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【認識中国】中国を知るワード『和諧』

ネットから生まれた中国のトレンド用語の一つに、「和諧」というものがある。

「和諧」という言葉は『史記』など中国の古典にも見受けられる古い表現で、日本でもなんとあの聖徳太子の「憲法十七条」にも出てくる。

十五曰、背私向公、是臣之道矣。凡人有私必有恨。有憾必非同、非同則以私妨公。憾起則違制害法。故初章云、上下和諧、其亦是情歟。
(十五に曰く、私を背きて公に向くは、是臣が道なり。およそ人、私あるときはかならず恨みあり。憾(うら)みあるときはかならず同(ととのお)らず。同らざるときは私をもって公を防ぐ。憾みおこるときは制に違い、法を害(やぶ)る。ゆえに初めの章に云う。上下和諧せよ、と。それまたこの情(こころ)か)

十七条憲法 より

それから千数百年後、「和諧」は突然この世に姿を現す。


胡錦濤中国前国家主席
胡錦濤中国前国家主席

中国の胡錦濤前総書記が掲げたスローガンが「和諧世界」であった。詳しく解説するとキリがないので省略するが、「和諧(調和)」の言葉にふさわしい安定した社会を築こうということである。

中国新幹線

また、鉄道マニアでは「和諧」と聞くと、中国新幹線の「和諧号」を連想する人もいるだろう。
胡錦濤時代に狼煙があがった中国新幹線、それに「和諧」をつけるほど当時の中国の安定成長ぶりが垣間見えるだろう。

そして、2013年からの習近平政権へ。

まるで胡錦濤の「和諧」を全否定するかの如き「戦狼」で各国とのひずみを生み、国内も人民への締め付けが年々厳しくなってきているが、その中で「和諧」は別の意味へと歩き出してしまった。
中国のネット社会で、唐突に「和諧」が使われ始めたのだ。

中国ではネットの書き込みは「ネット警察」と呼ばれる官民の目が光り、検閲が行われていることは周知の事実である。
国内でのNGワードは年々増え続け、特に「政治敏感」と呼ばれる政治的な用語への違反はかなり厳しい。基本は3アウト制で1回目は書き込み削除、2回目は書き込み(または動画アップロード)制限、3回目で垢BANである。当然、1回で一発レッドカードの垢BANとなることも多い。

そんな中、当局にとって都合の悪い書き込みは「調和」される、つまり「和諧」が隠語として使われるようになった。
一般的には「ネットの書き込み削除」を意味し、受け身で「被和諧了」(「和諧」された)という表現があちこちで見られる。

また、「和諧」と全く同じ発音の「河蟹」もよく使われる。意味は読んで字の如くそのままであるが、こちらも「被河蟹了」のように使用頻度が高い。

こうして中国のネット社会の隠語を見ていくと、向こうの社会の闇が見えてくるのである。

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