変えられない状況に対して、人が出来ることとは。アニメ『平家物語』
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり…かの有名なフレーズから始まる、平家の栄華と没落を中心に描いた軍記物語。アニメ『平家物語』に興味を持ったのは、アニメのロゴデザインを手がけたデザイナー・芥陽子さんがきっかけでした。
モリサワフォントの「解ミン」をベースに作られたというタイトルロゴ。登場人物である語り部役の「びわ」の目の色の表現と、左右反転した平の文字がさりげなく印象的です。
解ミンは隷書という古代中国の書体のエッセンスを取り入れた明朝体なのですが、流れるような隷書体の形はアニメのどこか日本画のような雰囲気も感じる柔らかなタッチを壊さない、絶妙なチョイスだなあと感じました。(日本でよく見る隷書体といえば、日本銀行券ですね!)
放映は2022年1月〜と、かなり最近というか今!の作品です。アニメでは原作となる平家物語の中から主要なエピソードをつまみつつ、壇ノ浦の戦いまでを追う構成で作られています。
(歴史を扱う作品は大体そうですが)わたしたち視聴者は結末がもうわかっているので、アニメの1話ではあんなに栄華を誇っていた平家が没落していくさまを見るのは切ないなあと、これもまた「あはれ」だなあと思いながら観ていました。
アニメでは語り部として、未来を見ることの出来る目を持つ「びわ」という子供が出てくるのですが、私たち視聴者がまさに「びわの目」の役でもあるのです。そう思うと、作中で没落の未来が見えても何もできないことに苦しむびわの姿に一層共感できる気がします。
なにも変えられない上で、びわはどう動いたか。時代・家という、当時は特に”変えられなかったもの”に振り回された人たちの、確かに生きた姿は。興味のある方は、ぜひ見届けてみてください。
"記録する"オープニング
さて、個人的にはここが本文です。オープニングがめちゃくちゃに好き〜〜!!
伸びやかな動き、色彩、光の表現、植物の描き方…素敵をぎゅっと詰めたOPを初めて観た瞬間、一気に惹き込まれてしまいました。
長い時を描くため本編では季節が一瞬で巡ることも多いのですが、その季節の移り変わりをどう表現したかというと、植物と光でした。梅、桜、緑、枯れ木…それらがカットに入ってくることによって時の流れを美しく感じられます。
オープニングでも季節折々の植物や色味の繊細な違いを感じられるかなと思うのですが、時折、フィルムカメラで撮ったような光(感光)が入るところがわたしは好きです。よく見るとタイトルロゴの出てくる最初にもカメラのフィルムのような表現が入っていて、(平家物語自体がもちろんフィクションであることは分かっているのですが)"そこに確かに実在した人たち"のリアリティを、写真風にすることによって表現しているのかな、と感じました。
さいごに
歴史に関しては全然詳しくないので恐らくかなりライトな感覚で観てしまいましたが、なんとなく覚えている日本史や古典の記憶が呼び起こされて、懐かしい気持ちになる作品でもありました。
私はNETFLIXの配信で視聴したのですが、字幕付きで観るのがとても分かりやすくて良かったので、歴史の記憶が朧げな方は字幕オンがおすすめです。
(学生時代にぜひとも観たかったな…!)