画は自ずと視聴率につながる
 
②画チカラ、見ごたえのあるシーンが撮れそう
・番組としてずっと同じ画が続くものは内容の前に見てられない!
・どんどんと引きのあるシーンが出てきそうと思わせられるか?
 
③具体的なネタが有る、ネタの埋蔵量がある
・特番一発では、誰も得しない…果たしてレギュラーでできるのか…?
 
④そんなネタをどうするかの番組ならではのアイデア&システムがある
・新しいネタなんてそうそうない。ネタをどうやって新しく見せていくのか?
 
⑤企画に出口がある
・番組の〆がしっかりと想像できる。見た後に気持ちいいもの
 
⑥企画が矛盾していないか、一番面白く見せる方法になっているか
・導入が面白いのに中身がその面白さを引き出してなかったり…
・もっと面白く見せられる方法が他にあるのでは?
 
⑦タレントの特性が活かせる
・MCはもちろん、パネラー、レポーターもこんな人がやると面白い!と想像できる?

企画提出の際の注意点

辻:
実戦(制作会社や局のPを交えての企画会議)を想定すると、ネタ案が多すぎるのも実はマイナスです!
1人のためにそんな時間をかけてられないし、それぞれの企画が雑に見られてしまいます!

多くても大体1~2ページで5ネタ以内ぐらいが通常企画会議の相場だと思います。

「自信のある企画を、その魅力が100%伝わるように、かつ読みやすいようにシンプルに、具体例を交えて」
を心がけてください!

実際の会議では、これらのアイデアを元にどうブラッシュアップすると面白い番組になるかの話し合いをすべきで、それが出来ている会議は良い会議になります!



以上を踏まえて、辻さんに企画案を添削して頂きました。

「『企画案の考え方』『提出の際の注意点』と言う割には意外と普通のことを言っているだけじゃないか」と私は思うんです。

結構自信のある企画案が出せたのではないかと自負しているのですが、
果たして辻さん目線ではどう見えているのでしょうか。

【①興味を引く導入がある、今の流行り】

鈴木が提出した企画「テナントセレクション」

辻:
まず、タイトルの魅力が薄い!企画案が刺さるかどうかは、タイトルで半分決まります!
逆に面白いタイトルが考えつかない企画は、企画内容も面白くない可能性ありです!いたって普通の内容の企画でも、タイトル面白いだけで通ることもあるぐらいです。
また、そもそも閑古鳥が鳴くような所に出店したい企業はあるのでしょうか?
テレビで取り上げます、芸能人が絡みますという付加価値以外に、企画として魅力的なところが無いように感じます。企業がアンバサダーとして芸能人を雇う方が効率的だと思います。そして、せっかく出店したいと言ってくれている企業に辛辣なダメ出しをするでしょうか?番組もタレントも見え方が悪くなってしまいます。
この番組をやる意義がどれだけあるのかが分かりません。

斎藤の企画「ココを変えれば美味くなる!ボツ飯大改造」

辻:
諸事情により夜に出せなかったメニューを世に出すのはかなりハードル高いです!
ジョブチューンや@@@総選挙など企業系の番組はちらほらありますが、テレビ自体がスポンサーからお金をもらって作っているものなので、裏側で非常に大変な調整を行ってようやく作っているものとなります。
この企画を通すには、制作Pではなく、局の営業部署から提出して貰う必要があります…

【②画チカラ、見ごたえがあるシーンが撮れそう】

鈴木の企画「『好き』と100回言わせて」

辻:
「好き」と100回言わせるロケに何時間かかって、それをオンエアでどれぐらいの尺見ていられるでしょうか?
好きと言うかどうかだけの引張では5分も見てたらしんどくなっちゃうかもしれないです…
100回言わないと終わらせられないが、その目処が全くつかないです…
結局得られる教訓は「相手の好きなことをやりましょう」だけになると、それって超普通のことではないでしょうか?
 

【③具体的なネタが有る、ネタの埋蔵量がある】

鈴木の企画「聞いたことない遊びをイメージだけで成立させよう」

辻:
聞いたことない遊びの具体例を書いておかないと、想像を膨らませられません。そもそも丁度よい聞いたことない遊びって結構数多くあるものなのでしょうか?
タレントがゲームを成立させないといけないモチベーションが薄く、なんのためにこんなことをやるのかが視聴者に伝わらないと、興味を持ってくれません。
 例えば、NHKの『妄想ニホン料理』は上記課題をクリアしたとても良い企画だと思います。

鈴木の企画「同音異義GO!」

辻:
この文章だけではVTR内容が見えてきません!
なかなか狭い所をついた企画ですが、もっと見せ方などを斬新にすればNHKには提出できるかもしれないです。

【④そのネタをどうするのかの番組ならではのアイデア&システムがある】

鈴木の企画「友戯王」

辻:
この番組企画案を見るプロデューサーは遊戯王を全く知らない人が大半。
実際に番組を見せるときにも遊戯王の説明がマストになるが、そうやって説明するぐらいなら独自ゲームルールを作ったほうがメリット多いです。
友達の凄さを競うのに、カード化した時の強さを自分で決めたり、番組側に調整されたりするのは番組の魅力を削ることになってしまいます。
カード化は年収とかSNSフォロワー数などの客観的公平に出来るルールが必要です。

【⑤企画に出口がある】

斎藤の企画
「~かまいたち山内presents~至れり尽くせりドッペルゲンガー!」

辻:
顔が似ているだけでどこまで面白くなるのでしょうか?出オチで終わる危険性があります。
また、山内さんがこれをやるモチベーションは何でしょうか?誰かからの無茶振りでの罰ゲーム企画とかであれば成立するかもですが、80万円自腹切ってどういうメリットがありますか?
似ていることをもっとうまく利用した展開を考えていくと“企画”として見えてくると思います!

【⑥企画が矛盾してないか、1番面白く見せる方法になっているか】

鈴木の企画「日常アフレコ」

辻:
なぜ声優さんが勝者を決める必要があるのでしょうか?個人の好みを超える納得感はこれで出せますか?
自分で撮ってきた素材に対してのアフレコネタ作りはハードルが上がるので、バラエティとしては笑いづらいです。
いきなり見せられて瞬間的にアフレコするなどの無茶振り感が笑いやすくなるポイントです。

【⑦タレントの特性が活かせる】

鈴木の企画「恋愛代理戦争」

辻:
タイトルが薄いです!
また、師弟を取り入れるのは良いですが、その結果普通の恋愛ドキュメンタリーとどんな違う展開が見られるのでしょうか?
師匠側は何かリスクを負うなどの、師弟制のシステムのさらなる具体化も必要です。
ドキュメント企画はとにかく出演者が本気にならざるを得ない仕掛けをしっかりと書かないと机上の空論で終わってしまいます。
そして、類似番組出演者のキャスティングは注意が必要です。特にシリーズ化している人気番組MCなどは、他類似番組にホイホイ出る不義理をしちゃうとモメる可能性が大きいです。
レギュラー化を目指すならばなおさらキャスティングは独自路線が有利で、そのためには常にアンテナを張って新しい人気者を探しておく必要あります。

まとめ

結果、想像以上に容赦ないダメ出しをボコボコにもらってダウン寸前です…

言われてみると普通のことでも、実際にやってみると難しいことって多いですよね…

テレビ業界で生きていく放送作家にとって面白い企画書が書けることは、自分にとって大きくプラスに働くというので、上記の事柄を意識しながら、めげずにたくさんの企画書を書いていきたいと思います!

エンタメ業界で働く方々、特に放送作家を目指している方々は、企画書を書く際にぜひこの記事を参考にしていただければ幸いです!(文・鈴木良治)


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