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ちまきに挑む② ~甘いorしょっぱい!?ちまきの世界は奥深い~


長男の一言で、再度ちまき作りがスタート…


 前回の記事の通り、 なんとか一つめのちまきを作り終えた私に、会場にやってきた長男が容赦なく言う。
「ねえ、もっとたくさん作ってよ」。
「え」と言ってしまったが、確かに、ちまきには見えないこの物体だけ作って終わるのは悔しい。

 4歳の長男が自ら作るには難易度が高いため、長男には笹の葉を2枚選んだり、ナツメや米を入れたりしてもらい、私はひたすら、円錐形と三角錐に向き合う。ちまきを結ぶ紐が手元になく、長男に「あそこにいるおばちゃんに紐をもらってきて」と依頼した。
長男は「でも中国語で紐ってなんて言うかわからない。知ってる?」。
「・・・ごめん、それは、私も知らない」。
でも、三角錐にしたちまきがくずれないようにキープする必要があり、スマホを取り出して翻訳アプリを操作するわけにはいかない。
「両手のお父さん指とお母さん指で右と左にぴーって引っ張るようなしぐさをしたら、きっとわかってくれるよ。だから行っておいで」。
 そう話すと、長男は、紐を持っている女性のもとへ行き、後方に立ってもじもじしながら、話す機会をうかがっている。
 
 こういう時、どうするのが正解なのだろう。もしかしたら、長男の隣についていた方がいいのかもしれない。でも、例え身ぶり手ぶりであっても、自分とは違う言語を使う相手に伝えたいことが伝わるなら、それは彼にとってプラスの経験になるはずだ。
 私はそんなことを考えながら、長男と一緒に、20分以上かけて5個のちまきを作った。

ちまきの材料が並ぶテーブルを園児がぐるりと囲む。右下のボーダーTシャツが私の長男。

思い切って尋ねてみると…広がるちまきの世界

 
 笹の葉をすべて使いきってしまったため、私は片付けを手伝いながら、スマホの翻訳アプリを起動した。隣には、最初に手本を見せてくれた園児の母親がいる。ちょっと恥ずかしいけれど、思い切って聞くしかない。
「さっき、あなたはとても上手にちまきを作っていました。いつ、誰から習ったのですか」
すると女性は、ゆっくりとした英語で答えてくれた。
「6歳の時に、祖母から習いました」。

英語なら、中国語よりはなんとかなる。それから簡単な英語で会話を続け、私は彼女から、こんなことを聞いた。


  • 5,6歳ごろにちまきの作り方を祖母や母から習った。

  • 端午節の時期になると、家族皆で作る。でも男性は興味がないことが多く、女性が作る場合が多い。

  • 中国国内でも、地域によってちまきにいれる具材が異なる。北部では甘いちまきで、ナツメやあんを入れることが多い。南部ではしょっぱいちまきで、豚肉や卵黄を入れる。甘いちまきとしょっぱいちまき、両方を食べる地域もある。

  • 作り方のポイントは、もち米をたっぷり入れ、包む時には笹の葉の端を中に折り込むようにすること。そうすればだいたい大丈夫。


彼女が見せてくれた「しょっぱいちまき」の写真を撮影した。確かに、具材にはしっかりと味がつけてありそうだ。

 肉の入ったちまきは日本でも食べたことはあったが、卵黄入りは初耳だ。 夫にこの話をすると、「しょっぱい系は食事として食べやすいけれど、甘い系は食事感覚で食べるにはちょっと・・・」と言う。地域だけではなく、個人によっても好みは分かれそうだ。

ネットで調べると、出てくる出てくる!「甘い」「しょっぱい」の分布図に、現代風ちまきも

 こうしたことをわかりやすく書いたものはないか、と検索してみると、中国関連の書籍などを手掛ける出版社「愛言社」のブログを見つけた。

 このブログによると、やはり、中国国内でも地域によって、ちまきに「甘い系」「しょっぱい系」の違いがあるようだ。そして、「甘い」と「しょっぱい」の分布図も掲載されている。
 そして当該記事の末尾に書かれているのは、「現代風のユニークな粽」があるということだ。日本の水まんじゅうにも似たちまきから、重曹を使ってゼリーに似た食感になったちまきまであるらしい。それに、スターバックスからも一風変わった現代風のちまきが出ているとのこと・・・。
 確かに、5月下旬、スターバックスのレジ上のメニュー表示で見かけたことがあった。日本では見かけないカラフルな三角錐の写真に「なんだろうこのスイーツ」とは思ったが、まさかちまきだったとは・・・。

 日本では、正月に食べるお雑煮の餅が「角餅」か「丸餅」か、地域によって異なっているというが、どこかそれに似た面白さがある。現代風のユニークなちまきは、ちまきの文化を若い世代にも浸透させたい狙いがあるのだろうか…。ちまきの世界がこんなに奥深いとは思ってもみなかった。
 とりあえず、来年必ず、スターバックスのちまきを購入して、ここに感想を記そう。もう、今から楽しみだ。