読んでも書いてもダメ、という人のために、新しい勉強の武器を贈ります――「監修者まえがき」全文公開
先日、急にスマホに知らない電話番号から着信がありました。5年ぶりぐらいでしょうか。高校・予備校時代からの友人です。以前、私のスマホがぶっ壊れて、彼の電話番号も含め、すべてデータが吹っ飛んでいたのです。以来、ほとんどの電話番号を登録するのをやめました。
友人からの久しぶりの連絡というのは、薄気味悪いものです。たいがい、ろくでもない連絡だったりします。誰かが死んだとか、同窓会とか、金の無心とか、宗教とか……。
しかし、そんな心配は杞憂に終わりました。
「おう、おまん(お前)、元気? なにやってるが? え!? おまん、まーだそんげんとこ(出版社)いるがあか。じゃあ、グラビア撮影んときとか、アイドルに変な格好をさせてるがあ?」
というアホで下卑た質問に答えつつ、お互いの近況報告のみで電話は終わりました。
そんな彼のことで印象に残っていることが1つあります。それは、彼が勉強法マニア(?)だったことです。彼は勉強法の本を何冊も買っていました。そして、そこに書かれているスキルについて、「富田(先生)はああ言ってるけど、西(先生)のほうが信頼できるな」などと、わざわざ仲間に偉そうに教えてくれます。ところが、肝心の参考書を買って読んでいる姿をほとんど見たことがないのです。
しかも、その勉強法の本も、本当に読んでいたかも怪しいもの。今振り返ると、勉強法の本を買うことで勉強している気になり、辛くて惨めな受験から精神的に逃亡していたのかもしれません。事実、受験結果は散々でした(今は幸せそうですが)。
そんなかつての彼のことを思い出したころ、奇しくも私が編集していた本が、まさに勉強法の本でした。
タイトルは、既視感があるかもしれませんが、7月20日にAmazonで発売予定の『聞いたら忘れない勉強法』(黒澤孟司・著、小松正史・監修)です。
これまで、「読む」「書く」はありましたが、「聞く」を中心にした勉強法はなかったはずです。ところが、この聴覚にこそ、記憶効率を劇的に上げ、普段の勉強とその結果を大きく変えるカギがあったのです。
本書の監修を務めてくださったのが、音響心理学者・京都精華大学教授の小松正史先生。累計5万部の『耳トレ』シリーズの著者であり、音や聴覚に関するスペシャリスト。
当初、本書の内容について学問的なエビデンスが不足しているのではないかと不安でしたが、小松先生がお墨付きを与えてくれました。
そこで、以下、小松先生から特別な許諾をいただき、以下に「監修者まえがき」を掲載させていただきます。
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記憶のメカニズムを聴覚で促進する画期的な勉強法ー監修者
もしかすると、この本があなたの勉強法や人生を変えるかもしれません。
聴覚をセンターピンにした勉強法は、今までなかったからです。
「人間は見た目が9割」という言葉があるように、私たちは視覚を中心に物事を判断しています。
そして、目で文字を追い、視覚情報として脳内に記憶しています。
この記憶のプロセスにおいて、聴覚を意識している人はどのくらいいるでしょうか。私の印象でしかありませんが、ほとんどの人は聴覚を生かすことなく、眠らせたままにしているのではないかと感じます。これは、非常にもったいないことです。
聴覚は視覚を補うどころか、視覚の能力を凌駕する可能性を秘めています。
音の刺激は時間処理に長け、物事を想起する力が強いため、脳を活性化させます。したがって、物事を記憶するとき、聴覚を効果的に使うと記憶が保持されやすくなります。
つまり、目で記憶する方法に「耳」を加えることで、効果的な勉強法を獲得できるのです。
本書では、聴覚を使った画期的で斬新な勉強法――速聴勉強法――を解説しています。
ボイスレコーダーやスマホの音声アプリを使って、記憶したい情報を自分の声で録音し、3倍速で聞き取る方法です。
記憶のメカニズムである「記銘(情報を覚えること)」「保持」「想起」のサイクルが、聴覚で促進されるのです。
まず、覚えたい内容を視覚的にまとめ、その内容を自分の声でレコーディングします。自らの声帯を震わせて発声することで、理解した情報を脳に「記銘」させやすくします。
視覚に加え、聴覚や身体の運動機能を鍛えると、記憶しやすい身体に変わっていきます。
続いて、レコーディングされた声を最大3倍速で聞きます。
そのとき、脳の中で聴覚刺激が視覚記憶を引き出すため、記銘された情報が、強固に「保持」されるのです。
本書の勉強法では、1つの音声ファイルに90~120秒の制約を課しているので、短時間で何度も反復できます。記銘を繰り返し行うことで、短期記憶が長期記憶に定着し、脳内に保持されやすくなるのです。
3倍速で聞くことの効果はさらにあります。
集中力と注意力に磨きがかかるのです。
聴覚刺激は視覚刺激よりも速い反応速度で、脳に知覚されます。さらに時間制限を設けることで脳に大きな負荷がかかり、集中力を高めるきっかけとなるのです。
また、聴覚は、視覚よりも無自覚に取り入れる情報を(自動的に)処理しています。聴覚を意識することで、ふだんはスルーされがちな「情報を取り入れる順番」の重要性に気づき、何をどのように覚えるかを、脳が意識的に選択しはじめるのです。
つまり、聴覚刺激は記憶を効果的に「想起」することにも役立つのです。
こうした注意力を補う力が聴覚にはあるのです。
本書の著者・黒澤孟司先生は現役の医師です。ご自身の受験や医師国家試験、そして日々の研究活動などをとおして、本書の速聴勉強法を開発、実践しています。
オリジナリティの高さゆえに、この勉強法を採用している人は、現時点では少数だと思います。しかし、実際に本書の解説どおりに聴覚を意識して勉強すれば、それが記憶のメカニズムを促進する合理的な方法であることに気づくでしょう。
あなたも、この革新的な「聴覚的勉強法」を獲得して、目の前の課題や難局を〝ラクラク〟乗り越えられることを願っています。
京都精華大学教授・音響心理学者・博士(工学)、監修者 小松正史
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私の予備校時代にこの本があれば、友人も救われたかもしれない……と一瞬思いましたが、「いや、無理だろうな」とすぐに思い直しました。当時は、ボイスレコーダーどころか、テープレコーダーくらいしかありません。データではなく、カセットテープで音声を管理するの物理的に大きな障害になったはず。スマホやタブレット端末が普通に普及している現代だからこそ、使える勉強法なのでしょう。
以上、最後までお読みいただき、ありがとうございました。編集部の石黒でした。
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